紙の本
気持ちよく読めます
2022/06/04 08:49
5人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とらとら - この投稿者のレビュー一覧を見る
量子力学を含めた、物理学の発展の歴史と意味を平易な言葉で説明をしてくれます。個々の物理学者や説について、批判めいた言い方などはなくて、それぞれの功績と物理学の歴史全体からの意義を肯定的に展開してくれているので、気持ちよくよめました。
超ひも理論のことも、批判、まだわかってないことや難しいところなども、将来への期待も含めて書かれています。
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ミチオ・カク(加來道雄/1947年~)は、カリフォルニア州生まれの日系3世の理論物理学者。ハーバード大学卒、カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得。ニューヨーク市立大学シティカレッジ物理学部教授。専門は素粒子論、特に超弦理論で、弦の場の理論の創始者のひとり。数々のTV科学番組に出演するほか、一般向けの科学書を多数執筆しており、『パラレルワールド』はサミュエル・ジョンソン賞候補、『フューチャー・オブ・マインド』はニューヨーク・タイムズ紙ベストセラー1位に輝くなど、ベストセラーも多い。
本書は、2021年出版の『THE GOD EQUATION:THE QUEST FOR A THEORY OF EVERYTHING』の全訳。
内容は、アインシュタインが統一場理論と呼び、「神の心を読む」ことができると言った「万物の理論」を求めて、人類が2000年に亘って続けてきた研究の歴史を振り返り、更に、今日、著者を含む多くの物理学者がその究極の理論と考えている「ひも理論」について、批判的な意見も含めて説明したものである。
尚、章立ては以下である。
第1章:統一~いにしえからの夢 第2章:アインシュタインによる統一の追求 第3章:量子論の登場 第4章:ほとんど万物の理論 第5章:ダークな宇宙 第6章:ひも理論の誕生~期待と問題 第7章:宇宙の意味を探す
著者は、この究極の理論が確立すれば、ビッグバンから始まり宇宙の終わりに至るまで、あらゆる事象が説明できるとし、科学の中でもとりわけ深遠な、以下のような疑問にも答えられる(可能性がある)といい、本書の中でもこれらに触れている。
◆ビッグバンの前に何が起きていたのか? そもそもなぜビッグバンが起きたのか?
◆ブラックホールを抜けた向こう側には何があるのか?
◆タイムトラベルは可能なのか?
◆ほかの宇宙へつながるワームホールは存在するのか?
◆高次元は存在するのか?
◆いくつもの並行宇宙からなるマルチバース(多宇宙)は存在するのか?
宇宙には始まりがあったことは、今やほぼ確かなことである。そして、(或る)宇宙には終わりがあるらしいことも分かりつつある。即ち、我々人類の住む宇宙は有限らしいのだ。しかし、或る宇宙から新しい宇宙が生まれるのであれば、宇宙は永遠に続くともいえるのかも知れない。よって、宇宙を説明することを可能にする「万物の理論」は、究極的には、宗教・神の問題、更に、我々の存在する意味を考え直すことにもつながるのである。
これ以上なく壮大で、かつ、世界中の物理学者が取り組んでいる最先端のテーマを、僅か200ページ余りで説明しており、専門知識のない私には、後半に行くほど本質的には理解できないことが増えていったが、サイエンス・ノンフィクション物として読むには十分に面白いものであった。
(2022年4月了)
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第1章 統一―いにしえからの夢
ルネッサンス期の復興
地上の力と天空の力
ニュートンの法則の裏付け
科学の終戦
第2章 アインシュタインによる統一の追求
対称性と美
重力は曲がった空間
あらゆる力を統一する理論を求めて
第3章 量子論の登場
電子は波でもある
周期表
電子の波の正体
シュレーディンガーの猫
量子力学と戦争
第4章 ほとんど万物の理論
ハイテク革命
ほとんど万物の理論
第5章 ダークな宇宙
ワームホールを抜ける
タイムトラベル
一般相対性理論と宇宙
インフレーション
グラビトン
第6章 ひも理論の誕生―期待と問題
10次元
M理論
ダークマター
LHCを超える
ランドスケープ問題
第7章 宇宙の意味を探す
神の存在証明
有限の宇宙に意味を求める
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ひも理論について
