ドリーマーズ

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「志賀ちゃんの愚痴を聞いている間、わたしは頼りない声で泣いているまだ見たことのないその女の子について考えていた。でも、まだ彼女には名前がないから、志賀ちゃんの子どもという存在であるし、ちゃんと一人の人間なんだけれど、はっきりと誰かのことを考えているのとは違う感触がした。」−『ハイポジション』

柴崎友香の小説を読んでいると、主人公がどんな人物であっても作家その人の思いを聞いているのだなあ、といつも思う。もちろん、それと似たような感覚はどの作家の作品であっても多少なりとはあるのだけれど、柴崎友香の小説ではその思いが特に強いのだ。それだけではなくて、だんだん会話をしているような錯覚さえ生まれてくる。もちろん、こちらの言葉は本の向こう側には届いていないのではあるけれど、何かが返ってくる感じになるのである。

それは「きょうのできごと」のメーキングを観て柴崎友香のどこか不安げな顔を見た時から始まったことと思う。そのメーキングに出てくるできごとについて柴崎友香が後に書いた文章を読んで以来、常に起こるようになった条件反射のようなものだ。メーキング影像に映る柴崎友香はいかにも居心地悪そうにしていたのだが、それを後に文字として、視る視られるの関係が逆転した立場からの言葉として読んだ時、そこに不安な自分を一人称で語りながらも自分を取り巻く外界と一緒にそこに存在したであろう世界が寸分違わず再構築されているのを見出して、この人の視線は信用できる、と思ってしまったのである。

柴崎友香はほとんどいつも一人称で小説を書く。だからこそ最初に言ったような錯覚も起き易いのだけれど、その視線は内向きに見えながら、すばやく様々なものに向けられ、かつ、その全体像を自然と立ち上げることができていると思う。そんなことが可能なのは、少し特別な身体感覚と意識の働きの組み合わせによることなのだと思う。彼女の小説の中の主人公は、ほとんど何気ない感情しか吐露しないし、もっぱら目に映るもののことばかり、いつまでも言葉に置き換えている。でも世界が立ち上がるのである。

そしてこれは誰もが指摘していることではあるけれど、柴崎友香の小説には出来事らしいことはほとんど起こらない。起こらないのに、前後を欠いた一つの風景が切り取られているだけなのに、この短い小説の中から「ほんとうのこと」が立ち上がる。決してこれは作りだされた物語ではなく、誰かの人生の大切な一瞬が映し出されているのだという感覚が胸に迫ってくるのだ。

切り取られた風景の中には、そこに至る様々に絡み合っていた誰かの時間の流れがあり、この後には、ひとときここに集まっていた時間の流れがまたそれぞれに動き出してゆく先があることが、確かに伝わってくる。そこには何のあざとさもない。

何も物語が起こる訳ではないのに、柴崎友香の小説を読んでいると猛烈に頭の中で色々な思いが駆け巡り始める。それは、ふと気付いてしまうメタファーに起因するようなことではなく、ましてや何かメッセージ性の強い思いによるものでもない。ただただ世界には色々な時間と色彩が満ちている、という実感の伝播なのである。

長編の柴崎友香も好���だけれども、こういう写真集のような短篇集において柴崎友香は彼女の視線の確かさを、そして捉えた世界を写し取る身体能力の高さを、驚く程に見せてくれると思うのである。

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夢と現実の境目がわからなくなること、よくある。
これは誰もが感じたことのあるであろうそのときの違和感を、著者独特の文体で巧みに描いています。
現実っぽすぎる現実の中で、ぽつりとつぶやく誰かの言葉が、よくよく考えると不気味で怖くて、背筋が一瞬ひやっとなる。

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こないだ初めてしゃべった女の子に仕事は？って聞いたら「夢見続けてる」て言うてたけど、うーん、そういうことなんかなあ。

ま、たぶん全然関係無いわ。

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ちゃんと読んだのは初めてです柴崎さん。
関西弁なので、親しみが沸きました。
何気ない日常の中に、ちょっぴり怖さもあり。

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電車の中の描写がとてもよかった。うつらうつらしながらみる夢と覚醒した状態の境目が何とも。表紙もすごく好きです。

