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イギリスのネイチャー誌、アメリカのサイエンス誌を紹介、比較しながら科学そのものの面白さを紹介する。筆者は自身をサイエンスライターと説明するが、まさしく僕のような科学ファンには心地よい文章である。安心感がある。
最終章で東日本大震災後の非科学的な反原発ブームに極めて冷静に釘をさしながら、なんとか派とか御用なんとかといった低俗な論争に巻き込まれないように、いい意味でスマートに振る舞っているように感じた。
1992年10月23日号サイエンスに今上陛下の論文が掲載された。DNA二重らせんモデルの研究でロザリンド・フランクリンの研究が盗用され隠蔽された事件。韓国人学者のES細胞スキャンダル。などの紹介あり。
横田めぐみさんの遺骨と北が主張する灰について、個人的には拉致問題の全体像から見て遺骨は別人のものであるという日本政府の見解に賛成との感想を述べる一方で、帝京大学の鑑定に対して疑義を示したネイチャーの記事を評価する。逆に、官房長官や外務大臣のコメントを不正確であったと指摘する筆者の視点は科学的で中立と感じる。確かに当時のニュースを見ていて何かすっきりしない感を覚えた記憶がある。
内田麻理香さんに教えてもらった逸話として紹介するファラデーのコメントが面白かった。
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休み中のもう一冊。サイエンスライター竹内薫氏の著書。全体的に面白かった。ネイチャーとサイエンスの特性をわかりやすく一般向けに解説。ネイチャーは商用紙でサイエンスは学会誌。故にネイチャーの方が話題に敏感。売らねばならない。ただ、著者が本当に言いたかったのは、普通の日本人に対する科学に対する興味の乏しさへの警鐘。科学の話題における日本のマスコミのレベルのあまりの低さを憂いています。
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本書は「新潮45」で連載されていたコラムを加筆修正してまとめたものである。自然科学の学術業界の全般的な話題を一般読者にわかりやすく説明している。前半では「ネイチャー」と「サイエンス」という二大科学雑誌の占める役割と性質について、後半では疑似科学や捏造の話題を通して「科学はどうあるべきか」ということを考察している。そのため、タイトルから想像するような内容ではなかったものの、それなりに興味深く読んだ。著者は非常にわかりやすく科学を解説してくれる。彼のようなサイエンスライターが日本でももっと増えてほしいと思う。そうすれば、一般の人々ももっと科学に興味を示してくれるだろう。
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1-1 科学論・科学史
・ネイチャーとサイエンスの違い
・韓国人はなぜバカにされるか?
・粘菌の動きと微分方程式
・トリウム原子炉と衆愚と集合知
→竹内薫『「ネイチャー」を英語で読みこなす』
→量子コンピュータ
→宇宙エレベータ
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やはりこの著者は科学エッセイがおもしろい。「バカヤロー経済学」は、正直結構首をかしげざるを得ないところが多かったのですが、この本は文句なくおもしろかったです。唯一、タイトルが内容とあまり合っていないように思える点だけが不満でしょうか。
この本は、元々月刊誌に連載された「科学の興亡 ネイチャーvsサイエンス」というエッセイ集をまとめて書籍化したものだそうで、そのため各章の内容が完全に独立していて、いわば11本のエッセイ+巻末鼎談という構成になっています。そして、内容も、題名から想像されるような日本の科学教育を弾劾するようなものでは全くなく、イギリスの科学誌「ネイチャー」とアメリカの科学誌「サイエンス」を対比させつつ、現代科学や学会の様々な話題について、切れ味よくわかりやすく述べてくれているもので、肩肘張ったところは全くありませんでした。
いろいろおもしろいところはありましたが、僕として実は一番印象に残ったのは、科学の部分ではなく、日本における英語の使用に関して述べていたところでした。
社内英語公用化に関して、「人間の論理的思考の大部分を司る言語は、付け焼き刃でこなせるほど甘いものではない。(中略)英語が堪能でない日本人社員同士が、拙い英語でしゃべり合っていては、その英語力に見合った想像力しか発揮できないのは、火を見るより明らかだ。日本企業が世界と伍して戦うために必要なのは、写真全員が拙い英語を振り回すことではなく、高度な能力を備えた通訳を必要な人数だけ雇い入れることだと私は思う」との意見が書かれていましたが、自分自身の経験に即しても全面的に同感しました。
原発についての意見についても説得力がありましたし、勉強になること代でした。また、日本語で読める「ネイチャー・ダイジェスト」の存在も、これを読んで初めて知りました。早速購入してみましたが、これは確かにお値打ちです。
久々に読んだ甲斐のある本でした。
