「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
【第164回直木賞受賞作】
「誰の心にも淀みはある。でも、それが人ってもんでね」
江戸、千駄木町の一角は心町(うらまち)と呼ばれ、そこには「心淋し川(うらさびしがわ)」と呼ばれる小さく淀んだ川が流れていた。川のどん詰まりには古びた長屋が建ち並び、そこに暮らす人々もまた、人生という川の流れに行き詰まり、もがいていた。
青物卸の大隅屋六兵衛は、一つの長屋に不美人な妾を四人も囲っている。その一人、一番年嵩で先行きに不安を覚えていたおりきは、六兵衛が持ち込んだ張形をながめているうち、悪戯心から小刀で仏像を彫りだして……(「閨仏」)。
裏長屋で飯屋を営む与吾蔵は、仕入れ帰りに立ち寄る根津権現で、小さな唄声を聞く。かつて、荒れた日々を過ごしていた与吾蔵が手酷く捨ててしまった女がよく口にしていた、珍しい唄だった。唄声の主は小さな女の子供。思わず声をかけた与吾蔵だったが――(「はじめましょ」)ほか全六話。
生きる喜びと生きる哀しみが織りなす、著者渾身の時代小説。
【本の内容】
収録作品一覧
心淋し川 | 5−42 | |
---|---|---|
閨仏 | 43−80 | |
はじめましょ | 81−121 |
著者紹介
西條 奈加
- 略歴
- 1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノべル大賞を受賞し、デビュー。2012年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、2015年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞を受賞。近著に『亥子ころころ』『せき越えぬ』『わかれ縁』などがある。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
流されて淀みに集まってきたようなワケありの人の悲喜こもごも。最後の収束はお見事
2021/12/09 14:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸のとある場所を流れる心(うら)川沿いにある長屋が立ち並ぶ心町を舞台に、そこに住む様々な人々の心情や人情等の人間模様を描いた作品です。心町の貧乏長屋に住む人々の心の澱。うらさびし川というこのタイトルが読んでいくにつれ染みいってくる。差配の茂十、目が行き届いていて学もあってただ者ではない感。そしてやはり大きな淋しさを抱えていたという。めっちゃ好みでありました。楽しかったです。差配の茂十さん渋くて素敵。
紙の本
これは女たちの物語でもある
2021/10/12 15:56
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第164回直木賞受賞作。(2020年)
6つの作品からなる連作短編集で、「際立った力量」(林真理子委員)、「圧倒的な安定感」(桐野夏生委員)など選考委員のほぼ全員高い評価を受けての受賞となった時代小説だ。
中でも角田光代委員の「悲しみと情けなさとが詰まった生のいとしさを、この作品は静かな筆致で描いている」という評は、短い文章ながらこの作品を言い得ている。
物語の舞台は江戸・千駄木町の一角にある心(うら)町。
そこを流れる小さな川が心(うら)川。その両脇に立ち腐れたように固まって四つ五つ建っている長屋の住人たちが物語の主人公である。
心川から流れ込んだ窪地には、雨水とともに塵芥が淀んでいて、そんなところに住み人たちだから、皆一様にさまざまな過去と今を抱えている。
そんな街に差配(世話人)としている茂十が、6つの短編の狂言回しのようにしているが、最後の「灰の男」ではその茂十の過去が明かされ、全体が大きな長編小説のようにして締まっている構成になっている。
6つの作品で選考委員たちの評価が高かったのは「閨仏」だ。
心町にある長屋に四人の器量の悪い女たちが住んでいる。彼女たちは六兵衛という男の妾でもあるのだが、中で一番年かさの「りき」という女が主人公。
ある日六兵衛が持ってきた張形で、りきは仏のようなものを彫ってみる。
そこから四人の女たちの運命が変わっていく。
この作品を桐野夏生委員は「すっとぼけた話も書けるのだから、作者はなかなか強か」と評している。
生きることに強かなのは、この物語の登場人物たちだろう。
紙の本
慟哭の果ての<寂寥>と生きる、人間賛歌
2024/01/26 16:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Blue moon1953 - この投稿者のレビュー一覧を見る
