紙の本
電力については
2013/05/19 21:57
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投稿者:しんぴん - この投稿者のレビュー一覧を見る
大きな視点で考えることと、経済の仕組みで考える事が必要。
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電力は国家の存立に関わることがわかったので、職場の本屋の平積みから購入。
衝動買いだったが、意外といい本だった。
日本の電気会社が、最初は各社乱立の競争時代、低価格競争、戦時中の国家統制を経て、9社体制、それも当初はかなり相互に競争があったが、原子力発電を導入したことによって、各社もたれあい、行政もたれあいになった、という電力事業の歴史がよくわかった。
自分なりに、著者の主張を整理すると以下のとおり。
(1)これからは需要側の省エネ、供給側の分散型エネルギーシステムが重要。
これは全く同意。
(2)原子力はフェードアウトしていき、当面は火力でおぎないつつ、再生エネルギーの技術革新を進める。
これも全く同感。
(3)送電と発電の分離は慎重、とりあえずは一体化型の方がよい。
この点については、著者は、送電と発電の一体型の方が電力供給の安定性、送電網の設備投資が維持できることを理由とするが、送電会社を一本化し、国も出資した半官半民の会社にして採算ベースだけでない投資をする形にすれば可能ではないか。その方が著者の主張する電力自由化が徹底するのではないか。
(4)原子力発電の国営化が最終的には望ましい。
これはよくわからない。原子力発電所のリスク、今後、収束していくという将来像、、もともと国主導で薦めていた政策ということは理解できるが、原子力発電の当初には、国策会社でなく電力会社でやりたいと主張したことも事実。また、これまでさんざんもうけてきた財産がお荷物になったら、国の税金で管理したら、というのも、納得が得られるか。
これも、間をとって、国も出資するが、9電力会社が出資した半官半民の会社で公的規制のもとで、管理し、安楽死させていくのがいいのではないか。国の税金だけで処理するというのはちょっと国民感情が許さないと思う。
素人としての感想です。
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希望学とは希望を社会科学するを合言葉に希望と社会の相互関係を考察しようとする新しい学問である。経済、法律、政治学など従来の社会科学の多くの分野では個人が希望を保有していることを前提に、その希望を実現すべく行動することを前提に、その希望を実現すべく行動することを、社会行動分析の基本的な視座としてきた。
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筆者は各電力会社の社史を編纂している第一人者。だから業界の事情はよくよくご存知のかた。本のまえがきにもあとがきにも「この本は以前発刊した本を最近の事情を取り込んだ拡大延長版」と書いてあったので、それがわかっていればわざわざ買ってまで読まなかったかなと思える内容でした。原発推進か脱原発かという簡単なロジックの議論ではないということは大賛成。原発の「たたみ方」という章が一番面白かった。
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「原発断固反対」でもなく,「原発断固推進」でもなく,中立的に日本の電力問題を考察してみたい読者にお薦め。一読すれば,金子勝先生や大阪市長のtweetに対しても,少しは客観的に批評できるようになれるかな。
筆者・橘川武郎先生の主眼は,電力業の歴史的経緯を踏まえたうえで,「電力改革や原子力改革の方向性をポジティブな(積極的な)形で明らかにすること」(8頁)にある。そのために,①日本の電力業の産業体制,②電力の需給構造,③原子力に関する政策に対する各改革の方向性を問うている。とりわけ,長期的な原発政策については,使用済み核燃料の処理問題を根本的に解決するのは困難という立場から,第1章のタイトルにもあるように,「リアルでポジティブな原発のたたみ方」を提唱している。
