紙の本
逢いたいなぁ、「あわや半世紀」のちの由美ちゃんに。
2012/05/17 18:30
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫本にあのカバーは必要だろうか、そういうことが一時問題になったことがある。特に岩波文庫までがカバーをつけた時、一部愛好家の間では議論百出したものだ。
私は嫌いではない。新潮文庫の、例えば三島由紀夫であったりカフカであったり、今はだいぶ変わっていてあまり好きではないが、あのカバーで揃えたいという思いがないわけではなかった。
それとあの栞の紐。正式にはスピンというらしいが、あれもついているのが好きだ。
今では新潮文庫ぐらいではないかしら。あとはほとんど紙の栞。あれはいただけない。特にそれに広告が載っていると最悪。
さらには、解説文。
あれから読み始める人もいるようだが、あれも見方によっては、蛇足も甚だしい時もあるし、解説文にしては惜しいというくらいの読み応え十分なものもある。
長々と書いてきたが、庄司薫さんの「薫くんシリーズ」の二作目『白鳥の歌なんか聞えない』が新潮文庫から出た。
まず、カバーの件であるが、カバー装画の長崎訓子さんには申し訳ないが、やはり単行本の際のイメージが良すぎて、このカバーがこの作品に合っているかといえば、うーむと言わざるをえない。
それくらい、「薫くん」ファンはしぶとい。
つぎに、スピンのことだが、これはやっぱりある方がいい。
だけれども、中央公論社の姿勢としてスピンをつけないというポリシーがあったように思う。「薫くん」シリーズはどんなにどうなっても、やはり中央公論社の本で読みたい。
それくらい、「薫くん」ファンはしぶとい。
最後に、解説文のことであるが、この作品では漫画家の柴門ふみさんが担当しているが、これがめっぽういい。さすが「筋金入りの庄司薫ファン」だけある。
柴門さんの解説は単独でも十分読ませる力があって、「七〇年代の少年少女には<知>に対する圧倒的憧憬が、あった」といった文章は、この当時の文学事情および「薫君シリーズ」の人気ぶりを見事に言い当てたものとして印象深い。
特にこの『白鳥の歌なんか聞えない』はその傾向が強い。
それにしても、このシリーズの由美ちゃんのかわいさといったら、ない。
こんな幼馴染がいたら、薫君でもなくても、死ぬまで用心棒として働きたくなる。
逢いたいなぁ、「あわや半世紀」のちの由美ちゃんに。
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「死」という圧倒的な物に対して、”ゆっくり考えていくべきもの”というスタンスをとり続けてふんばっているカオルくんが、素敵だなあと思いました。
カオルくんの友達も、自分の頭を使って色々と考えて、それを実際の自分と照らし合わせてさらに考えて、立派です。駆け落ちをしたり、京都へ旅に出たり、衝動的な行動も多いけれど、そこに若者らしいきらきらとした魅力を感じ、その自分の行動を無かったことにしないで正面から受け止め、頭を使ってそのことに向き合うというスタンス、その流されないところが気に入りました。
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タイトル買い。
読み終わるのに物凄く時間がかかりました。多分、遠回しな言葉の全てを追おうとしてしまったからだと思います。個人的にはそれらの言い回しがくどく感じられて、読んでいると弱冠疲れました。「あれ、これは何について語っているんだったかな?」という感じになってくるんです。話がつまらないとか、趣旨が分からないとかそういう事ではなくて、単純に読むのに疲れるという点で★3つです。
薫君の、一見草食系のインテリ男子っぽいのに中身は割りと荒っぽい!みたいなところが好きです。シリーズものみたいなのでできればもう一冊くらい読んでみたいな。
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「赤頭巾ちゃん気をつけて」に続く薫君シリーズの2作目。今年の3月くらいから新潮文庫でシリーズ4冊が発刊されることになっている。
この第2作目の単行本の初版は1971年2月というから、今から40年以上も前のことだ。
【引用】