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ふしぎな印象の短篇集。おばけっぽいものが出てきたり、夢の話がたくさん出てきたりする。
装丁・デザインが、夢と現実のあわいをたゆたうような話にぴったり合っていてとてもかわいい。

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これといって特別なことは起きない。事件もない。
日常を切りとったような短編集。
でもその、日常の切りとり方がとっても丁寧で、視点も面白い。だからただの日常も、特別なものに思えてくる、そんな話が詰まってました。
それぞれの人にそれぞれの日常があるんだよなぁ、と電車のなかでこの小説を読みながら思いました。隣のサラリーマンにも、女子高生にも、あの人にもこの人にも。

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いっきに読み切るか、気が向いたときに読むのがいい。でないとちょっとツライ。
短編をいくつも読みたいタイプじゃないんだよね。
どれも同じに思えてきてしまうから；

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内容（「BOOK」データベースより）
目の前にある世界が、夢のように思える瞬間がある。いくつもの風景からあふれ出す、大切な誰かへのたしかな想い。現実と夢のあわいを流れる時間を絶妙に描く表題作ほか、ゆるやかな日常からふと外れた瞬間をヴィヴィッドに映し出す、読むたびに味わい深まる連作短篇集。

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目の前にある世界が、夢のように思える瞬間がある。いくつもの風景からあふれ出す、大切な誰かへのたしかな想い。現実と夢のあわいを流れる時間を絶妙に描く表題作ほか、ゆるやかな日常からふと外れた瞬間をヴィヴィッドに映し出す、読むたびに味わい深まる連作短篇集。
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表題作のほか、「ハイポジション」　「クラップ・ユア・ハンズ！」　「夢見がち」　「束の間」　「寝ても覚めても」

関西から東京に出てきて働いている女の子の何気ない暮らしぶりが描かれていてとてもリアルに感じられる。舞台は大阪・京都だったり新宿だったりする。強い主張があるわけでもなく、かといって雰囲気だけに流されているわけでもない、著者の作品に流れる時間のゆるやかな動きが、関西弁の可愛らしさも手伝ってとても心地好い。読者の方が夢の世界にたゆたっていきそうな一冊である。

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短編集で文字も大きめで読みやすかった。
読んでいて　なんとも不思議な感じだった。
日常になんとなくそんな夢の中である　ぽわぁーっとした感じ
確かにあるあるな感じだが、あまり内容がどうであるといった
ものではなかった。
どれも終わりが　だからなんなんだ？って感じ
わからなくもないがあまりおもしろくなかった。

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ライブの前に友達と集まり中学の同級生が出た夢や
町内放送の誤報が全国ニュースに出た話をする「ハイポジション」
チアサークルの集まりで新しく引っ越した家に
見ず知らずのおばさんの気配がすると相談する「クラップ・ユア・ハンズ！」
焼肉屋に行く途中の電車で車に轢かれた後
死後の世界に迷い込んだような経験を語る「夢見がち」
東京の年末がおもしろいと聞いて人のいない新宿をぶらぶらしながら
ミレニアムの新年を思い出す「束の間」
高所恐怖症の人と絶景の高層カフェに行った後
妊娠中の友達を囲んでディナーを食べる「寝ても覚めても」
妹夫婦の家に遊びに行きうたた寝をすると
去年死んだ父が現れる「ドリーマーズ」
装画：Murgraph　装丁：名久井直子

本当になんでもない生活の会話を収めた短編集。
掲載紙もばらばらだし共通したテーマもないと思う。
起承転結がないから説明しづらいのだけれど
大阪弁の会話のゆるさやテンポのよさを味わう話です。
大晦日の新宿って行ったことないけれどこんなに閑散としているのか。

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ドリーマズ含む短編。それぞれのタイトルにひっかけて内容が書かれており、枠に縛られた感じがしましたねぇ。

ええと。４０分ほどで読了。もっと読み込めば違った感想が書けたかな、と。

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「クラップ・ユア・ハンズ！」と「束の間」がよかった。うん、うんって相槌を打つように読んだ。柴崎さんはいつもそんなふうに読む。

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６つの短編集。
現実と夢との間をフワフワと流れていくお話達です。
でも、あぁ〜この感覚分るわぁ！！と、なんだか共感できちゃう。
たまにないですか？
あれ？これ現実やっけ？と思う瞬間。
そんなお話の本です。
ネタバレなしって難しい。。