紙の本
朱鳥の陵
2012/08/07 17:06
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっしー - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の白妙の夢語りから、讚良の皇女の闇の所業を回想することに出会ってしまうという。闇の歴史として語り継がれてきた秘密をダイレクトに導き出す上手さ。中大兄を葛城皇子と正確に表記するのも嬉しい。白妙と聞けば、万葉集のあの歌と思いながら読み進めると、やはり結末への伏線であった。この時代の小説は、得てして独善的になり強引なストーリになる帰来があるが、本書は実に軽快なタッチで重みのある仕上がりになっている。近年稀にみる秀作と思う。
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並々ならぬ面白さとおどろおどろしさ。
皇女の不吉な夢を解くために宮に呼ばれた能力者白妙が、現実の時空を超越する「ドリーム・タイム」で、読者とともに、持統天皇の一生をその内面から追体験してゆく筋立て。
だがそれは、終盤に向かい、徐々に、見るもの、見られるものの反転を起こしてゆく。このミステリー仕立ての筋は、追い込まれてゆく白妙の恐怖が読者に重なる見事な構成となっている。ついには夢に食われてしまう、ぞっとするような身の毛もよだつラストには、逃れられない悪夢にも似た恐怖に引きずり込まれる。
イヤイヤ実に怖かった。
これは、飛鳥時代の歴史に詳しい人なら、面白さ倍増なのではないかと思う。
知らないと、系図や人間関係把握するのが大変。
だけど、まあ教科書程度の知識があれば、何とか古代日本の呪術的世界観、その雰囲気と面白さにハマれると思う。(山岸涼子の「日出ずるところの天子」に少し登場人物が被るので、少しだけ皇子たちの先行イメージがあって助けになったかも。)
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怖すぎる、、、でも2日で読み切りました。
ページをめくる手が止められないのは久しぶりです。
百人一首、想像するだけでぞっとします。
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「小説すばる」に連載したものの単行本化。
漢語に和語のルビを付け、飛鳥時代後期の宮廷の権力闘争を持統天皇の心を他者が覗くという形で描いた力作。
天武天皇を「飛鳥浄御原朝(あすかきよみはらのみかど)」と書くなど、当時の言い方で書いていて注もないため、古代史の知識がないと読みにくい。
御名部皇女(みなべのみこ、天智天皇の娘で天武天皇の長男高市皇子の妃)の夢解きのために、皇太妃(御名部皇女の同母妹の阿倍皇女。草壁皇子の妃で元明天皇の母)の命ではるばる常陸国から呼び出されたのが、主人公の日枝夢解売(ひえだのゆめときめ)。兄は稗田阿礼。
死んだ高市皇子が御名部皇女の夢に現れて伝えようとしたことを解こうとすると、日枝夢解売は讃良皇女(ささらのみこ、天智天皇の娘で、天武天皇皇后、物語当時は文武天皇の祖母の太上天皇として実権を掌握)の心に入り込んでしまい、その苦悩と、恐ろしい秘密を知ってしまう。
持統天皇を政権中枢にあって、愛する者との関係に苦悩する女性として描く小説はこれまでなかったのではないだろうか。
百人一首でよく知られる持統天皇の和歌が示しているとする物語の終わり方も実にぞっとする。
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怖かった。坂東先生の描く古代史、どれだけ怖いかと思ってかなり期待、やっぱり怖かった。
かねてより、この時代の小説は井上靖先生、永井路子先生や杉本苑子先生、黒岩重吾先生を読み漁っていたので、鵜野讃良を皇女時代から持統天皇まで知る者としては(!?)彼女の人間臭い面をみてしまったのが畏れ多い。
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持統天皇の底知れぬ怖さじわじわと染入ってくる、でも読む手を止められない。古事記、日本書紀にからむ問題もさりげなく提示しお見事。それにしても、持統天皇の有名な歌『春すぎて、、」の景色が変わってしまった。怖すぎ!
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考えてみれば天皇の名は諡であって生前には別の名前があった.日本書紀の頃の知識がないと始めは誰が誰だか分からない.一人の夢解きの巫女を介して持統天皇の愛憎、陰謀が明らかにされる.百人一首で有名な「夏すぎて..」ののどかな感じはもう味わえなくなるので要注意.欲を言えば壬申の乱をもう少し詳しく描いてほしかった.
