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- カテゴリ:小学生
- 発売日:2012/03/31
- 出版社: 講談社
- サイズ:22cm/76p
- 利用対象:小学生
- ISBN:978-4-06-217363-6
紙の本
月の少年
湖のほとりの一軒家で彫刻家のおじいさんと暮らしている冬馬が、満月の夜に見たものは?沢木耕太郎が描く、少年の心、いのちの輝き。【「BOOK」データベースの商品解説】両親を亡...
月の少年
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商品説明
湖のほとりの一軒家で彫刻家のおじいさんと暮らしている冬馬が、満月の夜に見たものは?沢木耕太郎が描く、少年の心、いのちの輝き。【「BOOK」データベースの商品解説】
両親を亡くして、湖のほとりの一軒家で彫刻家のおじいさんと暮らしている冬馬。満月の夜、冬馬は白い着物の少年を乗せた小舟が湖に浮かんでいるのを見つける。少年の吹く横笛の音色を聞いた冬馬は…。【「TRC MARC」の商品解説】
沢木耕太郎が描く、少年の心、いのちの輝き。
湖のほとりで暮らすおじいさんの一軒家に、引っ越してきた少年が体験する、ふしぎな物語。
小さな湖のほとりに、木でできた家が一軒ぽつんとたっています。冬馬は、その家で、彫刻家のおじいさんとふたりで暮らしています。おとうさんとおかあさんが死んでしまい、おじいさんに引き取られてきたのです。おじいさんはその家を「みずの家」と呼んでいました。 ――本文より
著者初の児童向け書籍です。絵本「わるいことがしたい!」との同時刊行で、今後継続的に刊行していく沢木耕太郎氏児童書シリーズの第1弾。気鋭のイラストレーター浅野隆広氏が全見開きに描いたイラストレーションが、読者をファンタジーの世界に誘います。【商品解説】
著者紹介
沢木 耕太郎
- 略歴
- 〈沢木耕太郎〉1947年東京都生まれ。横浜国立大学卒業。2003年にこれまでの作家活動に対して菊池寛賞を受賞。著書に「テロルの決算」「深夜特急」、絵本に「わるいことがしたい!」など。
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紙の本
この道、あの道
2012/05/01 09:42
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔、こんな話を聞いたことがある。一匹の猿が壺の中にご馳走を見つけて、手をつっこんだところ、ご馳走は掴んだものの壺から手がでない。どうもご馳走が壺の口につっかえて出ないようだ。君なら、どうする? みたいな話だったように思う。
所詮猿には智恵がない。掴んでいるものを離せば、手は抜けるに決まっている。
しかし、この話は猿のことを馬鹿にすることであったのだろうか。
私たちも、そういう二者択一を迫られることはよくある。そして、そのたびに、何か大切な物を離してしまってきたような気がする。
ノンフィクション作家沢木耕太郎が初めて書いた児童向き物語でも、主人公の少年は二者択一の中で大切な物を手離してしまう。
それは猿以上の智恵があったからではない。
智恵を、未来を得るために、少年はそっと手を離したのだ。
両親を海の事故で亡くした冬馬(とうま)という少年は、小さな湖のほとりに住む彫刻家のおじいさんの家に引き取られる。けれど、冬馬の心の傷は癒えず、新しい学校に行くことができなくなってしまう。
ふさぎこんでしまう冬馬は、ある満月の夜、湖に浮かぶ一艘の小舟を見つけた。その舟には不思議な服装を着た少年が乗っていて、月にむかってとてもきれいな音色の笛を吹いていたのだ。
次の満月の夜、少年は冬馬に月に帰った母の元に行くために笛を吹いていることを話して、その協力を冬馬に願った。少年と同じ音色の笛を吹けば、少年は月に戻ることができるのだという。
また次の満月の夜、ついに笛の音を合わせることができた二人は、小舟ごと月に吸い寄せられていくように天上にのぼっていくのだ。
この時、冬馬はこの世界の悲しみをすべて捨てて月にのぼっていくことができたはずだ。一方で、黙っていなくなればおじいさんが悲しむにちがいない。
冬馬は選択を迫られるのだ。
生きていくことは何度でも行く道を問われることでもある。
選べるのはたった一つの道。
沢木耕太郎は冬馬にこの地上に残るという道を選ばせる。それが正しいかどうかはわからない。冬馬がこの話を誰かにしても信じてもらえないだろう。
それでも、沢木が冬馬をこの世界に残したのは、生きていくというのは、より困難な道を選ぶことだということを書きたかったのではないだろうか。
沢木耕太郎こそ、そのように生きてきたのだから。