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2009/12/19
著者は日本の小説家で精神科医である、加賀乙彦。
『他者を過剰に意識することは、
言い換えるなら、自分の評価を他人に
ゆだねてしまっているということです。(p.60)』
現代を生きる日本人独特の陥りがちな心の問題について、
精神科医としての多彩な経験から誠実に語りかけてくる。
自分を客観的、冷静に見つめなおすよう働きかけてくれる良書。
また、著者が影響を受けたいくつかの書籍も紹介しており、
見地が広がりました。
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若い人にも読んでもらいたいなぁー。
後半は、とてもリアルに納得しながら、興味深く読ませていただきました。
今年は、加賀乙彦さんの本を読破できたらいいかなぁ~。
ものすごく久しぶりに、“フランドルの冬”も読み直してみよう!
マックス
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ふうぅ~むぅ。。。やはり80過ぎの御大の言うことはどうしてもそれだけで重みがあるねぇ・・。内容を云々する前にその事実だけでなんだかもういろいろ評価めいたことを書きづらい。。。(笑)。
ともあれ,著者は若いころ刑務所での精神科医として勤務していたこともあるらしく,その後は著作もし,名前は昔から知っているが,なかなかちゃんとした著作を読んだことはないと思う(今念のため再確認したが,やはりなかった。それにしてもずいぶんと書かれているんですね。)。
新書としてよくまとまった,内容的にも読み応えが十分にある一作。
前段は,最近の通り魔事件などにも見られる若者の精神性について考察する。ヒトのものさしを自分にあてがい,それで自分を評価しようとするところに幸福になれない自分の原因を求めようとする。確かに,その通りだ。世間の価値観で自分を測ることは,結局自分の価値観の放棄に他ならない。日頃から私が思っていることを端的に指摘してくれる。
しかし一方で,現代社会は個人主義の時代とも言われる。行き過ぎた個人主義が社会性の欠如を産み,逸脱行動の正当化にも使われかねない時代である。なぜ今この個人主義の時代にあって,自分の価値観に自信がもてず,ヒトの価値観に依存するのか,その辺が逆説的に感じる。
中間の政策論については,刑事政策敵な面など興味がある分野であるが,思いのほか大きな政府的な思想をお持ちのようで,その辺はやや自分とは違う感性のように感じながら読み進んだ。
後半の老後の行き方,死を前にした生き方というくだりは,他の諸費用も一様に述べているが,さすがである。説得力をもって迫ってくるものがある。気概と気迫の伝わる筆致である。
自分が老境を迎えたときにまた改めて戻って来たい本でもある。
こうした骨のある戦中派が少なくなっていることは日本にとって本当に惜しまれることである。(多くの国民が,彼らにおためごかしに「遠のく戦争の記憶」などと奇麗事を言いながら,その実,軍国主義教育の名残を見るかのようなまなざしを向けてきたが,彼らの持つ静謐なまじめな空気と自分に厳しい生き方は,本当は日本人が本当は失ってはならないものであったと思う。)
古武士を見るような一冊である。
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精神科医にして作家でもある著者による幸福論。
第1章:幸福を阻む考え方・生き方
第2章:「不幸増幅装置」ニッポンをつくったもの
第3章:幸福はしなやかな生に宿る
第4章:幸せに生きるための「老い」と「死」
第1〜3章は共感は出来るものの、正直言って目新しいものではなかった。
しかしながら第4章の著者本人の老い方、生き方を客観的に捉えた
考察は非常に興味深く、得るところが大きかった。
「老い」と「死」を受け入れ、恐れずに豊かに生きること。
それができれば自分の人生を全うしたと思えるだろう。
しかしこのニッポンをなんとかしないと
死んでも死にきれない、とも思う。
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前半が若者向けに対し、後半が中高年向けで、総論としては若者にも読んで欲しいといいながら老人が読む本か。見方を変えてというのは、振り返る老人には容易でも、その渦中にある若者にとってはどうなのだろう。この本を読んで張り切ってチャレンジする老人達と引いてしまう若者達、そんな皮肉な見方をついしてしまう。
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基本的思想に同意。特別にユニークな考え方なわけではなく普遍的なものと思うが、こういう本をたまに読まないと日々現実に晒される中で自分の軸がブレてしまう。達観できるほど練れてないので…。
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小学生の頃の話。毎日、朝の会で「今日の目標」というものを決めていました。廊下を走らないようにしよう。ゴミが落ちていたら拾うようにしよう。そういう他愛もない目標が決められていたのですが、こんな目標を決めることがありました。
「いちにち、元気に明るく過ごそう」
今思えば、壮大な目標だと思います。毎日毎日、楽しいことや嬉しいことばかりがあるわけではありません。つらいことや泣きたいこともあるのに、「元気で明るく過ごせ」とな。
現代社会は、明るく前向きで社交的であることばかりが評価される社会であるような気がします。悩んでいる姿を見せたり、人生について議論したりするのは、暗い・重い・ダサいというイメージが浸透し、友達同士でも「明るく元気」を装って表面的な部分で付き合う人が増えているのではないでしょうか。
また、ポジティブ・シンキングやプラス思考をすすめる本が次々に出版され、他者に対し装うだけでなく、自分自身に対しても常に明るく前向きであることを強いる傾向があるように思えてなりません。前向きに考えるのは大事なことですが、悩むというプロセスを抜きにしたプラス思考は、自分の弱さやダメな部分から目を逸らすことにつながりかねません。
大いに悩み、まず自分の弱さや能力の限界を知って、それを認めてこそ、「では、どうしたら変えていけるだろうか?」と考えることができるようになるのではないのでしょうか。悩むことをとおして人は自分を知り、成長していくもの。悩むことを忘れては、人間としての広さを身につけることはできません。