各章が独立した物語でありながら、「心淋し川」全体として一つの物語ともなっている絶絶妙な構成。
最終章になって初めて、「心淋し川」の真の主人公が誰なのかに気付かされる。各章の登場人物がオールスターのように再登場し、主人公の人生に絡んでもくる。最後に明かされる真実には、慟哭を禁じ得ない。
各章の主人公たちは、それぞれに違った人生の寂寥を抱えている。理不尽な運命に区切りをつけ、慟哭の果ての<寂寥>と生きる様には、胸衝かれる想いがする。
最終章『灰の男』に込められた深い意味にも、驚かされる。暗く重い話のように見えるが、ラストシーンでは、第一章の恋の結末も知らされ、皆が未来を向いてい生きていこうという姿で幕引きとなる。最後の台詞に、未来への希望も感じさせ、西條氏の人間賛歌ともなっていようか。
電子書籍
庶民こそ物語がある
2023/03/16 19:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト - この投稿者のレビュー一覧を見る
家庭環境にも恵まれず、貧乏を絵にかいたような生活の中でも、ささやかな希望を持つが、あっという間に裏切られるてしまう。
けれども、投げやりになりそうになりながらも淡々と毎日を過ごすうちに「捨てる神あれば拾う神あり」ちょっとそう思えるお話があります。
絡まった人生の流れがどこかで急にほどけていくような、どこで何があるのか分からないのが人生だ、と思わせる名手です。
人は本当の意味で「許す」ということができるのか、を考えさせられました。
紙の本
久しぶりに読書した感
2021/06/05 21:55
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:玉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なかなかゆっくり読書する時間をとれない毎日ですが、
久しぶりに読書した感満載の小説でした。
頭の中に江戸時代の江戸のうらさびしい情景が浮かんできて、
それぞれの話の登場人物に感情移入できて、
人生そのものをたくさん考えることができました。
紙の本
寂しさということ
2021/02/24 07:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nekodanshaku - この投稿者のレビュー一覧を見る
心の中が寂しいという意味合いを持つ心町(うらまち)、その中をはしる澱んだ心川(うらかわ)、それを心の風景として、そこに住む人々の生き様を描く。芥が川の澱みに集まるように、訳ありの人たちがその街に集まる。物語の終わりには、生きなおすことが可能な想いが漂う。暖かな時代小説だ。
紙の本
西條奈加さんの直木賞受賞作
2022/08/11 10:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
西條奈加さんの直木賞受賞作を遅ればせながら。滞留する川の流れに重ねて描かれる、市政の人々の思うように進まない人生の切り取り方が絶妙です。時代も風景も全く異なるのですがSIONの80年代の名曲「コンクリート・リバー」を頭の中でBGMにして読みました。
紙の本
第164回直木賞受賞作、ということで買ってみた。
2021/05/02 15:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオハシ - この投稿者のレビュー一覧を見る
第164回直木賞受賞作、ということで買ってみた。「推し燃ゆ」の芥川賞も気になったが、芥川賞作品は僕の理解力では追いつけないことも多く、直木賞作品を買うことにした。
二度読みは昨今よくするようになったが、二度読みすぐにしたくなる、二度読みしないとわけわからん、二度読みして初めてわかる、ずどーーんと切ない、淋しい、愛にあふれる、というか、僕の表現力では言い表すことができない、なるほどさすが直木賞とはこういうものかと勝手に感動してました。
帯には、短編がいくつかのような記載、「全六編」と表現されている。前半読んで江戸時代のこういった時代背景のこと、あんまり詳しくないんで、と、思いながら読み進め、「差配」さん、よく出てくるな、というか差配さんだけが軸になって複数のストーリーが流れているな、と気づき始めた後半…。これ以上は書けません。
僕は、一昨年まで千葉の柏に住んでいて常磐線/千代田線で通っていたから、根津/千駄木とかそういうところもなんとなく名前はわかる(降りて歩いたことないけど)そういうところもあって、まさに降りて歩いて歴史を学びたかったな、というのはありますね。 そういう背景があってできた「まち」というとまた違った見え方ができてきますよね。