一般的に,特定の産業や企業が直面する深刻な問題を根本的に解決しようとするときには,どんなに「立派な理念」や「正しい理論」を掲げても,その産業や企業の長期間にわたる変遷を濃密に観察しなければ,効果をあげることができない――と筆者は語る。福島第一原発事故を契機に,産業・企業が置かれた歴史的文脈と,適切な理念や理論とを結びつけて,問題解決を図る必要性が求められている。こうした応用経営史の手法が注目されるのは,経済史分野の実体経済への貢献にもつながるし,同業の後輩としても,研究のやりがいを強く感じる次第である。
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エネルギーを考察するためには、過去の経緯を深く考察することこそが重要であり、唯一の道なのだ。という持論を持つ筆者の題名通りの今後の電力(エネルギー構造)をどうするかというお話。
最近、福島第一原発の事故以来、我が国のエネルギー構造はどうあるべきかというのが書籍、ブログ等で溢れかえっている。
国民がエネルギーについて問題意識を持つのは非常に良いことであるが、往々にして議論のネタが怪しいことがある。
本書は電力の歴史を語らせたら日本でトップクラスの知識と実務経験を持っていると思う。
本書の6割は電力の歴史、戦前から戦後そして現代の電力会社の変遷とエネルギー構造をデータとともに示している。
データを出して、考察してを繰り返すので、やや冗長の感はあるが、本気で読んでみるとエネルギーの歴史について知らなかったことが山ほどあった。
さて、結論としての筆者の考えるエネルギー構造は、発送電は維持し、電力市場を自由化することが良しということである。
ちまたでは、発送電分離の議論がさかんにされているが、そのほとんどが論拠のない主張であるのに対して、筆者は発送電の垂直統合による系統安定性の方が、個別の企業を作るよりも総合的には良いと判断した。
ちなみに、、原子力については福島第一原発の事故があったから、今後はプラントの寿命が来たら廃炉にして、リプレースや新設は無いとの仮定で話をすすめている。
この点をもう少し、詳細に分析して欲しかった。(というよりも、将来のエネルギー構造を考える上で一番重要なことは、シナリオをどのように設定するかである)
今後の電力会社はどのようになっていくかというよりも、過去の電気事業がどのような変遷で今に至ったのかを知ることのできる貴重な一冊であると思う。
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自分自身、電力業界の歴史についてこれまでそれなりに調べてきたこともあって、導入部の「原発のたたみ方」おもしろさに比べると、それ以降の電力業界の歴史を熱かった部分は、冗長で退屈だった。後半の何度も重複して語られる部分を削る推敲ができれば、もう少しスピード感のあるしコンパクトな新書になったのではないかと思う。編集者の力量の問題か?
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歴史は重要だ。なぜ現状に至ったのか、それを踏まえてこそ、真の解決がある。もっと読まれるべき本ではないだろうか。
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まず私は、電力史についてまったく知識がない。しかし、わかりやすく説明があり、電力史を知ってる人によっては煩わしいと思うだろうが、何度も繰り返しの記述によりしっかりと頭に入った。やはり歴史的文脈がわかっている人の原発のたたみ方論は、一部の再生可能エネルギー狂とは違って、無理なく現実的であると感じた。しかしその変化でさえも、はたして日本は受け入れることができるかどうか、私たちは注視せねばならない。
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応用経営史の視点に基づき「リアルでポジティブな」電力改革について主張している。
具体的には、原発をゆるやかにたたむことを所与とした上で、産業体制、需給構造、原子力政策の三つの側面から現状(特に3.11以降)を歴史的文脈に位置づけ、具体的な改革案が提示されている。
産業体制に関しては電力小売の全面自由化、(既存の)電力会社間競争の本格化、発送配電一貫経営の維持、需給構造に関しては需要サイドからのアプローチ(スマートグリッドなど)、分散型電源、原子力依存度の低下、原子力政策に関しては原子力部門の(公への)切り離し、使用済燃料の再処理と直接処分の併用、電源開発促進税の地方移管(原発運営への地方の参加)が改革案として挙げられる。
