窓の魚

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夏冬春秋
秋よりも早く冬が来る。

姿のない猫の、声

姿かたちという、皮膚一枚のしたにうごめく、どろどろとした感情の奔流。
理性が焼けるほど熱いときもあれば、時にはっとするほど冷え冷えとしているもの。
私が命を賭けるほど大切にしているものは、他人にとってみればただのゴミだ。
意図のずれた、噛み合わない会話は、いびつな球をつくる。
その球を池に向かって投げ込んだような一作。宙ぶらりんの丸投げです。

西加奈子を読むつもりだったんですが、そのつもりで読むと、ちょっと驚き。
でもこういう作風は嫌いじゃないです。個人的には。これからどこ行くんでしょうね。

ハルナとトウヤマがよかったので、★３つ。

★

お湯の中で目を開けると、ゆらゆら揺れるお湯にまぎれ、桃色の花びらのようなものが見えた。湯の花か、きっと錯覚だろうが、何故だか私は、それがバラの花びらだといいのにな、と思った。ハルナの下着からはらりと落ちた、あの赤い、バラの花びらだといいのに。そう、思っていた。

空は、油断していると、すぐに色を変える。ついさっきまで見ていた木の幹や、足元に落ちた何かの葉や、煙草の吸殻などが、いつの間にか目を凝らさなければ見えないようになり、ああしまった、そう思って上を向くと、もう遅い。薄墨を一滴垂らした、雫のようなそれが藍色に広がり、だらしなく、しかしすばやく、黒に変えてしまう。さっきまでの空の色を、黒になる前のそれを思い出そうとしても、駄目だ。それはもう、昨日の中にしかなく、俺は、これから始まる朝までの長い時間のことを思って、心底げんなりする。そしてだらしない夜の、その中から零れ落ちたようなあの女のことを考え、何度も舌打ちするはめになる。

「あんたさぁ、ナツのどこが好きなの？」
アキオはぷしゅ、と缶ビールを開け、ごくごくと喉を鳴らして、それを飲んだ。そんなアキオは、初めて見た。
「どんなとこ？」
綺麗なとこ。それだけは、言わないでほしかった。
何もしなくても、あいつ綺麗なんだよ。それだけは、言わないでほしかった。
アキオがいつか、あたしよりナツを選んだ理由が、自然に作られるその美しさだったんだよと、それだけは、言わないでほしかった。
「分かんないよ」

僕はいつも孤独だった。
皆は僕に話しかけたが、僕を頼りにすることはなかったし、僕を笑わせることはあったが、僕から何か楽しみを享受しようとはしなかった。僕と皆の間には、目に見えない、透明で薄いガラスが、いつもあるような気がした。薄いが、とても頑丈なガラスケースに入って、中から皆を見ているような気がした。時折そこには、傷が映った。ガラスに反射している、大きく不吉な傷を、僕はまざまざと見せ付けられた。

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鄙びた温泉宿にやってきた男女４人の物語。
４人それぞれの立場から宿での一晩の様子を描いている。

全体を通してすっきりしない物語だった。
不気味ささえ覚える。
まだ２０代の彼らからは”生気”がすっぽり抜けてしまっているかのよう。
それぞれ抱えている想いは内に内にと向かい、本当に伝えなければならない相手に対しては語られない。
そこが私にはなんとももどかしく、気味悪く思えた。

みんながみんな少しずつ狂っていて、その静かな狂気が恐ろしく、読んでいるうちに自分の心もすさんでしまうように感じた。
一晩の宿泊は彼らの心を変えたのだろうか？
もっと違う生き方もあると思うよ、と声をかけたくなる小説だった。

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ゾクゾクした。

４人の男女がそれぞれ語り手となり、物語が進んでいく。最後のアキオの章で思わず身震い。あまりにも生死や欲望に対して素直で純粋で、まっすぐなのに歪んでる。そんなアキオの純粋さが、怖い、と思った。
読み進めていくうちに明らかになっていく、４人それぞれの胸の奥底の闇。段々と引き込まれていく自分に気付く。
西加奈子は読む度に違う印象。面白い人だなと思う。