ぼくは春が来るとなんとなく嬉しくてそわそわしてしまうのだけれど、そんなところをひとまえでは絶対に見せまい、なんて変なところで頑張って暮らしたりしている。何故って、たとえばそんな具合にうっかりそわそわしているところを見せて、何が嬉しいのか、なんてきかれたらもう最後だと思うわけだ。春が来たから嬉しい、なんて正直に答えたら、相手はカンカンに怒るか大笑いするかに決っているし、それになによりもそんな、何が嬉しいのか、なんてきかれること自体がぼくとしては全くザンギにたえないというか、ふがいないような気がしてしまうのだから。
【引用終わり】
上記は、この本の書き出しの部分の引用だ。
僕が最初にこの本を読んだのは、正確に覚えているわけではないけれども初版の発行からは少し後のことだったと思う。それでも、当時、こんな書き出し、こんな文体の本は読んだことがなく、それだけで、このシリーズに一気に引き込まれてしまった。
数十年ぶりに読み返すことになったけれども、文体も内容も、全く色褪せている気がしない。またまた夢中になって読み終えた。
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「赤頭巾ちゃん~」に続いてこちらも薫くんシリーズ。
『死』に対して敬虔な気持ちになってしまう若者の気持ち、三人三様。
幼馴染に対して優しすぎるくらいに優しい薫くん、やっぱり好きだ!
雑踏の中でも女子大の中でも彼女を必ず一目で見つけられると断言できるセリフに胸キュンです。
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2012.10.27読了。
全ての男の子が通る道である。あの人も、この人も、人生のどこかに「薫くん」的1ページは挟まっているのだと思う。
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薫くんシリーズでいちばん好き。
優しさがエゴだと知っているから薫くんはほんとうに優しい。悲しいくらい
優しい。それが、彼の強さになるくらい。
由美ちゃんのファンになって、モクレンの花が好きな花になった。
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守るべき人間の心の奥にある優しいところ、優しくてとてもあたたかいところ、その善き側面、それを懸命にえがこうとする姿勢にとても感動したし、このひとは本当に文章を書く意味というものを真剣にとらえていたんだなあということを改めて感じる。前作を読んで、もう少し内容を物語という枠に落として機能させてほしいと思っていたけれども、もうこれはこれでいいのかなあと思った。こういう正直でまっすぐで、だから多くの人に読まれて受け入れられて評価されてっていうのも悪くはないのかなあ、それが文学というくくりになるとまた話は別だけれども、本として小説としての影響力という意味では、いいことなのかなあ。
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庄司薫『白鳥の歌なんか聞えない』本筋とは離れるけど…前作では知性と感性と真っ向から対峙しようと四苦八苦していた小林くんが、どこまで本気かは分からんが便箋100枚ものラブレターとともに駆け落ち騒ぎを起こしちゃうところがすげーよかった。
ラストのモクレンのくだりも素敵。
ザッツ青春文学!って感じ。
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主人公薫くんの幼なじみである由美の物語の印象が強い。確かに彼女が大きな困難(?)に直面し、それを乗り越える話が大きなウエイトを占めるのだけど、実はむしろ、薫くんの成長の方がメインなのだと、再読をして初めて気がついた。もちろん、彼女も大きく成長しているのは確かで、感動的であるのだけれど。
また、ずいぶん昔読んで以来、あまり印象に残っていなかった薫くんの男友達たちのエピソードもなかなかおもしろかった。こちらの方は、こう言っちゃ何だけど、身に覚えがあるというか、その「トタバタ」ぶりは、とっても懐かしく共感できるのである。こうやって、ほとんど無駄と行ってもいいくらいの堂々巡りを、思い切り真剣にやっていたなって自分や仲間のことを思い出したりする。今だって別の形でやっているんだけどね。
でもやっぱり印象的なのは、薫くんと由美、それぞれの成長と関係。個人的には「お雑煮」の使われ方が、いかにも男の子のかっこ悪さを気持ちよく象徴していて好きだった。まあ、クライマックス(?)はとても印象的なんだけど、それはもしかしたら、僕自身はああいうかっこつけ方はたぶんできないって思うからかもしれない。今までちょっと余裕を持って眺めていたはずの薫くんが、すっと高いところへ行ってしまったような感じがすると言ったら言い過ぎだろうか。