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イギリスの「ネイチャー」とアメリカの「サイエンス」。この二大科学雑誌を中心に,科学について語る。両誌の歴史,科学にまつわるスキャンダル,日本の科学の未来まで。
なぜ英米のこの二誌が抜きんでたのか,アインシュタインの人生を概観することで要領よく説明。ドイツ語の凋落はやはり戦争のせいだな。
ピアレビューの制度が20世紀の初めの方まではなかったというのは意外。南方熊楠はネイチャーに51本も論文が掲載されてるが,それは査読が始まる前。
著者の竹内氏には確か遅くできた子供がいたけど,その出産のときホメオパシーに遭遇した体験談があった。助産師が妻を産気づかせるために砂糖玉をくれて,それで陣痛が強くなったんだって。そんなホメオパシーを肯定する論文がネイチャーに掲載されたこともあるらしい。1988年。
でも著者は擬似科学にすぎないからという理由で掲載しないという態度はいけないという。有力な科学誌が掲載したおかげで,その検証が行なわれ,ホメオパシーが科学的にダメであると決着がついたんだから良いではないかと。うーむ,そんなものかな??
福一原発震災についても熱く語っている。科学不信がはびこる状況にいたたまれないらしく,悪質な危険デマを糾弾。昔から行なわれてきたイデオロギッシュな立場からのダメ批判が,反原発の声をすべていっしょくたに「狼少年」と切り捨てる風土を産んできた。そのことが,今回の惨事につながったとしてる。
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一般人として。あんまりタイトルと本文は関係なく、ネイチャーとサイエンスの違い、科学史や現在の科学トピックに関するざっくりエピソードいくつか、著者の科学との関わり方がメイン。
前半はネイチャーとサイエンスの正直どうでもいい違いを延々と言ってて、ちょっと飽きた。科学エピソードは門外漢にとっても非常に読みやすい。著者の原発、英語、エセ科学に関する意見もふむふむなるほどーと納得できるものだった。けど、個人的にはラストの対談が一番面白かったかも。分野の違う科学者同士が自分の研究内容を相手に説明する様子って、むちゃくちゃわかりやすい。
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私は竹内氏の書いた本はほぼすべて読んでいるが、本書は中でも政治的・社会的メッセージ性が強い本だと思う。そしてその見解は示唆に富んでいる。著者の背景に裏打ちされた提言は一読の価値あり。
・イギリスの一部の大学には、同じ講座に二人の教授がいる。一人は実力で這いあがった人、もう一方は上流階級出身のお金に余裕がある人。
・ネイチャーは商業誌で、サイエンスは学会の機関紙。
・ネイチャー編集部には変わった編集長が多い。ローラ・ガーウィンはハーバードを出てからオックスフォードに入り、ケンブリッジ大学でも博士号をとったが、いつのまにか音楽家になり、ペンタゴン・ブラスというバンドでトランペットを吹いている。
・キャリー・マリスは、酔って書いた文章がネイチャーに掲載され、真剣に考案したPCR法が論文として載せることを拒否されたゆえ、ネイチャーの権威性に大いに疑問を抱いた。
・ネイチャーには以前疑似科学に入る論文が掲載されたことがある。
●疑似科学といえども、それを声高に否定するのは寛容にもとる(同感)
・ファラデーが大蔵大臣グラッドストンに電磁誘導の実験を示したとき、「何の役に立つのか」と聞かれ、こう答えた。「なんの役にたつのかはわかりませんが、将来、これに税金をかけることができるでしょう」。
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The author describes the poor circumstances surrounding science and technology of our country and is anxious about that situations.
It is obvious that Japan has to run the country based on S & T because we have scarce natural resources.
But first, politicians don't understand the importance of S & T and end up with cutting reveneu. Moreover, they don't have long term policy in development of S & T.
Second, people in Japan don't make much of S & T. Instead, most people think that science does harm to their lives. Fukushima Daiichi Nuclear Powerplant disaster is the example. They forget that they enjoy convenient, healthy and cultural lives thanks to S & T.