いまいちすっきりしない点は少なからずあるものの、読了後いつまでも胸の中にひっかかって取れないような不思議な余韻が残る。

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よくありそうで、あまりない話かな。

結局、最後までよくわからないまま読み終わっちゃいました。


男女2人ずつの4人組(2カップル)が温泉旅行に行く話。
4人それぞれの視点で物語が進む4部構成。

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4人の男女の目線から語られる温泉旅行。結構面白く読めました。人って言葉にしないだけでいろいろ。当たり前だけど。人の言うことを鵜呑みにして言葉の裏を読む、ということをしない（できない）自分としては、アキオみたいな人にひっかかりそうでちょっと警戒心が芽生えた。この人の作品にしては珍しく関西弁が出てこなかった。「こうふく　あかの」と似たような書き方をしていた。こういう西加奈子も好きです。娯楽としての読書を楽しみたい人のために。

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２カップルでの旅行・・その旅行でのそれぞれの心情を書いているってきりこみがオモシロそうと思ったのだが　その内容がちょっと思ったものと違いヘビーだった。

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2008.9.30
読後感は、とても嫌な感じ。
このメンバーで、温泉に行こう、とか言い出すかな？

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最近、人気のある作家さんなので、前回の「さくら」に続いて、読んでみた。
男女4人で温泉に行く物語で、1章ごとに登場人物の視点で描かれていく。
作り自体は、恩田陸の「黒と茶の幻想」に似ているので、期待していたのだけど、表現が浅いというか、わざとこういう表現を使っているんだと思うけど、私にはあまり理解出来なかった･･･
幕間で語られる殺人事件の結末も曖昧なまま。
はたして、この4人はこの温泉旅行を通して、何かを見つけたのだろうか？
私には何ひとつ、伝わって来なかった。

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普段はあまり親しくないのになぜか一緒に温泉に行くことになった2組の恋人同士。それぞれに内に秘めた思いがあり。付き合っているはずなのにお互い表面だけしかパートナーに見せていない。見せられないその心の中はトラウマ的な心の傷とそれを隠すための卑怯な行為。4人の事情がほんのすこしずつそれぞれに作用し合う。。。。。そんな4人が温泉から戻ってどうなるかは書いていないけれど、たぶんそれぞれ別れて1人になるんじゃないかと思う。悲劇的な別れではなく未来への明るい別れ、、、と思いたい。　　姿の見えない猫、牡丹の刺青をした女性など「？」な部分が多いので読んだ後もいろいろ考えさせられる。

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え、これが西加奈子？という感じ。明るくふわふわした表紙とも内容はずいぶん違っていた。

絡み合う４人のそれぞれの事情。ミステリーホラーめいた作品だった。最後の「アキオ」の章が一番印象に残った。

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秋のある日、二組のカップルが山の温泉へ向かう。一緒にいるのに遠い四人にまとわりつく、猫の鳴き声と不穏な影。裸になっても笑いあっていても、決して交わらない想い。

なんともいえない感覚で始まり終わる。結局、あの人は誰だったの？・・・かもしれない・・程度の結論。四人の人間の奥深く暗い部分がクローズアップされ、物語を四分して展開してゆく。ほんの１日半のできごとが１冊の本になり、こんなに深く掘り下げられ、１つの出来事や１人の発言がこんなにいろんな表情をもってしまうなんて。大きな驚き。

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温泉に旅行に来た２組のカップルをめぐるお話。

今までと雰囲気が違うなー、と感じてしまいました。
というのも、なんか救いが無いような雰囲気がしたので。

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それぞれの生き方やら、なんやら。
それぞれの心のうちやら、なんやら。

時間が流れる感じはゆるやかだけどほのぼのとは違う。
描写はきれい。

今までの西加奈子より、ずっと重い。かんじ。
けど、読みにくい感じではない。

繊細。

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秋のある日、二組のカップルが山の温泉へ向かう。一緒にいるのに遠い四人にまとわりつく、猫の鳴き声と不穏な影。裸になっても笑いあっていても、決して交わらない想い。男の子のようなナツ、つるりとした肌のアキオ。明るく派手なハルナ、ぶっきらぼうなトウヤマ。大人になりきれない恋人たちの旅の一夜を美しく残酷に描いた長編。

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西さんの作品とは思えないダークな内容でした。
四人の登場人物。
ナツ・トウヤマ・ハルナ・アキオが各章ごとに主人公になってて、同じ出来事も、それぞれの視点からの物語はまったく違う感想を抱きます。

物語の「読者の想像にお任せします」という終わり方は、モヤモヤ感たっぷりで私は好きじゃないです。(^_^;)