というか個人的にはレビューがすごく書きにくい。 ほかの人はどう書いてるんだろう?とまで調べることはしたくないしね。 ネタバレレビュでは、ほんとつまんないし。 (というか改めて内容分かってからタイトル(章見出し)を見返すだけで、深い、と思う。。)
引用抜粋
========
■一度目
・P85 「おれの弱気もおめえの勝気も、世間さまじゃ疎まれる。ここはそういうはみ出し者ばかりが吹き溜まる。世の中って海を上手に泳げないまま流されてきた。灰汁(あく)がつよかったり面倒な者もいるが、少なくとも『あたりまえ』を楯に、難癖をつけるような真似はしねえ」
・P231「すまない、商人に頼まれたというのは嘘だ。仔細は明かせぬが、あの町で、どうしても成し遂げたいことがある。住人に迷惑はかけない。差配として、精一杯働くつもりだ」
どうか承知してもらえまいかと、頭を下げた。
「よろしいですよ、旦那。何があったかきかぬのが、心町の理(ことわり)ですから」
「…いいのか?」
「生き直すには、悪くねえ土地でさ」
老差配は、菩薩のような顔で微笑んでいた。
・P154 「息子のため、富士乃助のためなら、苦労とは思いません。それが母親というものです」
そこにいるのは、息子の我儘にふり回される哀れな母ではなかった。憑かれたように我が子に執着(しゅうじゃく)し、獰猛なまでに情という刃をかざす姿があった。
「だが、お吉さん…親は最後まで、子供の面倒は見てやれない。あんたが先立てば、息子はどうなる? 子はいつか一人立ちをする。その力をつけてやるのが、親の務めじゃないのかね。あんたのやっていることは、まるで‥}
#このシーンの直後に、二度目のときに特に気になるくだりがありました。(割愛)
・P194
ちょうどこの川のように、とろりと濁ったままの頭を揺さぶり目を覚まさせようと、十二年のあいだ石を投げ続けたが、甲斐はなかった。投げた石の重みは、はね返ってでもくるように、茂十の中で嵩(かさ)を増す。
========
紙の本
ひとが暮らす町
2021/04/30 11:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
連作短編集、1編からの始まりのうら淋しい暮らしから、人々の過去を語り、繋げていく構成が見事。
序盤から中盤、終盤と盛り上げ方も見事。
直木賞に相応しい小説。
これからの小説も楽しみ。
電子書籍
過去
2021/02/20 20:23
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:犬 - この投稿者のレビュー一覧を見る
6つの短編からなっている物語で、それぞれの主人公が、辛い現実や過去に悩みながらも、心町の人との出会いを通して居場所を掴んでいく話でした。
この本を通して、自分の居場所はどこなのか、幸せとはなんなのかという点を考えさせられました。
紙の本
心の襞
2020/12/21 10:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
人情の物語の影に闇が滲む場面がちらほら。
読後感の良い話が多いなか「冬虫夏草」が怖い。
不自由な身を母親の執着に包まれて生きる富士之介の今後がどうなるのか、薄ら寒くなる。
紙の本
直木賞作品
2022/04/10 06:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
六つ短編集だが、最後の話で全体をまとめています。どうせならば同じ長屋のお妾さんを主人公に、それぞれのエピソードを書いて欲しかったかな……皆さん、ワケアリのようだし。
紙の本
淀んだ日常
2021/08/30 22:48
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぱんや - この投稿者のレビュー一覧を見る
心淋し川の流れる土地での江戸の人間模様を書いた作品。どこか淀んだ日常や心情と、心淋し川を重ね合わせている。いくつかある中で私は最後の灰色の男がすき。恨みや復讐心が人との触れ合いや時間の流れで変わっていく。心が穏やかになり近くの川でぼうっとしたくなりました。
電子書籍
最初は
2022/04/11 00:54
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
一つの長屋に年増の妾、四人ってどうなんだ?ーと思ったのは、つかの間でした……。一番年増のが彫った仏像……。そして、四人は……という動きになります。