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アンドロイドと言えば、今やすっかり携帯OSの代名詞となっているが、もともとの意味は「人間酷似型ロボット」のことである。そのアンドロイドの可能性、ロボット工学にとどまらず、認知科学や脳科学や哲学とも深く結びついているそうである。本書はアンドロイドの研究を通して「人間とは何か?」、「自分とは何か?」を探求した一冊。著者は大阪大学のロボット工学者、アンドロイド研究の第一人者でもある。
◆本書の目次
プロローグ
第1章 日常活動型からアンドロイドへ
第2章 遠隔操作型アンドロイドを創る
第3章 サロゲートの世界
第4章 アンドロイドになる
第5章 ジェミノイドに適応する
第6章 ジェミノイドに恋をする
第7章 実体化するもう一人の自分
第8章 人を超えるアンドロイド
第9章 人間がアンドロイドに近づく
第10章 人間のミニマルデザイン「テレノイド」
エピローグ
ロボットにおいて重要なのは「見かけ」と「動き」。そのうち「見かけ」については、驚くほど研究の対象になってこなかった。人間とロボットは異なるものという先入観から、多くのロボットは人間とは一線を画したロボットとしてデザインされてきたのである。そこに大きな疑問を持った著者は、人間にそっくりなロボットを作ることへ邁進する。そうして出来あがった人間そっくりのアンドロイドと、そのモデルとなった人物とが対峙することで見えてきたもの、それが本書の骨子である。
アンドロイドとの向き合い方、その視点がユニークである。一つ目は遠隔操作型アンドロイドの場合、つまり一人称での視点である。映画アバターのようなものを想像してもらえれば、わかりやすいだろう。この状況への適応、すなわち操作方法がうまいのは、美人と役者である可能性が高いという。本書において、遠隔操作をする際に、操作する側がどのような視点で見ているかという実験が紹介されている。「相手の顔」、「自分のアンドロイドの顔」、「双方が話している状況がわかるもの」という3つのモニター映像のうち、操作が上手な人物は、自分のアンドロイドの顔を見ていることが多かったのである。これは、自分のアイデンティティが、他者からの見え方に依存している割合が高いということを、意味するのではないだろうか。
二つ目は二人称での視点、つまり自分のそっくりのアンドロイドと正面から向き合った時にどのような感情が呼び起こされるのかということである。本来は矛盾するこのような状況が作られることにより、自分で自分を説得するといったシミュレーションを行うことが可能になる。人の多くはアンドロイドを自分の理想像のように捉える傾向にあるそうだ。それゆえに、自分自身がアンドロイドに説得される可能性は、非常に高いそうである。また、この手法を応用することで、教育などの分野でも新たな利用法が生まれる可能性も高いという。
しかし、このような研究も、五年程度経過すると問題が生じてくる。著者自身の老化により、体型や顔の皺などに変化がおき、アンドロイドと似なくなってきてしまったのである。ここで、著者のマッドサイエンティストぶりが発揮される。アンドロイドと自分の差異を埋めるために、アンドロイドを直すのではなく、自分自身の顔を美容整形によってアンドロイドに近づけてしまったのである。確かに、アンドロイドの修理に三百万程度かかることを考えると経済的ではあるが、この研究者魂には頭の下がる思いである。
本書を読んで感じたのは、アンドロイドを作るということと、ブログを書くという行為は非常に近いのではないかということである。例えば、ブログを書くということは、一人称の目線でブログというアバターに遠隔操作を行い、「意識」、「感情」、「心」を入れ込んでいくようなことと言えるだろう。また、書いたブログを推敲するという行為は、ブログを通じてもう一人の自分と対話するということでもある。程度の差こそあれ、著者の美容整形だって、笑いとばすことはできない。自分の場合に置き換えた場合、ブログで形成されているであろう人格につられて、変な本ばかり探して読んでいるという側面は否めない。書いているブログによって、自分自身が規定されるという一面は、確かに存在するのである。
そういった意味で、本書は多くのブロガ―にとって有用な情報も多い。ブログだって一種のアンドロイドなのである。以上、アンドロイドがお送りいたしました!
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もし自分と全く同じ姿形の人間がいたら‥‥。
そう考えたことは、一度ならずみんな必ずあるはず!?
それをアンドロイドで挑戦しようとしたのがこの一冊。それを通して人間の本質に迫ろうとした全く新しい試み。
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双子座 gemini +oid
人間の見かけのアイデンティティというのは年齢に関係なく持ち続けられるというものでなく、特定の年齢、その人が人生のピークを迎えたときに確立するのではないかと思うからである
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アンドロイドの話というので、もっと工学的な内容かと思ったが、アンドロイドを通した自他の認知が中心。
著者の理想的な服装はスター・トレックの服装だそうだ。
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人そっくりなアンドロイドを作る、その過程を筆者自らの私見も交えながら解説している。エッセーのようにもなっている。
自分のアンドロイドを作ると、自分がアンドロイドのようにならなければならない、という不思議な感覚に陥ることに驚いた。筆者の狂気は、アンドロイドの少し若い自分に近づこうと、自分自身を整形してアンドロイド側に歩み寄ったところだ。これは到底真似できない。そのときの感情も冷静に分析し、人間そっくりのアンドロイドはどのようであるべきかを模索している。
「人とは何か」ということについて、さらに「アンドロイドとは何者か」ということについても深く考えさせられた。
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アンドロイドを通して、「人間とは?」に対する新たな問いが見えてくる。"Do Androids Dream of Electric Sheep?"が本当に境界線なのかもしれない。
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●この先生がつくっているアンドロイドといっこく堂の腹話術人形との違いがわからないと主張するうちの姉&自分のために整理。↓
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Q:なぜ人間型アンドロイドなのか? なぜロボットに人間の見かけが必要なのか?
