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商品説明
斬殺された妻の死の真相を暴くため、江戸に出てきた弓削玄之助。瓦版屋に身を寄せ、剣を筆に持ちかえて、悪いやつらをぶった斬る!次々起こる難事件、国元から送り込まれる謎の刺客たち。命がけの戦いの果てに、玄之助が知る真実とは—。【「BOOK」データベースの商品解説】
斬殺された妻の死の真相を暴くため、江戸に出てきた弓削玄之助。瓦版屋に身を寄せ、剣を筆に持ちかえて、悪いやつらをぶった斬る! 『大分合同新聞』等に連載された作品を加筆修正して書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
収録作品一覧
鍔落し | 7−52 | |
---|---|---|
女郎の初恋 | 53−98 | |
命は七日まで | 99−145 |
著者紹介
池永 陽
- 略歴
- 〈池永陽〉1950年愛知県生まれ。98年「走るジイサン」で小説すばる新人賞、2006年「雲を斬る」で中山義秀文学賞を受賞。ほかの著書に「指を切る女」など。
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紙の本
決まりきったことを書きながら、楽しませ感動させる、マンネリズムこそ時代小説の本質です。それを見事に受け継いで、私を喜ばせているのが池永陽。藤沢周平を思わせるしっかりした剣客ものです。
2011/08/20 21:44
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
まずカバー画、下手です。主人公はともかく、お峰がこの顔ではイメージが崩れてしまいます。池永ファンは、遠藤拓人の装画を無視して小説を読んで欲しいと思います。それと書、正直言って私には書の良し悪しがわかりません。でも、大蔵玉鴦の手になるカバーの文字、私は好きではありません。タイトル、著者名の活字体と合っていないだけではなく、私には下手としか思えず、カバー全体がゴタゴタしている。装幀の芦澤泰偉は出来に満足しているんでしょうか?
ちなみに、カバー上に書かれた文章は、まずカバー表
*
いい加減にせいよ
下手人ハ生国を捨て
遁走せしといえども
大江戸八百八町のうちに
隠れ住むよし
*
次がカバー折り返し
*
大悪人の名ハ、飯野多十郎
歳三十にして目立つしるしハ、左眉横なる大黒子なり
心あたりの者ハ、件の美女ニ注進されたし
美女の名ハ、坂崎静乃、齢十八の花も恥らう容子のよさ
*
カバー後ろ
*
胸ニ大きな悩みを抱え
浅草奥山の賭勝負となりたる
その顛末はいわずとしれし父の仇討ち
今を去ること三年前
美女の父斬り殺されたる手口ハ卑怯千万
*
と、三ヶ所に現われます。言っちゃあナンデスガ、これって、結構レアです。ついでに出版社のHPの言葉も写してしまえば
*
怨みモ嫉妬モ裏切りモ 筆ト秘剣ガ斬り明し候
突然斬殺された妻。謎を解く宿願を胸に秘め瓦版屋の原稿書きで用心棒、弓削玄之助が斬って斬って、書きまくる!
江戸人情剣劇に新ヒーロー誕生!!