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持統天皇を夢解きを通して描く作品。
視点が面白かったかな。
御名部や元明天皇等も出てきて、読みごたえはあるか。
とはいえ、持統像も従来のものであるので、この作品で読まなくてもいいのでは、と思うところが残念。
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常陸国(表紙裏の図でみると今の関東の辺)の霊能者(白妙)が京に呼ばれ夢解きをする。白妙はするりと人の心の中に入り込んで心の秘密を読んでしまう。入り込んだ心は讃良(=ささらのちの持統天皇)。恐ろしい夢の意味を解くうちに白妙は正体を知られてしまい、命の危険を感じていく。その臨場感が難解な文章と人名に窮することなく読むページをめくらせた。あらためてこの時代の相関図のごちゃごちゃが恐ろしい。血を汚さない強い勢力支配のもとで親も子も身に害あるものは排除していく。物語はそうやって創られていくのだ。百人一首の持統天皇の歌「春すぎて夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」の解釈が著者によってこんなふうに描かれるとは・・・小説家の醍醐味でしょうか。
神と人の境界が作られる古事記の時代に惹き込まれた。
コミック「天上の虹」を夢中になって読んだ頃を懐かしく思い出した。もう一度読みたい。著者の里中真知子さんは文庫サイズで6巻ほどあったが、「天上の虹」のその後を描かれたのだろうか。
調べてたらライフワークとして現在も続いているとのこと。
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持統天皇の生涯を描く異色歴史小説。
とゆうよりも、出だしはミステリー(夢の謎)やSF(夢解き)調なのだが、ラストに向けてのエロチックさ、グロさ、ホラーさは坂東ワールドそのものでした。
大和言葉のルビが余計読みづらくしているようにも感じたが、当時の時代の雰囲気が醸し出されてもいた。
歴史おたくの人ならタイトルからも対象の時代が想像つくと思いますが、持統天皇誕生における大胆な仮説は歴史小説としても面白いです。
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『白妙』という夢を見て占う女性の目を通して、持統天皇の生涯を読み解いた話。
初めは読みづらい仮名とわけのわからない人物相関図で最後まで読めないかも・・・と挫けそうになってきたが、途中から筋が見えてくると、鬼の世界と人間の世界にまだ境がなく、混沌としていた時代の禍々しい雰囲気にのまれて、物語にぐいぐい引き込まれていった。
『白妙』という名前の意味を最後に知った時の恐ろしいこと・・・
初の作家さんでしたが他の本も読みたいです。
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おもしろかったです。
怖いお話でした
そうであったかもしれない。と思わせる内容です。
「衣ほしたり・・」の歌にぞっとした。
学生時代、飛鳥時代の小説をよく読んでいたので、
人の関係は、おおよそ理解できた
当時は、権力闘争の歴史物語+人の愛憎として面白く読んだけれど、
今読むと、違う感想をもつかもしれませんね。
権力を求めたのは、他のものの代替だったのかもしれないと思わせます
狭い閉じられた空間で長い間暮らしていると、狂気がしのびよる
そこでの栄華を求め、手段を選ばず、強硬になってゆく
高い強固な壁を作るのは、心に壁があるからだ
外来の文化である、仏教に傾倒していく様
中国、韓国からの文化の輸入
権力闘争に勝った、人殺しと陰謀が上手かった者とその子供が
神となっていく様
そんなことが印象に残ります。
飛鳥時代の小説
額田女王・井上靖
茜さす・ 永井路子
茜に燃ゆ 小説額田王・ 黒岩重吾
宇宙皇子・藤川桂介
他にもあったとおもうのですが・・・
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飛鳥時代。人の夢を読み解く力を持った白妙は、讃良皇女の心の中を覗いてしまいます。
それは時の最高権力者、太政天皇(持統天皇)の過去であり、
その後も白妙はたびたび持統天皇の心の中に滑り込んでしまいます。
白妙を通して、持統天皇の過去や歩んできた道、秘密に迫る歴史小説です。
タイトルでぴんときて、迷わず買いました。
当時の人物相関図や事件・出来事に関しては、古代日本史が好きということもあり、読んでいて苦労はしなかったです。
ただ、人名や地名、役職名など特殊な読み方は、ある程度は把握しているつもりでしたが、
読み方が全て大和言葉で書かれていて、やや読みにくいきらいがあります。(すぐに慣れると思いますが。)
今まで色々な作家達が持統天皇について描いていらして、
様々な持統像や歴史観があるかと思います。
この物語を読んでいて、「こういう捉え方、解釈もあるんだ」と目から鱗な部分が多く、
坂東版持統天皇を非常に楽しく読むことが出来ました。
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ティーンエイジャーの頃の遠い記憶を呼び起こしながら、あるいは改めて歴史の教科書に載っていたような事柄を調べたりして読み進めていったわけだが、大化の改新前後からいわゆる律令制度に至るまでの数十年間を、ここまで書いていいのか? というぐらいドラスティックな解釈を施して再構築している。
坂東眞砂子氏はこの著作においても、女性の特異性というものに徹底的に着目して、物語を綴っている。
本当に、女の中に潜む情念を描くことにおいては、随一の技術を持つといっていいだろう。
おお、あの中大兄皇子が、中臣鎌足が、大海人皇子が藤原不比等が、という具合に歴史ミステリーとして充分読み応えがありながら、最後はやっぱり一級のホラー作品としても成立するように仕上げている。
終盤の持統天皇の怖さといったら、「黒い家」の菰田幸子ばりだ。
登場人物たちに関しては、近親婚姻が多く、呼び名も長じるにつれて変わることもあるので、常に相互の関係性を頭に置きながら読まなければならないのがやや疲れる。
また、読後感は決していいものではない。
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大作でした。
最後の歌の段。
出来たら、もう少し暗くない方がよかったのですが、でも、この終結が坂東真砂子さ
んというべきなのかも。