A:これまでロボットのデザインはほとんどが工業デザイナー任せであった。
一方、実際の工業製品(例えばフェラーリなど)では、性能だけでなくデザインにも魅了される人が多い。デザインは人に影響するものであり、重要なものである。ならば、ロボットのデザインにも科学的根拠を求め、原理を追求すべきではないか?
そして、日常活動型ロボットの究極のデザインとはどんなものか?
しかし、ロボットなど人間と相対するものが、どれほど人間らしくあるべきかと言う考察は、丁寧に行われた事がなかった。
この「見かけ」の問題は、デザイナー任せにするのではなく、研究者が研究する必要がある。
この「見かけ」の研究方法としては、非常に単純なデザインのロボットを人間に近づけていく方法と、人間にそっくりなロボットを作り、そこから人間らしさに不必要な部分をそぎ落としていく方法の二つがある。
前者の場合、人間に至るまでに何体のロボットを作ればいいか、どのように作るか見当がつかないが、後者であれば、まずは人間そっくりのロボットをつくればよいので最初の目標ははっきりしている。
よって、人間型アンドロイド研究を始めたのである。
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●・・・・・・で、実際につくってみた結果、そのアンドロイドのモデルになった人は逆にアンドロイドの存在に影響されて自分の見かけを気にしたり、周りの人は最初は不気味がるけれど、そのアンドロイドと喋ってみると自然になじんで接するようになるなど、アンドロイド開発そのものよりもアンドロイドと相対した人間の行動や心理の方がメインになっているような。
石黒氏の基本的な問題意識は「自分とは、人間とは何か?」とのことですが、人間型アンドロイドの開発それ自体は手段であって目的ではないと捉えてよろしいでしょうかいかがでしょうか。うーん?
●人が操作する人間型アンドロイドといっこく堂の腹話術人形との違いは、「見かけ」でしたと言うお話。まあ間違ってはいないよね・・・・・(‐ー;)
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面白いっ!!まず、著者が変な人!
ロボットの見た目はどうして機械的なのか?もっとデザイン性をもたせよう!
という思いから自分ソックリのロボットであるアンドロイドを作ってしまった著者。
質感、表情、言動がソックリな自分を作った時にわかる人とは何か?
自分とは何か?という新たな発見!
著者が所々に疑問を置いてきぼりにするので、それを考えるのも楽しいし、著者の変人ぶりも本当に面白いっ!
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面白い。人間そっくりの「ジェミノイド」を作っておきながら、“最低限の人間”としての「テレノイド」を指向するようになった道筋が興味深かった。普通の人にはなかなかできない発想。それと天才と呼ばれる著者の変わり者エピソード(毎日同じ洋服しか着ない等)も余談として紹介されていて、それもまた面白かった。
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やばいーめっちゃ面白いー!
面白い所に付箋つけたら付箋だらけになった!
このアンドロイドの研究は、大きく分けて、人らしいジェミノイドとギリギリ人らしいテレノイド に分けられる。どちらも遠隔操作で動作と声を操るが、次第に操作者の意識がアンドロイドに入り込むところが面白い。
ジェミノイドは人らしく作られたけど、人よりも人工的だからある意味完璧だった。自分のイデアみたいな。だからそちらを主にして自分を変えて行きたくなるみたい。大人は。自分のほうが老いてゆくからね。こういうジェミノイドは最終的に神様みたいな感覚になるらしい。自分のイデアだから上位にやってしまう。
石黒さんはめったに笑わないから、石黒モデルのジェミノイドを作るときに結果として゛アンドロイド゛っぽい自分を発見する。人がアンドロイドよりアンドロイドっぽいってどういうこっちゃ。
ふるまいが人らしさをつくるなら、やっぱり石黒ジェミノイドの方が人に近くなるのかしら。
ジェミノイドが演劇(詩の朗読)をしたけれど、人を越えた人にみえてしまうらしい。
星新一の、人間だとおもいこまされた象を思い出す。本にかかれた人のように振る舞う象は、人よりも人らしくなっているオチがついてるけど、その自覚のしかた、役目の与えられ方がジェミノイドに似てると思う。
一方テレノイドはクリオネみたいな形でギリギリ人らしい。こっちも遠隔操作で話せるのだけど、抱き締めながら話せる点で触覚からの人らしさを感じることができるらしい。
触覚は視覚を越えてテレノイドを人にする。ちいさくしてケータイのようにし、握りしめながら話すのも人らしさを感じて楽しそうだ。
人らしさはアンドロイドがアプローチしてくるなかでどんどん曖昧になる。だがそれか面白い。よい本。
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うーん。この本は人気のようだけど自分としてはいまいち。
研究者が書いた本っぽくないなーと思った。筆者の主張(自分とは何か?人間とは何か?)を一つにまとめた章があるわけではなく、アンドロイドやその派生物を作っていく過程で感じたことを随筆のように書き並べている。そのような書き方だから、アンドロイドを作ったことで得られた人間に関する哲学的考察という本書の主題でさえ細切れかつ中途半端で終わっている感が否めない。正直、著者が減量するための努力の過程などどうでもいいんだ。本に書ききれない研究内容がまだたくさんあるとあとがきで書くくらいなら、そういう重要度が低い話題の類はコンパクトに収めればいい。それともそのような内容よりもさらに取るに足らない研究内容なのか?
