紙の本
被災地の復興も大事だが、被災者の“心の復興”に目を向けた著者のメッセージが心に沁みる
2011/11/22 14:20
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投稿者:めだかの兄弟 - この投稿者のレビュー一覧を見る
3月11日、<東日本大震災>の一報を知ったのは、主人からのメールであった。東京で仕事を終えて、仮眠中のはずの主人から、「目が覚めた。すごい揺れたばい」というメールが届いたのだ。地震の怖さは阪神大震災で、知っていたつもりだが、津波の被害があれほどとは・・・。本書は、この震災で、著者自身の障害を眼前につきつけられながらも、自分が出来ることは何か、自分なりの答えを見つける。そして、被災地で、見てきたこと、感じたことを、ありのままに綴った一冊である。
第1章 僕に何ができるのか
第2章 そして、被災地に向かった
第3章 いま、思うこと
【第1章】に、著者が心に突き刺さったという言葉がある。私にとっても、印象深く、考えさせられた言葉とは、福島県内で津波の被害に遭ったお兄さんと、電話で話したという弟さんが書いた日記のなかの、お兄さんの言葉である。「俺たちを幸せになんてふざけたこと思わないで、俺たちの分、そっちもみんな不幸になってくれたらなー」。著者は、「自分たちが救われるために、他人の不幸を願わざるをえないという心境とは、いったいどういうものなのだろう。いくら想像力を働かせてみても、そこには限界があった」と思い悩む。どんなに想像しても、自分自身が被災しない限り、被災者の本当の気持ちはわからないだろう。だが、著者は「手足のない僕の気持ちは、きっとだれにもわからない。でも、家族は、友人は、いつだって「あいつなら、こう思うんじゃないか」と考えてくれた。それは、とても幸せなことだと感謝している。それが、たとえ的外れであったとしても。だから、僕も立場の異なる相手に対し、少しでも心を寄せ添える人でありたいと思う」と・・・。被災者の本当の気持ちはわからなくても、「大事に思うから、分かり合いたい」という気持ちは大切にしたい、と思えた。
【第2章】では、著者は、炊き出しや瓦礫の撤去など、物理的なボランティアができないので、小学校教諭を務めた経験を生かし、震災によって、心のダメージを受けた子どもたちのために特別授業(石巻市立渡波小学校)を行う。手足がなくても、諦めずに猛練習すれば、バスケットボール、野球、サッカーなどのスポーツができることを、子どもたちの前で実践する。あきらめないこと、つらいこと、苦しいことがあっても、「あきらめずに必死に努力」すれば、どんな困難なことがあっても、きっと乗り越えられない問題はない。
被災地の復興も大事だが、被災者の“心の復興”に目を向けた著者のメッセージが心に沁みる。《みんなちがって、みんないい》を心に留めて、希望を胸に、生き抜いて欲しいと願う。
紙の本
思いだしたくない,忘れちゃいけないことの本
2016/01/31 11:48
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投稿者:まさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2011年当時に味わった思いを追体験しつつ,それ以上の現実を教えてもらえた.無力感と向き合ったことも,そこからいろいろ始めたことも,最近は忘れてたかもしれないなあ.
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被災地のために何かしたい、そんな漠然とした思いを
抱え、その中で何ができるか、乙武さんが向き合っている過程を描いている。
無理に背伸びするわけでなく、自分ができる範囲でいいから一つ一つ、頼るところは頼りながら行動していく。
こういう風に行動したい。
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あまりにも大きな自然の脅威の前に、震災後多くの人が感じた、"無力感"。
明るい人柄と前向きな発言の乙武さんが、車イスで被災地に出向いて感じたことを、率直に発信。
「西日本から日本を元気に!」西日本に住んでいる人など、なかなか直接的なボランティアに参加出来ない境遇の人でも、心でくすぶる被災地への想いを発熱させてくれる一冊。
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この著者の本はいつも感情を揺さぶろうというストレートな表現で、何冊か著書も読んでいて、結構好きなのだけど、本書はどうも、入り込めませんでした。いつもの話は、ノンフィクションであっても、僕から見ればフィクションですが、今回は、僕にとってもノンフィクションだから、という違いがあるからかもしれません。本来であれば、それはもっと入り込める要素になるはずなのですが。逆にいつもはフィクションとして読んでいたんだなあと気がついた。
嫌な人は読まなくていいよ、と著者に言われそう。でも、第一章のあたりの心理は、僕も共感するところ大です。それにやっぱり、この前向きさと行動力は素晴らしいと思う。
イイのかイヤなのか、よくわかりません。
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復興支援といってもさまざまな方法がある。自分ができることを、自分しかできないことで支援する。乙武氏が被災地を訪れ、被災地の人々に希望を与えた。
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自分も同じ思いを重ねてきたので,すごく共感というか響くものがあった。
今は自分の生活基盤をしっかり立て直した上で,
同じ被災地に住むものとして何が出来るか考えていきたい。
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3年間の小学校勤務の経験を活かし、
被災地でおこなった特別授業、
そして始球式・・・
心に残ったところがたくさんありました。