Third, scientists don't make every effort to educate ordinary people. They may think that is no use and waste of time and energy
And forth, media bring about unnecessary fear among people by broadcasting inappropriate and/or incorrect information.
Takeuchi also describes that most Japanese reseachers who are not very confident in their English don't have to do their work using English. Instead, they should think and consider in Japanese, their mother tongue, and ask English specialists to announce and write articles aiming at the world. He says that it is ridicurous that English is the standard lauguage in some Japanese companies. And the 51-year-old science writer says you should make Toshihide Masukawa a good example of Japanese reseacher.
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最後の章の原発がらみの論考が秀逸だ.イデオロギー偏重の絶え間ない反対意見に麻痺して,正常な科学的判断ができなくなったことは事実だろう.地元の電力会社元幹部から聞いた話だが,技術系社長が原発事故は起こると正直に述べたことが大問題になった由.事故は起こるものだという常識がマスコミや反対ゴロには理解できないようだ.科学的なリテラシーが不足しているのだ!
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タイトルと内容が解離気味に感じたが、とても興味深かった。特に印象的だったのは、日本における英語公用化の流れに対する意見を述べていたところ。なるべく中立に客観的な視点で論ずる姿勢に好感を抱いた。
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・第Ⅰ部…ネイチャーとサイエンスの違い
・第Ⅱ部…2誌を巻き込んだ科学史上の事件
・第Ⅲ部…日本の科学のあるべき姿とは
・特別鼎談…(天文学)中川貴雄・(生物学)中垣俊之・著者
「新潮45」に連載された「科学の興亡 ネイチャーVS.サイエンス」を加筆修正したもの。メッセージ性の強い書名で少し腰が引けてしまうが、実際のところ評論と言うより科学エッセイに近い。
読者自身に科学的な視点で物事を考えてもらうことを目標に据え、常に中立的立場から率直な物言いがなされているところが評価できる。
私は幼少時代に「子供の科学」を買い与えられていたものの、結局ほとんど手をつけなかったような科学嫌いだが、本書は抵抗なく読めた。全篇を通じて科学ネタが満載で、「実現可能なタイムマシン」や「粘菌レーダー」の件には興味をそそられた。また、鼎談で生の研究者の声を聞けるのもよい。「科学は(もしくは自分の研究は)何の役に立つか?」という問いに対する各人の回答が興味深い。
本書の白眉は、2誌の違いを歴史から運営方針まで丁寧に解説した第Ⅰ部だと思う。私は仕事上「ネイチャー」や「サイエンス」を扱うが2誌の違いはわからなかったので、第Ⅰ部は非常に役立った。第Ⅰ部・第Ⅱ部は、とくに理系学生に強くお薦めしたい。
<メモ>
『ネイチャー』
英・商業誌
発行元:出版大手のマクラミン社→独・ホルツブリンク社(サイエンティフィック・アメリカン誌の親会社)の傘下へ
編集長:個性的
特色:批判的主張やニュース記事など、ジャーナリズム色が強い
日本語コンテンツ→ネイチャー・ジャパン社「ネイチャー月刊ダイジェスト」
態度:寛容・余裕
『サイエンス』
米・会員誌→同人誌的色彩
発行元:科学振興団体のAAAS
編集長:優等生
特色:アメリカの科学政策を導くという壮大な理念
態度:合理性
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辛抱強く諭してきた筆者もそろそろ切れてしまいそうだ。
もう、いろんな分野で、聡明な人たちが、この国が本当に危ないと言い出している。
小ネタとしては、社内英語公用語化への切り返しは見事。
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基礎系科学雑誌の二大巨頭「サイエンス」と「ネイチャー」を比較しながら科学の意義について問う。
粘菌の研究で知られる南方熊楠。
現在と掲載基準が異なるものの、51報もNatureに論文が掲載されているとは!
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科学リテラシーを高めるための入門書として読んだ。紹介されるエピソードが素人には面白く、入り口としては満足している。読んで、スカッとした気持ちにさせられた。
「ネイチャー」、「サイエンス」の違いは興味深いし、このような雑誌が商業的にも成り立っているところは確かに日本とは違うところだ。
蛇足ながら、若い娘を持つアラフィフ親父としても筆者を応援したい。