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『アンドロイドを造る』の石黒浩氏の著書。
工学的なことだけでなく、(人間とは何か)といったことまで触れているので、『アンドロイドを造る』よりも読みやすかった。
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完全なるアンドロイド、すなわち「人」を創るとはどういうことか、実際に「人創り」に取り組む石黒氏ならではの示唆に富む一冊。
技術的・学術的な難しい話はあまりなく、「人間らしさとは?」という哲学書に近い。発展途上の研究だからこそ、研究過程の気づきが追体験でき、自分の実体験に置き換えて考えると非常に説得力がある。人はどこに人間らしさを感じるのか、「自分」を演じるのは自分よりむしろ他人のほうが上手など、実際に「人」を創ろうとした彼だからこそ気づき得た本質が描かれている。
完璧に近づくほど微妙な差異が違和感を生み出す「不気味の谷」や、完璧すぎると「人間らしさが失われる」など、差別の根源や不完全を補完する想像力という人間の本質にあっさり触れている点は天才的な洞察力だ。
とはいえ堅苦しい本ではなく、(筆者は至って真剣なのだが)全体的にユーモアが溢れていて、特に理想的な自分であるアンドロイドを時間が経って逆に意識する話は面白い。勢い余って整形までしている(笑)。
石黒氏はCNN「世界を変える8人の天才」の一人に選ばれているが、なぜ選ばれたかがよく分かる。是非石黒氏とお会いしてみたいと思わせる一冊だ。(本当は石黒氏よりジェミノイドFのほうと会ってみたい・・・)
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「自分とは何か?」「人間とは何か?」という問いをアンドロイドの研究を通して考えるというのが本書の内容である。著者自身がモデルのアンドロイド(ジェミノイドと呼ばれる)も開発してるし、奥さんがモデルのジェミノイドも開発している。他人にお願いするのは気が引けたから、というのが奥さんをモデルに起用した理由となっているが、個人的には「よく協力するなー」と思ってしまった。奥さんがどうゆう方なのかわからないけど(専業主婦なのか研究者なのか)、自分とそっくりなものを開発するのに協力するのって勇気のいることだと思うからです。人によっては、欲しい!と思う人もいると思うんですが、僕は何か怖いなーと。それは普段自分の目で自分を見ていないからですよね。鏡に映った自分の顔は左右反対な訳だし、後頭部を見るなんて美容室で髪を切る時ぐらいですから。まあそれはいいとして。
僕は文系なので、こうゆう理系チックな本はあまり読まないので、ロボットというジャンルにも疎いんですが、技術はもうここまできてるのか!というのが正直な感想です。遠隔操作をつかって、自分と同じ動きをするジェミノイド。操作者が喋れば、ジェミノイドの口もパクパクと動くし同じ声が出るし、頭を振れば、ジェミノイドの頭も振れるというまさに一心同体なものが誕生している事実に驚くばかりです。会話ができるということなので、例えば遠方で会議かなんかがある場合はジェミノイドを現地に派遣すれば、わざわざ飛行機に乗ったりなどの手間が省ける。うわーもしこれが普及し始めたら、サミットもアンドロイドだらけになるよなー異様な光景だーなどと想像が膨らむ膨らむ。おもしろかったのが、カフェや電車内で通話していると、人は露骨に嫌な顔を浮かべたり、不快感を示すが、人と話す分には全然気にしない(声の大きさによるが)。そこで、ジェミノイドを携帯電話代わりにすればと筆者は言うのだ。いやーおもしろい。でかい携帯電話ですわ。
他にもおもしろい実験が紹介されてるし(カフェでジェミノイドを放置とか)、写真も多めに載ってるので、ジェミノイドってどうなんだろうと全く知らない方でもわかりやすい構成になってるかと思います。
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この著者、相当な変人で、相当面白かった。
ここまで技術が進歩してるのね…!実際の人々の反応とか興味深い。
人間そのものについても考えさせられる。歳をとる(成長する)過程とか、いま普通にしてることを特別な技術の苦労や意識なくできることは、「人間」である自分だからできることだろうか。