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紙の本

アンサンブル (ハヤカワ・ミステリ文庫)

著者 サラ・パレツキー (著),山本 やよい (訳)

新聞の尋ね人広告をきっかけにヴィクが亡き母親の真実を探る「追憶の譜面」、売れっ子の女性作家との確執が思わぬ事態を招く「売名作戦」、行方不明のカメラマン探しの裏に潜む謎を追...

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アンサンブル (ハヤカワ・ミステリ文庫)

税込 990 9pt

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商品説明

新聞の尋ね人広告をきっかけにヴィクが亡き母親の真実を探る「追憶の譜面」、売れっ子の女性作家との確執が思わぬ事態を招く「売名作戦」、行方不明のカメラマン探しの裏に潜む謎を追う「フォト・フィニッシュ」など、人気のV・I・ウォーショースキー・シリーズをはじめ、ユーモア作品や異色サスペンスまで、著者の多彩な才能がいかんなく発揮された全10篇を収録。本邦初訳作品もまじえて贈る待望の日本オリジナル短篇集。【「BOOK」データベースの商品解説】

新聞の尋ね人広告をきっかけにヴィクが亡き母親の真実を探る「追憶の譜面」など、ユーモア作品から異色サスペンスまで、著者の才能がいかんなく発揮された全10篇を収録。本邦初訳作品もまじえて贈る日本オリジナル短篇集。【「TRC MARC」の商品解説】

収録作品一覧

追憶の譜面 15−95
ポスター・チャイルド 357−394
売名作戦 97−139

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みんなのレビュー8件

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評価内訳

紙の本

祝「V.I.ウォーショースキー生誕30年」の短編集

2012/08/08 18:36

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:うみひこ: - この投稿者のレビュー一覧を見る

このサラ・パレツキーの短編集を手にとって、
「30周年に寄せてー日本の読者の皆様へ」という前書きを読んで、
ちょっと胸が熱くなってしまった。
この中で、パレツキーは、ヴィクの誕生の秘話を明かしているのだが、
それより何より、
世界中で一番初めにヴィクの物語を翻訳したのが日本であり、
パレツキーの書いたすべての長短編集を訳し、出版しているのは、
日本だけということが、書かれているのだ。

そうか、日本だけか…。
と、いうことは、私は、アメリカ人よりも多く、
サラ・パレツキーの作品を読んでいるわけだ…。

でも、何故そうなのだろう?

強くて、フェミニストの女流探偵によるハードボイルドな探偵小説。

それは、同時期に翻訳されたスー・グラフトンのキンジー・ミルホーンも同様で、
彼女たちの物語を読んでいくことは、実に爽快感があった。

1980年代。
バブル景気に向かって行く日本では、
女性の社会進出も進んでいったのだが、
(けれども、4年制大学を出たての女子大生の就職難は氷河期)
男性のセクハラ発言やパワハラ発言に、
職場で煮え湯を飲まされる場面も多く、
そんな中で、ヴィクを読むことは本当に胸がすく思いがした。

彼女はあきらめない。
彼女は黙らない。
差別に対し、不正に対し、恋に対しても…。

それに付け加えて、ヴィクの特徴は、社会性にある気がする。
犯罪を解決するなかで、
その背後にある権力の不正に気がついたときには、
極力不正をただせる方向に行こうとする。
或いはその事実を、人々の前にさらし、
社会的制裁を受けるようにして、
最終的な解決で物語がとじられる。

決して、問題はすべてラッキーにも解決し、
恋もうまくいってハッピー、という小説ではない。

それでも、ヴィクの長編が出ると、
思わずあの読後の深い充実感を求めて手に取ってしまうだろう。

けれど、今回のこの小説は短編集。
ヴィクの物語だけではなく、
ミステリーやユーモア小説もある。

さらに、ヴィクの小説に出てくる登場人物が、
主人公ではないにしろ、
ちらりと顔を見せたり重要な役どころを演じたりする、
ファンなら思わずにやりとする小説もある。

ヴィクの小説は、やっかいな、或いはすてきな親戚が出てくるのも特徴なのだが、
今回も、亡き母親への愛慕と追悼の思いに満ちた、『追憶の譜面』、
本当に小さいまだ少女のヴィクと従弟のブーム・ブームの出てくる、
『V.I.ウォーショースキー最初の事件』、
等があり、
読者は、ヴィクの中に流れる二つの国を知ると共に、
移民の国アメリカを読んでいくことにもなる。

そんなふうに、読者はこの短編集を読むだけでも、
日本で普通に暮らしていれば縁のないような、
弁護士や、精神科医、カソリックの神父やユダヤ教のラビ、
反フェミニズムの活動家等の登場人物によって、
物語を通して、多くのアメリカ社会の問題点を知ることができるだろう。

本書には、「ボーナス・トラック」という章に、
できたてほやほやの短編も載っていて、
この最後の物語まで読めば、
読者は胸を張って、
「私は、世界で一番、パレツキーを読んでいる」
と、いうことができる仕組みになっている。

好運な日本の読者としては、
この本を手に取らずにはいられないだろう。

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2012/06/23 17:31

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2012/10/02 23:17

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