紙の本
不穏な空気を跳ね返す天真爛漫な夢
2012/02/07 16:57
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
ほとんど偶然に6年3組になった3人の子どもたちを語り手に、
爽やかな友情を描きます。
ところどころ、大人になったクラスメイトの挿話が挟まれます。
すぐに担任に告げ口をする女の子は
頼れるキャリアウーマンに。
勉強のできた男の子は、やや情けない医者に。
酒屋の男の子は、父親がコンビニに業態変換したことに
少々淋しさを覚えながらも経営者として。
構成はよくあるパターンですが
登場人物同士がほのかな繋がりが見えてくる趣向をほどこし
おやっと惹きつけられます。
彼らが子ども時代にはきっぱりと別れを告げて
成長してるのがいい。面影が全くなさそうに思えます。
ところが、担任の要重吾郎の挿話によってそれが覆されます。
さらに、この先生の卒業メッセージと合わせて
担任のおおらかな、そして広い視野を絡めます。
脇役なのに光っていて、いい味。
この大人の挿話もタイミングよく挟まれるので
そんな大人になったか! と感心してしまう。
学校ではうさぎ殺害事件、地域ではピストル強盗事件など
凶悪事件が相次ぎ、語り手の3人――ジュンペイ、ヨータ、
水沢さん――は巻き込まれていきます。
裏山に廃棄された剥げたビートルを秘密基地にしながら
子ども時代の天真爛漫な夢を育みます。
特に水沢さんにとって、その期間が子ども時代の
唯一の楽しい時間となり、その心情を想うと切ない。
ラストはのびやかで明るい話に仕上げ、読後感もいい。
投稿元:
レビューを見る
子供の頃の約束は、たいていいつの間にか忘れ去られてる。
「いつまでも友達でいようね」「絶対忘れないよ」純粋な思いでかわされた約束も、いつしか膨大な時の流れの中に埋没していく。
私も転校生だったから、水沢日菜の気持ちが自分のことのように思える(彼女はもっとしんどい人生の重荷を背負っているけど)。
誰かと積極的に関わることから遠ざかっていた彼女が、ジュンペイとヨウタに出会って友達の楽しさを思い出す。3人の別れのシーンはとても切なかった。きれいごとを言わないヒナが、その年で人生の真実を知ってしまっているヒナが悲しかった。
小説の構成としてはありきたりなのかもしれないけど、私はこういう「後日譚」の構成が好きだ。あの子がこんなふうになったのか、と時間の流れを俯瞰しているような感覚になれるから。
ラストの、3人の再会の予感を感じさせる終わりがよかった。すうっと爽やかな風が吹いたような気がした。なんだか涙が溢れて止まらなかった。
投稿元:
レビューを見る
読んだ事が有るようなストーリーだけど好きな展開。三人のキャラもいいし担任もかっこいいな~ラストのその後だけ短編で読めたいな。
2012.2.10
投稿元:
レビューを見る
最初のページに、「六年三組 クラスのなかまたち」と題して、「担任:要重吾朗」と生徒42人全員の氏名が列挙されてるのを見た時は、あー、ついていけない内容かも、と思ったが、読み進むにつれて、いい感じに引き込まれていった。ジュンペイ、ヨータ、ヒナ、の3人を中心に、35歳になった彼等の現状を3人称の記述で、小学6年生の時代の出来事を1人称の記述で、交互に書き進める、読んだことのあるようなないようなストーリー展開。因果応報的な結末が若干垣間見えるのは、それは出来過ぎじゃ?と思ったけど、まぁ、面白かった。
投稿元:
レビューを見る
読んで良かった。これほど面白いと期待せずに読み始める。冒頭、あぁ、
読みにくい構成で展開して行くのですね、ふぅ。という感じで読める。
それはそれで、ノイズでしかなかったのだけど、そういうのが薄くなって
きてからが、とても良かった。もうね、毎日、読書で泣いてますよ。
投稿元:
レビューを見る
完成度は決して高くないと思うのだけど、なんか雰囲気が好きで甘めに採点してしまいました。小学校時代と後日譚を織り交ぜる、横道世之介方式。後日譚パートが、あまり意味はないけど微妙にリンクしている。意味はないけどニヤリとしてしまう。そして主人公3人の、切れたようで切れていないつながりが、ほのかに温かい。
投稿元:
レビューを見る
ジュンペイ、ヨータ、ヒナの3人で過ごした日々。それは「ゴールデンラッキービートル」の言葉に象徴されるように、キラキラと輝く一瞬だったことでしょう。
その輝きが純粋であればあるほど、どこか切なさを感じてしまうのは、この作品が子供向けの単なる青春物語ではなく、大人のための青春想い出物語になっているからなのだと思います。
ストーリーがなんとなくありがちだったことと、3人の後日譚にもう少し余韻が欲しかったことを考えて、★3つにしましたが、そこここに胸をうつ言葉があり、心にしみる作品であったことは間違いありません。
投稿元:
レビューを見る
こりゃいい。すごくいい。
ありがちっちゃありがちやけど、ええもんはええ。
キャナメ先生…粋すぎまっせ。
この3人で続編のロードノベル書いて欲しいなあ。
勿論、黄色いフォルクスワーゲン・ビートルで。
投稿元:
レビューを見る
第7回新潮エンターテインメント大賞受賞作品。現在と過去の二つの時系列が語り手を変えて交互に進んでいく友情の物語。結末では確かに心温まりはするのですが、拾いきれていない伏線や不必要と思われるエピソードが見受けられて、もうひとつこなれていない感じを受けました。
投稿元:
レビューを見る
おもしろかった!!