そんなことを考えさせられた1冊です。
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長引く不況ため、幸福を感じるにくい国になった日本でいかにして幸福を感じるか。最後は幸せのための老いと死を見つめる。
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年輩の教員からお借りした本。
日本人は他人と一緒じゃないと不安になる。
欧米人は、他人と一緒が嫌だと悩む。
この違いが、日本人のうつ病者・自殺者の多さに繋がっているみたい。
確かに、人と一緒なことに安心感を得ていることあるよなぁ。
そして、人と比べて自分は劣っているとか不幸だとか思いがち。
確かに!と思いながら読んだ。
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[ 内容 ]
経済は破綻し格差は拡大する一方、将来への希望を持つことが難しい日本にあって、「幸せ」は遠のくばかりと感じている人は多い。
しかし、実は日本人は自ら不幸の種まきをし、幸福に背を向ける国民性を有しているのではないか―。
精神科医、心理学者でもある作家が「幸せになれない日本人」の秘密を解き明かし、幸福になるための発想の転換法を伝授する。
追い求めている間は決して手にいれることのできない「幸福」の真の意味を問う、不幸な時代に必読の書。
[ 目次 ]
第1章 幸福を阻む考え方・生き方(「考えない」習性が生み出す不幸;他者を意識しすぎる不幸)
第2章 「不幸増幅装置」ニッポンをつくったもの(経済最優先で奪われた「安心」と「つながり」;流され続けた日本人)
第3章 幸福は「しなやか」な生に宿る(不幸を幸福に変える心の技術;幸せを追求する人生から、幸福を生み・担う生き方へ)
第4章 幸せに生きるための「老い」と「死」(人生八十五年時代の「豊かな老い」の過ごし方;死を思うことは、よく生きること)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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とても読みやすくてわかりやすかった。
物に恵まれて豊かな日本、そんなはずなのに心に余裕がない日本。
私自分自身がアメリカに留学して、日本を客観的に見て、日本人の悲しいともとれる特徴を理解できたから、この本の内容には共感と納得させられた。
わりとみんな気づいているけど理解しきれてないことが述べられていて、なんか再確認できた感じ。
いろいろ行き詰ったときに読むといいかも。
幸せってさ、ひとそれぞれ違うし、様々な形があると思うけど、
自分が自分でいれることが一番なんじゃないかな。
いいところはもちろん褒めてあげるし、
悪いところも受け入れてあげて、
できることから始めてがんばるの。
競争社会、人の目を気にする日本の環境自体がそれを妨げているような気がするけど・・・。
それが日本だし、って言うのもありだし、
そのなかでうまく生きれたらいいんだけどね。
気難しい人の集まりだな、ニッポン。
産まれてきたのは偶然で死ぬのは必然で、
産まれてきたこと自体ラッキーで幸せなことだけど、
瞬間的な幸せじゃなくて死ぬまで継続的な幸せでありたいね。
もちろん楽しいことだけじゃなくて、苦しいことも含めてね。
にーほーんーー
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一番にならなくてもいい、
そのままのあなたでいい、
というのは、がんばりすぎている人には
言ってあげてもいいけど、
“もっとがんばれよ”
っていう人ばかりがこれを鵜呑みにする。
“こうすれば絶対幸せになる”
なんて法則はないわけで。
本書ではがんばれ、とも言ってるし、
ゆっくり行くのがいい、とも言っている。
それはどっちつかず、という事ではなくて、
どっちもあり、どっちも必要、なのだと思う。
当たり前と言えば当たり前の事が書かれているのだけど、
改めて言われると反省する事が多い。
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「明るく前向きで社交的であることが評価されているばかりに、
友達同士でも明るく元気を装って表面的な部分で付き合う人
が増えた」
って書いてあったけど、それができひんから、はみ出すんやろうな。
ってものすごく思った。
「人間は他者から見える部分と他者には絶対見えない部分が
あると考えている」
らしいんやけど、自分はここがあやふやだから、うまくやろうとして
失敗したり、必要以上に自分を作ったりしてるんやろうな。
過保護で育つと、あやふやになるんやって。
あと、
「オトナの自尊心とは、ありのままの自分を認め、さらに努力を
する。コドモの自尊心は他者との比較で自分の価値を確認する」
って書いてあったけど、自分はコドモの方だなと思った。
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大別すると1~2章では今の日本で「不幸」を感じる原因。3~4章ではそれを踏まえて「幸福」になる方法が書かれています。
最近感じていた「幸せ」を探す息苦しさの原因が少し判ったような気がします。
「非常に曖昧で、多様で、流動的なもの」である「幸福」を定義しようとしているから息苦しかったのかも知れません。
4章の「老い」と「死」との向き合い方を書いた章は作者自身も高齢なこともあり説得力がありました。
しかし、「です、ます」調の文章とそれ以外の文章の混ざり具合が読む呼吸を乱して少し読みにくかったです。
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現代日本人の生きづらさの原因を精神科医の視点から著した本。前半の現状分析や今までの振り返りは非常にわかりやすく説明されている。今の日本の不幸の原因は政治でもなく企業でもなく私たちひとりひとりがその時々で下してきた無関心や市民性の無さという点には納得。格差社会という言葉をよく聞くが果たして人はなにと比べて格差を感じているのだろうか。テレビの中で取り上げられる華やかな世界と比べての格差と、最低限必要な教育や保護も受けられない格差とが同列で扱われているのではないだろうか。セーフティネットの設置は急務だと思うが、それ以上の格差是正は必要ないように感じる。「足るを知る」ということができれば格差をと感じて憤る必要のない人はずいぶんいるだろう。