魅力的な冗長文体は健在。「赤頭巾ちゃん気をつけて」に比べてやや控えめな気がするのは、物語中で流れる時間が長くて、その分事件が起こりやすく、結果的に思索を書き表すことがメインになる箇所が減るからだろう。小説としては、こっちのほうがずっと読みやすく感じた。
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庄司薫くんシリーズ2弾。薫くんは浪人で迎える春休み。相変わらず幼馴染の由美ちゃんとの攻防が面白い。由美ちゃんって繊細すぎる気がするけど、昔のインテリな女の子はみんなあんなだったのかな。それを言うなら今も薫くんのような男の子はいるのかしら。いたらいいなあ、と思いを馳せつつ再読。
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どうにも評価が難しい。前作『赤頭巾ちゃん気をつけて』ほどのインパクトはないが、その流れを汲む本作品も当然それに準じる内容があるので、そこまでランク・ダウンするわけではない。でも、やはり前作と比較してしまうと、どこか物足りなさを感じてしまう。もちろん、おもしろさもあるにはあるが、どちらかというと、著者独特の冗長で不思議な感じの文章が、悪い方向に作用しているようにも思う。ただ、前作でさえ、一部を切り取ってしまうとやっぱりなにをいっているかわからない部分も多かったので、そう考えると本作も前作と比べたらなにも変わっていないような気もする。印象的な人物は、小林と小沢さんの祖父。とくに後者は物語中で亡くなってしまうわけであるが、それが主人公とのかかわりが強い人間ではないにしろ、「死」という重いテーマを扱いつつ、物語の雰囲気を悪くさせていない点は、さすがであると思う。この文体だからこそ、こういう表現ができるのかもしれない。そして、祖父の病状や最期にかんする内容は、そのほとんどが小沢さんどころか、それをさらに人づてに聞いたことによって主人公に知らされている。かぎりなく遠い描きかたをしているが、でも主人公になにももたらさないかといえば、けっしてそういうわけでもない。この微妙な距離感など、描写の仕方は巧い。人が死ぬことを書くことじたいはスゴく簡単で、だからこそそれを正確に成立させるのはスゴく困難なはず。そのあたりの違和感がなく読めたのは、著者の成せる業であろう。なんの小説かひとことでは答えづらく、たんに恋愛小説とか青春小説とかありがちなジャンルわけをするのも違う気がするのであるが、とにかく独特の世界が展開していることだけはたしかである。
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木蓮の花が咲き始めて満開になる頃、浪人になった男の子とその周りの人たちの物語。
真摯だけど少し突っ張っていて、どこか上品でエセではないインテリの香りがします。女中さんが出てきたり、樹木のある庭のある町並みとか、昔の山の手のイメージ。
外国語の本を含んだ立派な蔵書から、その持ち主の豊かな知性や器の大きさを感じ取り、憧憬とも嫉妬ともいえる思いを抱く、彼のみずみずしい若さ。しかも、死に直面しているその蔵書の持ち主に女友達が寄せる感情の波に、彼も揺り動かされているところが、なんとも。
死別という思いテーマを扱った青春小説でもあります。
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薫くんシリーズ2冊目。今回は、由美ちゃんとの関係性に大きな変化が訪れるのか?と思わせる展開。結局この後、2人が正式に恋人同士になったのかどうかは分からないけれど、付き合いましょうそうしましょう、なんて口約束は必要ないのかもしれない。だって、薫くんは由美ちゃんの、由美ちゃんは薫くんの、心の片割れなのだから。
薫くんが自分自身と戦う様子は、今回も圧巻。でもね、そんなにずーっと色んなことを考えてたら、いつか気が狂ってしまうんじゃないかと心配になる。たまには、流れに身を任せてもいいんじゃない?
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シリーズものだったとは…。
青年期のモヤモヤ感がよく描かれているのかなあと思います。言っていることはよく分からなかったけど。