乙武さんだからこそ感じられたこと、
たくさんあると思います。
この本を読んでよかった、と心から思います。
こういった本を読むことで、いろいろな感じ方、いろいろな人のこと、そして今回の震災にあった人たちのいろいろな生活や思いがかなりずっしりと感じられると思います。
おすすめです。
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とても素直な感覚を持った乙武氏です。
本を読み始めていいなと思った文章。
手足のない僕の気持ちは、きっと誰にもわからない。でも、家族は、友人は、いつだって「あいつなら、こう思うんじゃないか」と考えてくれた。それは、とても幸せなことだと感謝している。それが、たとえ的外れであったとしても。
だから、僕も立場の異なる相手に対し、少しでも心を寄り添える人でありたいと思う。中略
「花*花」のこじまいづみ さんが、すぐにメッセージをくださった。
『相手のことを大事だと思うなら、「分かってたまるか」と言われても、「分かんない。でも大事!」と言い返す気持ちでいたいね。「分かるから大事」なんじゃなくて、「大事だから分かり合いたい」んだもんね』
大事に思うから、わかりたい。うん、そうなんだ。それって、すごく大切なことだと思うんだ。
この文章が、この本を読み進める原動力になったと思う。
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自分に出来ることがなんなのか。震災直後に読むのとまた違う感覚で読めた。それぞれが、いろんな場所で感じて来た不安、焦り、苛立ち、無力感…それを思い返しながら、どんなことができるか、また考えたいなと思った。良くも悪くも乙武さんらしい。
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まさしく自分が考えていたことを表現してくれた!と感じた本。
私も被災地に行って、被災者の気持ちになるべく近づきたいと思っても、やはり大きな壁があって、わかりあえないと思った。「持つ者」「持たざる者」という境界線は、いかんともしがたいからだ。だからといって、「やっぱりわかり合えないんだ」とあきらめてしまうのも違うと思った。その答えを探していたら、この本が答えをくれた。
「・・・その人の気持ちには、もちろんなれない。でも、想像することならできる。相手の立場になって、心を寄り添わせ、うれしいだろうなと思う言葉をかけたり、行動をしたり、ただ何も言わず見守っていたり。
もちろん、その想像が間違っていて、相手を傷つけたり、怒らせたりしてしまうことだってあるだろう。でも、そうなることをおそれ、何も働きかけないことが、はたして善なのか。(中略) 僕も立場の異なる相手に対し、少しでも心を寄り添える人でありたい」
もう1つ。
ボランティアのあり方、支援のあり方について。
支援をする人は、なんでもかんでも被災者のためにしてあげることが良いことだと思っている人が多いと思う。だが実際には相手によって、どこまで支援すべきなのか、今の段階であればここまでしてもよいが、それ以上はしてはいけない、自分でするように促すなどの配慮をしていかないと、自立できないようになってしまうのではないかと、被災地に行って強く思った。
そのときによく思い出した言葉が、この本にある乙武さんの文章。
「けれど、僕は知っている。一方的に浴びつづける善意は、やがてボディーブローのように効いてくることを。相手に「してもらう」ことは本当にありがたいことだが、その関係性があまりにも一方的だと、いつしか自分を卑下するようになる。それは、物理的に「してもらう」ことの多かった僕が、小さな頃から闘ってきた葛藤でもある」
乙武さんの言葉は、等身大の言葉ばかりで、上から「こうあるべき」と無理に説得してこない。地に足が付いた言葉なので、とても納得させられた。
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2012年50冊目。
最後のページに書かれた“乙武洋匡らしい支援”という言葉が全てだと思う。
「自分にできないこと」と「自分にできること」をしっかり見据えて、後者を実行する。
「自分らしさ」「自分ならでは」と、求められていることがリンクする場面を探す。
そんなシンプルな姿勢に感銘を受ける。
「何をしたらいいか分からない」という言葉の裏には、
現場のニーズを知らないことと、もう一つに、自分を知らないこと、があるのだと思う。
自分の素敵なところ、自分ならではのところ、をしっかり認めてあげることは、
実は貢献に繋がるんだと思う。
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何故いまこの本?と思われるかもしれないけど、あの大震災のショックがだんだん薄れてきていると感じて手に取った一冊です
遅々として進まない復興や頑張る気持ちが緩みがちな自分への戒めとして読みました
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乙武さんの東日本大震災に際しての自叙伝。震災当日のこと、その後被災地を巡って見聞きしたこと、感じたことを日記調に綴った1冊。
自身の「無力感」、世の中に広がる「自粛」ムード。心に引っ掛かっていた当時のもやもやを、この本で明瞭にしてもらった。カウンセリングを受けた気分。
震災からもうすぐ丸2年。記憶はどうしても薄れていくものなので、記録であるこの本を手に取り、今後も震災について身近に考えていきたい。
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被災地のことを思ってイベントを中止することは、自粛じゃなくて、委縮ですよね いままで、がむしゃらに働き、そこで生まれた絆。その絆に自分は、助けられました 「また会いましょう」 彼女にとって、そして避難所に暮らす人々にとって、少しでも未来を感じられる言葉にしたかったから 五体不満足の著者が被災地を訪問し、体験したことを描いたもの 傷ついた人々の心を癒し、希望を与える姿は美しい