小学6年の3人組(男2女1)が秘密の隠れ家(車だけど)で遊ぶ感じ、すごくいい。いろいろ抱えつつもね。
途中途中差し挟まれる大人になったクラスメイトの有り様もリアルで良い。最後の終わり方(3人のその後)は、ある意味ファンタジーだけど、それで良かったと思えるラスト。
投稿元:
レビューを見る
2011年第7回「新潮エンターテインメント大賞」受賞作。
大人になってしばらく経つと、子供の日の輝かしい思い出も恥ずかしい記憶も、いつのまにか薄れていってしまうものだ。
苦い記憶と甘美な記憶の二重奏。かつての子供の今の姿を描くことで得られるタイムマシン効果。この種の小説に不可欠な冒険と成長の物語が盛りだくさんに詰め込まれているようだ。
20年以上前のとある小学校の6年3組の生徒たちの、わずか数ヶ月の交流の記憶が、さまざまな手法で描き出されていく。
投稿元:
レビューを見る
少年少女のわくわく感がとても鮮やかだった。
再会したのちの彼らの様子を少しだけのぞきたかったなぁ。。。
投稿元:
レビューを見る
著者とのご縁があって、手にした本、第7回新潮エンターテイメント大賞受賞作だそうだ。小学6年生の男の子2人と女の子1人の淡い友情の物語。小学生時代のクラスメイトなんてもう覚えていないことが多い。しかし本書は読みながら当時を自分を急速に振り返りながら、物語とオーバーラップさせていく。なぜか随所に成長して大人になったらクラスメイトの近況が挟まれているのも妙にリアリティーがあり、単なる子供小説ではないことがわかる。そして再び大人になった彼らの成長ぶりは、多くを語っていないが、選考委員の「感じのいい読後感」という書評どおり。
投稿元:
レビューを見る
この本にでてくる先生がすごく良かったっ!!
好みは分かれると思うけど、私は好きやな~
ウサギが殺される事件の犯人を見つけるべく
ジュンペイとヨータは動きだし、そこで犯人と思っていた
女の子、ヒナと仲良くなっていく
大人になってからと、子供時代の話が絡み合い
なるほどな~と思う性格もあれば、
おとなになってかわったと思う人もいて
どんな先生が担任になるかでも、大きくかわるし、
人生どうなるかワカランなぁと思った(笑)
自分を少しでも認めてもらえて、理解してもらえる友達
それだけで、強くなれるんよね
自分が居心地良い場所を探して、そこにいていいんよね
普通のことのように思うけど、
逃げと言われたり、ひどいことを言われたり
そーゆー中で自分の生きる道をしっかりと持てればいい
人と自分の違いを認め、尊重しあえる
そんなことを学べた小学校時代、うらやましくも思った
最後に3人が間接的に出会うところは
うるっときましたなーありえん感じやけど(笑)
投稿元:
レビューを見る
小学生のヨータとジュンペイとヒナ。強盗事件に巻き込まれたのをきっかけに仲良くなった三人が、「ゴールデンラッキービートル」と呼ぶ廃車を溜まり場にして、日々の生活の中で成長していく姿を描いた一冊。登場人物全員(強盗も含めて)に「未来の物語」が用意されているのも魅力です。