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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2011.10
- 出版社: 中央公論新社
- サイズ:19cm/195p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-12-004294-2
紙の本
井上ひさしの読書眼鏡
著者 井上 ひさし (著)
井上ひさしが見出した、面白い本、恐ろしい本…。『読売新聞』に連載され、遺稿となった書評集ほか、本にまつわるエッセイ「米原万里の全著作」「藤沢さんの日の光」を掲載する。【「...
井上ひさしの読書眼鏡
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商品説明
井上ひさしが見出した、面白い本、恐ろしい本…。『読売新聞』に連載され、遺稿となった書評集ほか、本にまつわるエッセイ「米原万里の全著作」「藤沢さんの日の光」を掲載する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
井上 ひさし
- 略歴
- 〈井上ひさし〉1934〜2010年。上智大学仏語科卒。放送作家として活躍後、戯曲・小説などの執筆活動に入る。「手鎖心中」で直木賞、「道元の冒険」で岸田戯曲賞など受賞多数。
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紙の本
信じよう、書評の力
2011/11/02 08:08
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年(2011年)の読書週間のキャッチフレーズは、「信じよう、本の力」ですが、私も本は心と頭の栄養剤だと思っています。
それは単に鍛えるとか成長するとかというだけでなく、イライラしている時や落ち込んだりした時にも結構効き目があって、読書はストレス解消のためにも欠かせない習慣です。
そんな読書ですが、習慣に至るまでには当たり前ですが、本を読むことから始めないといけません。習慣になっていない人にはこの最初の一歩が難しいのです。
方法はいくつかあります。一番いいのは、友人や知人が紹介してくれた本を読む。身近な人の紹介だととっつきがいい。
次は、やはり書評でさがす。新聞や雑誌、インターネットにはいくつもの書評が掲載されています。そのなかから自分の興味をひいたものを読む方法です。
そのためにもいい書評を読むことが大事。いい書評は書評自体がいい文章でできていますから、それを読むだけでも読書の習慣にちかづくはずです。
本書はそれにうってつけの書評集です。著者は昨年亡くなった作家の井上ひさしさん。
井上さんは自身大変な読書家ですから、とても目が肥えている。そんな井上さんの2001年から2004年にかけて「読売新聞」に連載していた書評を亡くなってからもこうしてまとめて読むことができるなんて、うれしいかぎりです。
それにしても、井上さんの書評のうまさはどうでしょう。難しい言葉を使うわけでもなく、簡潔に軽妙にそして大いにまじめに本たちを紹介していく手腕は、あらためて読書人としての井上ひさしの技量に敬服します。
「人間は、すこぶる強欲である」と、ある書評のなかで井上さんは書いています。そして、「しかし同時に美しいものを発見し、それに言葉を与えて、他人に分かち与える賢さも持っている」と続けます。
この「賢さ」こそ、書評そのものが持っているものではないでしょうか。少なくとも、井上さんの書評は「賢さ」を持っています。
いい本と出合う。そのための橋渡しとなる、書評。
読書週間のキャッチフレーズをもじれば、「信じよう、書評の力」となるのでは。
紙の本
読書好き=ただの物知りで終わらないために。
2012/03/17 15:58
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:更夜 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は井上ひさしさんが読売新聞に寄せた書評を中心にしていますが、亡くなった後に
編纂されたものです。
井上さんが紹介して説明する本は、小説は親交のあった大江健三郎さんくらいで、
「不眠の時は辞書を読む」といきなり辞書を読むことから始まったりします。
ノンフィクション、哲学書、辞書、国語論、言語論といった小説以外の本を実に井上さんは
「研究している」というのがよくわかります。
井上ひさしさんは、とても日本語に詳しくて、国語学者と肩を並べるほど、その知識は
豊富で研究熱心であり、国語学者の大野晋博士の『日本語練習帳』では、井上ひさしさんは
辞書をすみからすみまで読むと書かれていますが、この本の中で井上さんは、大野博士の
本を大絶賛していますし、大野博士がかかわった辞書もまたすみからすみまで読んでいます。
井上ひさしさんは、子供向けの人形劇の脚本など書かれていて、「読みやすい文章」を
心がけていたそうです。
とにかく難解な言葉を振り回す、読者をおいてきぼりにするような文章や著作は好まれないのです。
そういう意味で哲学、哲学書というのは近づかないようにしてきたそうで、そこら辺はアンチ・
理論派の私もそうだったのです。しかし、「言葉が跳ねる哲学者」というタイトルの章では
『公共哲学』という本を絶賛しています。一人語りではなく、対話形式をとり、討論や議論を
行われる中で「ひとりの哲学者の中で完結してしまっている、ハイ、これで哲学しました」は
他者によってさらに議論され、「モノゴトを考えるための新しい言葉」としての哲学書である、
と紹介しています。
他者の著作を読みながら、ただ知識を蓄える物知りよりも、さらにそれを明解に理論的に
わかりやすく、伝える知識人となる大切さを説いています。
なにか趣味でも何でも、物知りになるのは簡単です。興味のあるものは、ゴシップ話でも
「物知り」と言えます。
井上ひさしさんは、そういう物知りはたくさんいるけれど、その博学知識の話はだんだん飽きて
しまう、と正直に書かれていて、さらにそこから、踏み込んだ著作を厳選しているように思います。
また、この本の特徴は、読んだ本、紹介する本の作者を井上さんは「~さん」と書いていて
著者に対する尊敬の気持がよくあらわれていると思います。
私は新聞の書評欄を楽しみにしていますが、よく見かけるのは、本の著者を「苗字呼び捨て」
タイプの書評です。
例えば、「井上はこう書いている」と言う文章と「井上ひさしさんはこう書かれています」という文、
前者はなんだか偉そうで上から見下ろす感じがします。
漱石とか鴎外とかどうなるんだ、とはた。と思うのですが、そこは難しいですね。逆に夏目さんとか
森さんは、と書く方が変なような気がします。
本の著者とその本について書く人との距離の感覚なのかもしれません。
少なくともこの本で井上ひさしさんは、「すばらしい」「頭の風通しがよくなった」「みごとだ」と
感心する本を紹介するにあたって、著者を尊敬の念で見つめているというのがよくわかる
文章です。
紙の本
稀代の読書家のお眼鏡にかなった本いろいろ
2018/12/30 20:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さらさばく - この投稿者のレビュー一覧を見る
2001年1月から2004年4月にかけて、『読売新聞』に連載された記事をもとに編まれた本で、井上氏の死去後に出版されています。
ゆったりした組みで分量が少ないのはコラム記事だからでしょうが、著者が存命であれば、もっと加筆したのではないでしょうか。
何の断りもなく「米原万里の全著作」があるので、関係を知らない読者は戸惑うかもしれません(井上氏の夫人ゆりさんが、米原万里の実妹)。
こちらは、米原万里展「ロシア語通訳から作家へ」の図録の文章がもとだそう。
「途方もない情報通や歩く情報タンクとしか言いようのない人やとんでもない物知り博士」の話に「たちまち飽きてしまう」のはなぜか。
「彼らがただの物知りにすぎないので失望してしまうのです。自分の知っていること、学んだこと、考えたことを、揉んで叩いて鍛えて編集し直して、もう一つも二つも上の『英知』を創り出すことのできる真の知者が、思いのほか少ないのでがっかりしてしまうのです」は、さすがに鋭い指摘です。