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紙の本
鷹 (講談社文芸文庫 スタンダード)
著者 石川 淳 (著)
「万人の幸福のために」もっと上等のたばこを作りたいと考えたために、主人公はたばこの専売公社を追われ運河のほとりの妖しい秘密たばこ工場で働くことになる。さらには未来がわかっ...
鷹 (講談社文芸文庫 スタンダード)
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商品説明
「万人の幸福のために」もっと上等のたばこを作りたいと考えたために、主人公はたばこの専売公社を追われ運河のほとりの妖しい秘密たばこ工場で働くことになる。さらには未来がわかってしまう明日語を学習させられ…。表題作『鷹』のほか『珊瑚』『鳴神』を収録。深遠なる幻想と独特のリズムの文体をもって痛烈に社会と世相を批判し、今日の抵抗を明日の夢へとつなぐ作品集。【「BOOK」データベースの商品解説】
もっと上等のたばこを作りたいと考えたために専売公社を追われ、妖しい秘密たばこ工場で働くことになった主人公。さらには未来がわかってしまう明日語を学習させられ…。表題作のほか「珊瑚」「鳴神」を収録。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
鷹 | 7−73 | |
---|---|---|
珊瑚 | 75−140 | |
鳴神 | 141−207 |
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紙の本
つまり革命は幻想なのか
2015/05/01 09:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうにも個性の見えない男が、奇妙な流れで革命だか闘争だか、大規模な暴力騒動に巻き込まれる。それは1950年代にはある種の人々には確かに存在した幻想だと思う。スターリン批判、ハンガリー動乱を経る間にイデオロギーは見切られ始めて、幻想はカルト的な色彩を帯びるようになったが、その繊細な瞬間にあった心象風景を見事に捉えている。
彼らの目的は、権力のための権力、暴力のための暴力という機構を破壊することだけにあって、なにも唯物論的世界を目指しているというわけではない。ただ変革を求めることが、おそらく作者の言うところの精神の運動というものを生み出していくらしい。
そこに参列する人々の、戸惑い、高揚、絶望などの感情も、今にして思えば儚い輝きだったことになる。蹴散らされる闘士達、焼け落ちた町並み、それらの幻想は素晴らしく甘美であり、しかしその甘美さも幻想であり続ける間のことだったのかもしれない。そんな思いに浸っていられた時間は短い。
未来を記述する言語、主人公を鞭打つ美少女、それらも幻想を現実化するための夢、夢に夢を重ねて幻想は完結する。革命に夢が必要だとしたら、幻想としてしか扱えない。
革命というものが熱気を孕んで信じられていた時代のこと、それを物語化することによって、時代に左右されない永遠のイメージを固着化させた。それはきっと革命なぞ信じていないからこそできたことで、その精神性にのみ着目していたということだろう。だからこそ、革命を生み出し、あるいは革命のもたらす精神が普遍的なものであることを描くことができた。
イデオロギー対立の終焉を予測していたわけではないだろうが、その後にも精神のエッセンスだけは伝える作品として残った。もし革命運動に巻き込まれてしまった場合の恰好の参考書、いやそれだけなんだろうか。