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丸本歌舞伎 (講談社文芸文庫)
丸本歌舞伎
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紙の本
人形劇から、生身の人の芝居への再生
2012/02/01 23:46
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:野々宮子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の人形劇の古典「浄瑠璃」のために書かれた脚本が、生身の人間が演じる「歌舞伎」にどのように採り入れられていったかを探求した一書である。人形になら、自由にどんな動きでもさせられる。拘束がないぶん、作者は自由に奇想天外な筋書きを繰り広げることができた。それを歌舞伎俳優たちが演じるとき、そこにどんな変化が生じたか。どんな創意工夫が必要だったか。新しくどんな魅力が増し加わったか。
この本が書かれたのは戦後間もない昭和24年だが、内容は少しも古びていない。古典をくりかえし上演しつづけるとき、古来の演技の型と新しい俳優の表現意欲とのあいだに起こるせめぎ合い。更新されることによって見えてくる本質もあれば、近代的な合理性や心理的な演技にこだわるあまり、原作が持っていた人物や場面のおおらかな魅力を殺してしまうこともある。
子どもの頃から繰り返し劇場に通いつづけた著者の歌舞伎への深い愛情と教養、俳優や劇中人物の本質を見とおす力が伝わってくる。とうの昔に鬼籍に入った俳優たちの舞台上の姿まで目の前に浮かぶような鑑賞もじっくり味わいたい。
古典劇のみならず演劇全般、映画に関心のある人にも、きっと得るところの多い一冊である。
もう一つ、このたび本編が収録された講談社文芸文庫というシリーズの魅力は、巻末の解説や年譜などの資料が充実していることだ。年譜の1963年(昭和38年)のくだりに、「一月、芸術座の帰り、泰明小学校前の店でウサギの土鈴を買う。以後、卯年生まれにちなんでウサギの玩具を蒐集する」とあり、著者を身近に感じさせてくれる。年譜も立派な読み物だ。