マックスウェルによる電磁波の記述から始まり、光子・電子の統一がくりこみ理論で乗り越えられたこと、さらにコンピュータによる大量の計算力でヤン=ミルズ場のくりこみを成し遂げて強い核力が統一され、現在の標準模型に至るまでの歴史が語られる。その過程で、物理学における美しさ(対称性)の重要性が強調され、標準模型は美しくないと主張される。
著者の専門でもあるひも理論は、現在の科学で達成できるレベルのエネルギーでは実証実験をすることができないが、十分に美しく、宇宙を矛盾なく記述することができる。究極の方程式には解が無数にあり、無数の宇宙が存在すると考えられるがほとんどの宇宙では物理定数が今の宇宙のようにちょうどよい具合ではないため、素粒子が漂うだけの死んだような宇宙だろうという。
数式は巻末の脚注にしか出てこず、一通りの流れがスムーズに頭に入ってくる
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レビューはブログにて
https://ameblo.jp/w92-3/entry-12754928215.html
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いわゆるマルチバースについてのポピュラー・サイエンス本の「パラレル・ワールド」がとても面白くて、大ファンになったミチオ・カクの新作。
「パラレルワールド」後の本は、科学技術関係とか、超ひも理論という自分の専門領域以外についての啓発的な科学ライターみたいな本が多かった気がするけど、これはまた専門領域のど真ん中にもどっての入門書ですね。
「超ひも理論」の最近の議論もざっくりと整理してあって便利ですが、この本のメインは、「統一理論」の歴史。ニュートン〜マックスウェル〜アインシュタイン〜量子力学〜ヒモ理論という一つの理論ですべてを記述しようという試みの歴史。
なんで、いろいろな現象を説明する複数の方程式を一つの方程式で全部を表現したいのか、そこには、統合することで見えないことが見えてくるということがあるということ。
そして、あらたな統合は、新たな科学技術を生み出していく力になったということ。
そして、統合のポイントは、対称性、ということなのだが。。。。
ここまでくると、この話しは、宇宙の始まりや終わり、そして神の存在、宇宙、そして自分の存在する意味ということに必然的につながっていく。
で、最終章は、そんな話。ものすごく新しい話しはないのだが、あらためてこれだけのことをまとめてくれて、ありがたいな〜という感じ。
面白かったのは、これまでの統一理論の成立は人間の生活に直接影響をあたえる技術を生み出してきたが、おそらくひも理論の統合は、なにもわたしたちの実生活には影響を与えないであろうという話し。
おおおお、そこまで言い切るか!
つまり、今、理論物理学は、ある意味、人間がこれまで宗教や思想を通して探索してきた宇宙や人生の意味を科学的な方法で探求しているということなんだね。
そして、その答えがでたとしても、わたしたちの人生の意味がわかるというものでもなくて、結局、それはわたしたち、一人一人が自分で苦労して見つけ出すものなのだ。
なるほど。答えは実は既にあるのだ。
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科学読み物として、全くの門外漢の自分でも楽しめた。最終局面の神の存在証明、は何やら急いでくっ付けた感。
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ひも理論に行き着くまでの経緯、なぜそれを追い求めるのかをわかりやすくエンタメ性高く書かれていて面白かった。ひも理論は宇宙の終焉に対する救い。
好きなフレーズ:「十分にいかれているのか?」
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こんなにもわかりやすく宇宙物理学、量子論について語った本は無いかもしれない。
凄く面白いので個人的にはとてもおすすめです。
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名前だけふんわりとしか知らなかったひも理論という物がどんなものなのか少しだけ解像度が上がった
まぁそれでもまだ全然難しいんですけれども
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初心者にもわかりやすく書かれているとは言いながらも内容はやはり難しく、大きな物理学の流れをなんとなく分かったような気にしてくれただけだった。
ひも理論の10次元11次元はまるでSF映画を見ているようで映画としては面白いが、しっくり理解するには程遠かった。
物理学の世界はどこまでいくのだろう。宇宙の起源は見つかるのだろうか?