応用経営史の手法に拠っているので本書の大部分は歴史の記述に占められる。
そのため、現状への危機意識から本書を手にとった場合やや面食らうが、記述自体は電力から見た近現代史という趣で興味深い。
また、歴史を問題解決に役立てようというアプローチはともすれば漠然としたものになってしまうが、本書は現実感を持ちつつ実現性を考慮しながら議論しており(少なくともしようとしており)好感が持てる。
問題はやや読みにくいところか。
特に、第三章で「ダイナミズム」等の一般ウケしそうだが内容がよくわからない言葉が多用されているのに辟易した。
また構成上仕方ないことであるが、章ごとに歴史が(視点を変えながら)繰り返し記述されている。
これによって記述の重複に加えて、ある章で説明なしに使われた用語が後の章で説明されるといったちぐさぐさがあった。
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「リアルでポジティブな原発のたたみ方」を主張されて、これまでのエネルギー政策史を丁寧に紐解いた本。危険性と必要性のバランスをどうとっていけばいいのかということを冷静に分析し、主張されている。
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使用済み核燃料の処理方法が確立する見込みがないという現実を見ると、原発のたたみ方を考えるのが前提であるべきである。
しかし再生可能エネルギーが原発の代替エネルギーになるにはまだまだ時間がかかるし、それでも足りないかもしれない。
現実的なのはシェールガスを含む天然ガスを中心とした火力で当面を凌ぐ、と言うことだろう。リアルでポジティブな「原発のたたみ方」を考えるための一冊。
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筆者は「日本電力産業発展のダイナミズム」などの著書がある電力・エネルギー産業の研究者。経済産業省「総合資源エネルギー調査会基本問題委員会」委員を務めていた。
筆者は基本的な認識として、ビジネスモデルの歴史的大転換が必要と訴えている。そのために「リアルでポジティブな原発のたたみ方」を提唱している。
電力改革を論じるにあたって、まず電力の大部分を供給している電力会社(ここでは行政用語でいう「一般電気事業者」、東京電力などの十の電力会社のみを指します)をどう変えるか、を検討しなければならない。本書はその議論のスタート地点を提供してくれる。
電力会社はどう変わっていくべきか。
「電力会社は経営の自律性を取り戻すべき」だと筆者は結論づけている。日本の電力供給は、戦時中の一時期を除いて一貫して国営ではなく民営だった。戦後は1)民営2)発送電一貫3)地域別九分割4)独占、の四つの特徴を持つ「九電力体制」(沖縄返還以降は沖縄電力が加わり「十電力体制」に)に基づいて運営されてきた。
九電力会社の国営化が考えにくい以上、民間企業としての経営の自律性を取り戻せば国全体のエネルギー・セキュリティにもつながる、という筆者の見解には全面的に賛同する。
石油危機以前には、九電力体制にも「黄金時代」があったという。電力会社は戦時中の国営復興を企む経済企画庁の特殊法人「電源開発」との競争や他の電力会社との低価格・安定供給競争を戦っていた。その日本の高度経済成長への貢献は計り知れない。
では、競争を拒む現在の九電力会社の姿はどこから来るのか。
筆者はその主因を国策民営方式の矛盾に求めている。
電力会社にとって原子力発電は、立地する地域住民・自治体との関係構築やバックエンドといった問題が付随することにより、国家と足並みを揃えることを余儀なくされる電源だ。
原子力発電をその手札に加えたことで、電力会社は国家と同調し官僚化することを余儀なくされた。
端的に言えば、今日の九電力会社への不信の要因は彼らが市場競争を拒み始めたことにあると言える。地域独占が確立されていたとはいえ、石油危機の頃までは九電力会社は政府がつくった特殊法人「電源開発」や他の電力会社と競争していた。
今はPPSとの競争を拒む官僚的組織に成り下がり、メディアと大衆から蛇蝎の如く忌み嫌われる要因を提供してしまっているのは周知の通りだ。