お江戸の瓦版屋=事件記者で、秘剣を遣う凄腕剣客。池永陽は時代小説にまったく新しいヒーローを誕生させた!――縄田一男(文芸評論家)
斬殺された妻の死の真相を暴くため、江戸に出てきた弓削玄之助。瓦版屋に身を寄せ、剣を筆に持ちかえて、悪いやつらをぶった斬る! 次々起こる難事件、国元から送り込まれる謎の刺客たち。命がけの戦いの果てに、玄之助が知る真実とは――
*
となります。時代小説に〈ヒーロー〉っていう言葉が似合わない、って思うのは私だけでしょうか。主人公は弓削玄之助、掛川藩の武士ですが、結ばれて間もない妻・志保を亡くし、今は江戸で瓦版屋の原稿書きと用心棒をして暮らしています。刀は同田貫正国。鍔落しという技を使います。年齢ははっきりしませんが29歳でしょうか。
玄之助に仕事を出すのが、三味線堀にある読売瓦版・松屋の主人、平蔵です。平蔵にはお峰という17歳になる娘がいます。玄之助の妻、志保を襲った悲劇のことを知らないこの明るい美少女は、玄之助に寄せる思いを隠そうとはしません。よくあるパターンではありますが、熟年のドロドロした話と、大学教授と生徒のヘラヘラしたお遊びにくらべ、江戸時代の若者の恋心は爽やかの一言です。それはともかく、早速目次に従って、各話について紹介していきましょう。
第一話 鍔落し:浅草の奥山の参道で、三十文で闘い勝てば一両という賭け勝負をして負けないという坂崎静乃18歳は、父親の敵で30歳になる飯野多十郎がそれを見て、自分の前に姿を現すのではと思い、弓削玄之助が自分のことを記事にするのを喜ぶが・・・
第二話 女郎の初恋:46歳になるおつたは、18歳の時、二つ歳上の喜久蔵と一緒になろうと誓いあっていたものの、父親の借金のために門前仲町に女郎として売られてしまう。それから28年、谷中感応寺の富籤で三番札、百両を当てたおつたは、年季があけたら迎えにくるという男の言葉を信じて・・・
第三話 命は七日まで:与一は、将来、武士になるためと、父親の金貸し藤兵衛から言葉遣いと姿勢を厳しくしつけられる。そんな或る日、家に舞い込んだ脅迫状のことで、与一は、来年岡場所に売られるという13歳の少女おちよを伴って、父親のあこぎな商売のことを書いてほしいという・・・
第四話 冷たい炬燵:鳥越明神脇で夜鳴蕎麦をやっている30半ばのおたかと、その8歳になる娘のおさよ。男なら誰でも心を動かされる健気な二人をとりあげた記事は、客だけではなく危ない男たちを店に招くことに。人を刺し八丈送りになった元夫の政吉。そして寺林弥九郎という新たな刺客・・・
第五話 河童のいいぶん:呉服屋の井筒屋で働く19歳の女おりんは、なかなかの美人だが、ちょっと変わった、とっつきにくい清水生まれの女。彼女には双親を亡くし、親戚の間を盥回しにされ、男たちにもてあそばれた過去が。与三郎と、井筒屋、伊勢屋の主人が見た河童の謎と新たな刺客・・・。
第六話 浮世絵異人:15年ほど前に突然、江戸の浮世絵の世界に現れ、10枚ほどの肉筆画を世に出して消えた謎の絵師の作品が売りに出た。三百両でも売れたという画の真贋と、あこぎな商売を記事にするといっても動じない版元・辻屋庄兵衛。金と腕ずくで弓削たちと闘うと宣言する庄兵衛は・・・。
第七話 遺言:跡継ぎがなくなったから娘を返せといってきた旗本の無体な申し出は、妻を凌辱し、子供まで作ってしまった旗本の旧悪を記事にしてほしいという頼みに。一年前、家に帰ると三人の男たちのよって殺された玄之介の妻・志保が残した言葉の謎と、討手彦四郎との対決・・・。
各話とも、瓦版の記事があって、男と女に絡む謎がある。そして玄之介に迫る討手が登場する。さらに、全編を通じて、玄之介の妻・志保が残した言葉の謎があって、最期に決闘がある。それにお峰の若々しい恋心と、亡き妻を思いながら、お峰の気持ちをすこしづつ受け容れていく玄之介の心があり、娘の思いに戸惑う親心が絡む。
『剣客瓦版つれづれ日誌』というタイトルは池波正太郎風ですが、内容は藤沢周平の『用心棒日月抄』『よろずや平四郎活人剣』に近いかもしれません。池永陽、既に、時代小説『雲を斬る』で第12回中山義秀文学賞受賞している作家にいうのも失礼かもしれませんが、時代小説にまた素晴らしい書き手が現われたことを喜んでおきたいと思います。