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重力と量子論を統合した万物の理論を探して、科学者が取り組んできた歴史から解説している。両者を統合できるのはヒモ理論しかなく、10次元,もしくは11次元がこの世界の姿かもしれないと言う事になるようだ。
ただ、まだこの理論は完全には理解されていないと言うことなので、ある意味その事には驚きを覚える。
万物の理論があるのか、それは何故存在するのかと言った哲学的な領域まで本では話が及ぶ。
興味は尽きない。
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完全文系ですが、三体で出てきたひも理論、10次元(11次元)などの表現が、実際の理論に基づいているとのことで興味を持ち、この本を手に取りました。
読み終わった感想としては、言ってることの半分も理解できなかったですが、それでも数式を使わずなるべく平坦な言葉で説明してくれるので、なんとなくの概要は掴めたような気がしています。それもこれも、作者の解説が異常に上手いからですね。
いきなり本題に入るのではなく、アインシュタインをはじめとする数多の物理学者がどういった挑戦を経て理論を構築したか。また、それによって生み出されたブレイクスルーや課題を一つひとつ丁寧に説明してくれたので、最後までワクワクしながら楽しんで読むことができました。特に、対称性という概念がただ美しいというだけでなく、実は中心的な要素であるという気づきに至るまでの流れはちょっと鳥肌がたちました。
いつか万物の理論が見つかった時、世界はどうなるのか。作者が述べた通り、それは相当未来のことでしょうし、特段私たちの生活への影響はないのでしょうが、それでも未来に思いを馳せずにはいられません。
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万物の理論=神の方程式は「ひも理論」であることを提示する。
ニュートンが運動と重力の法則を打ち立てた結果、産業革命の礎が築かれた。ファラデーとマクスウェルが電気と磁気の力は一つのものだと明らかにすると、電気の革命が幕を開けた。アインシュタインや量子物理学者たちが、現実の本質は確率論的で相対的であることを示すと、今日のハイテク革命の火蓋が切られた。
そして近い将来、四つの基本的な力(重力、電磁気力、強い力、弱い力)の全てを統一する万物の理論=神の方程式への収斂がなされるかもしれない。それが「ひも理論」だ。
実に興味深いのは、万物の理論が打ち立てられたらさぞ科学や文明の発展に寄与するものだろうと思うところ、著者は私たちの日常生活には何ほどの影響もないだろうとしていることだ。ニュートンやアインシュタインもたらした科学的成果の人間者社会への影響とは極めて対照的な見方だ。
そしてこの理論が影響するところは「宇宙はどこから出てきたか」といった哲学的な問題だとしている。生命の創始者としての神はともかく、秩序ある宇宙の創始者を否定することはできない、としている。
秩序ある万物の理論は、どこからきたのか・・?確かに、科学は「万物の理論そのもの」を解明するかもしれないが、「万物の理論が存在する理由そのもの」は、科学的な実証の範囲の外にある気がする・・。
本書は物理学の歴史を振り返りつつ「ひも理論」の概要を一般読者にも分かりやすく解説されつつ、科学の「その先」へも触れた非常に興味深い著作。充実した読後感。
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面白かった。
ニュートン力学、電磁気学、相対論、量子論
を統一していき、今最も有力視されている、すべてを統一する理論が
ひも理論(or M理論)。
今物理学を勉強したいとなんとなく思っていたけど、
火が付いた。
まずは解析力学や場の古典論からかな。