このような日本の九電力体制の現状を踏まえた上で、筆者は目指すべき改革の方向性を本書の中で示している。「歴史的大転換」を論ずるだけあって、あらゆる側面を網羅していて電力改革に関心を持つ人々が手にとって損はない本に仕上がっている。特に原発推進・反対の善悪二分論に辟易している人にとって、原子力発電が占める重みは原子力発電それ自体によって決まることはないという指摘は耳を傾けるに値するに違いない(p14)。
本書を読むことで以下の二点の重要さを改めて認識できた。
まずは改革の前に、現状を正確に把握することの重要さ。改革を求めると、今起きている変化にばかり目が行きがちになりだ。しかし、目に付きやすい変化の外で厳然と変わらない要素群を含めた全体像を把握することが、改革を成功させるのに重要なのは言うまでもない。
次に数十年先のことを議論する際に、必要以上に悲観せずに希望を持って難問に向き合うことの重要性さ。その希望の一例も、最終章でもれなく示されている。地域経済活性化にエネルギーが果たせる役割に関心がある方は、この章にぜひ目を通していただきたい。
(最後に筆者のインタビューが載った新聞記事を紹介します。筆者の見解を大まかに掴むのに役立つでしょう)
西日本新聞「九電 九州考:『普通の会社になって』」2012年7月4日
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/feature/article6/20120704/20120704_0002.shtml
了
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著者はまず、自らが主張する「リアルでポジティブな原発のたたみ方」を実現するために、日本の電力産業の歴史を検証する。かつての日本にはいくつもの電力会社が存在し、激しい競争を繰り広げていた。戦争、経済成長、オイルショックなどを経て、現在のようないびつな電力業界になっていく。
著者の「原子力発電事業を電力会社の経営から切り離す」という提案は、一考の価値のあるものだと思う。原子力事業のリスクが非常に高いことが福島の事故で明らかになったし、核兵器に応用することも可能な原子力は、やはり国やそれに準ずる組織が管理すべきものなのかもしれない。
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メモ:日本のエネルギー政策の歴史がわかりやすくまとめてあった。
原子力政策についても、発送電分離等の議論についてもメリットとデメリットを併記しており、理解がし易かった。
◯ 今後のエネルギー政策
何かと発送電分離をして、電力を自由化しようという議論がある。けれど、橘川武郎さんは発送電分離は行わず、現在の9電力(沖縄電力を含めると10)の1地域1社の区割りを撤廃することで自由化すればよいとしている。その理由としては分離することで特に利益の薄い送電部門のインセンティブを維持し、安定した供給を促すためとしている。
但し、自由化が必要ないという意味ではない。電力各社は原子力発電政策を推進する過程で国策民営になっており、民間としての活力が失われており、再興する為にも自由化は必要。
・原子力事業のみを国が引き取り、電力会社は競争していくのが良い。
・核廃棄物は全て再処理ではなく、現実を踏まえ、直接廃棄も選択肢に加えるべき。
・電源開発促進税などは、国が徴収して配分する方式を止め、原発立地地域に移管する。
◯ 日本の電力の歴史
第3章は大小幾つもの電力会社、電灯会社が羅列され、理解しづらかった。
火力メイン、水力メイン、火力メイン、火力メイン+原子力
という歴史を歩んできている。
当初電気は照明の為のエネルギーであって、動力等に変換する為の電力としての需要は少なかった。
その後、工場の機械が電力で動くようになり、第三次産業の出現、エアコンの出現でピーク時間は冬の夕刻から夏の昼へと映っていった。
水力発電の出現は高圧送電のとセットであり、電力の供給源と需要地が遠距離になることはここから始まった。コストが安く、常に一定の電力を発生する水力発電の出現は、昼間の電気の使用が広がった。
原子力は1973年のオイルショック以降に大きく伸び、86年のチェルノブイリや90年代後半に発生したもんじゅのナトリウム漏れ等のイメージダウンを起こすも、1997京都議定書などの目標が示される中、ゼロエミッションのエネルギーとして注目度が上がった。