紙の本
魂を奪われる音楽のはじまり
2015/09/17 11:07
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投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
嵐の日の学校の図書室にいた二十一世紀の少年は、突如現れた悪魔メフィストフェレスにより「ユキ」以外の名前を奪われ、十九世紀の欧州に連れて来られた。ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの新たな身体としてだ。
ゲーテの仕事仲間であるヨハン・クリストフ・フリードリヒ・フォン・シラーも、数多くのファンたちも、ゲーテが急に若返ったことをさほど不思議には思わずに受け入れてしまう。そして、この世界自体、二十一世紀の歴史の知識から見ると技術的に進み過ぎているのだ。
ゲーテがメフィストフェレスとした契約は、彼が感動に打ち震え満足する瞬間が来たら魂を明け渡すというもの。ゲーテの知識はあれど意識はユキのままという状態に置かれてしまったユキとしては、ひたすら感動しない様に、感動しそうなものには触れない用心をせざるを得ない。
それにも拘らず、ユキは彼が大好きな音楽家に出会ってしまった。何故か少女の姿をしたその音楽家の名前は、ルドヴィカ・ファン・ベートーヴェンという。ユキの両親を出会わせた「英雄変奏曲」の作曲者である。
彼女の演奏を最後まで聞いてしまえば絶対に感動してしまう確信があるユキは、ひたすら彼女と接触しない様にしようとする。しかし、ハプスブルク家のフランツ二世の依頼で、皇女マリー・ルイーゼとその叔父ルドルフ・ヨハネス・ヨーゼフ・ライナーの家庭教師をすることになった縁で、再び宮廷で、ルドヴィカと遭遇することになってしまった。
彼女の曲を聞こうとしないユキに対し、ルドヴィカはやたらと絡んでくる。それに、彼女の側にいれば、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンやアントニオ・サリエリ、そしてなぜか死んだはずの、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトやマリー・アントワネットにまで遭遇してしまうのだ。
歴史を知っているからこそよりはっきりとわかる、ルドヴィカの偉大さ。しかし時代は、彼女に自由な音楽を許さなかった。彼女が「ボナパルト」と題された、葬送行進曲を含む交響曲を発表しようとしていることを知った悪魔に連なるナポレオン・ボナパルトは、ニコロ・パガニーニを遣わし、オーストリア政府に圧力をかけて来る。そして、悪魔の匂いを嗅ぎつけた教皇庁検邪聖省の手も、ルドヴィカやユキに迫って来るのだった。
ネタバレというほどのこともないだろうが、ゲーテ「ファウスト」を底本に、音楽と日本の高校生を絡めた、作者らしいラブコメ風ファンタジーとなっている。
ユキの奪われた名字は、きっと「桧川」というんじゃなかろうか。あの二人の子供なんだろうな。
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ベートーベンの演奏を生で聴き、名曲が生まれる瞬間に立ち会う事ができたなら、、、
音楽好きであれば一度は夢想しそうな事を実現するのが本作です。
舞台は1800年代初頭のオーストリア。
音楽史だけでなく、世界史的にも激動するヨーロッパで、わかる人には胸が熱くなる時代だし、クラシック好きだったら、思わずニンマリするな小ネタがあちこちあって、クラシックを知らない人でも楽しめるけど、知っていたほうが遥かに楽しい作品です。
ただ、個人的に残念だったのは、時代設定を独自設定にした点(本来まだ無い技術が登場する)と、あの人が生きてたり、あの人が拳法使ったり、あの人の楽器が武器になったりした所はちょっとやり過ぎなように思いますし、主人公が自分の秘密をオープンにし過ぎるのもいかがなものかと思う。
それにしても、一番驚いたのは、主人公が「さよならピアノソナタ」のナオと真冬の子供だったことかもしれない。
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このメフィストフェレスの性格大好きだ。最近、電撃ではあまり好みの作品が始まらないなーと寂しかったけど、久々に私的ヒット。
面白かった。次が楽しみ。
まあ、ツンデレっていいよね。ただ、アリスとイメージがかぶるので、脳内再生はあの声になってしまった。
個人的には、「はい、どーん!」が一番笑った。
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お話は文句ナシに面白かったし、クラシックなんて真面目に聴く機会なんてなかったので、そういうモチベーションを与えてくれる作品に出会えるのはとても嬉しい。実際、読みながらyoutube検索してたしw
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日本の男子高校生が、悪魔メフィストフェレスによって、19世紀初頭にタイムスリップ。しかも、なぜかゲーテとし転生してしまいます。
歴史は若干改変されていて、もっと後に登場するはずの発明品が既に流通していたり、ベートーヴェンが美少女だったり、ハイドンが世紀末覇者みたいだったり。
歴史上の人物と交流しているうちに、政治も絡んだ事件に巻き込まれていきます。
ラノベならではのキャラ萌え要素や会話もありつつ、当時の文化史をガッツリ取り入れていて、クラシック音楽好きを裏切らない面白さでした。
ナポレオン、シラー、ベートーヴェンとくれば…そう、あの曲とあの曲ですよね!
でもって、ゲーテとメフィストフェレス、ベートーヴェンとくれば、手塚治虫の未完の漫画2作を思い出す人も多いのでは?
トンデモ設定ですが、根底にあるテーマは熱いです。
最後の種明かし部分には、「なるほど、そういうことか!!」と、唸らされました。
ゲーテの『ファウスト』や、音楽史をなんとなく知っているとより楽しめますが、予備知識がなくても十分面白いと思います。
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ゲーテとベートーヴェンでラノベが書けるのはこの人くらいでしょうね…
杉井光らしい作品ではあるのですが、ちょっとぶっ飛んでいてパガニーニあたりは違和感を感じます。神メモのようなピリピリした緊張感もあまりないですし。でもハイドン先生は好きですよ。
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杉井光ってこんな速筆な人だっけ?
キリカも出たばかりなのに。
最初、「神様のメモ帳」の舞台を
十九世紀の欧州に移した印象だったけれど
これは違いますね、
「さよならピアノソナタ」がまだしも近い。
…途中、変身バトルモノにもなるけどな(笑)
芸術家の魂の叫びが全てに優先する系の物語。
大好物。マンガでいうと「昴」とかな。
ゲーテの、ファウストの最後の台詞が、
いつ、どの瞬間に放たれるものなのか、
刮目して待つ!
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クラシック好きなので、全編興奮しっぱなしでした。
舞台は二百年ほど前の楽都、ウィーン。
主人公は、あの文豪「ゲーテ」と大作曲家「ベートーベン」
他にもモーツァルト、パガニーニ、ハイドン、サリエリなどの音楽家たちがたくさん出てきます。
実在した彼らとはまったく別のキャラクターですし、文明もやや発達した別世界ですが、音楽にかける情熱、執着には共感するものもありました。
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高校二年の夏休み、僕は悪魔メフィストフェレスと名乗る奇妙な女によって、見知らぬ世界へ連れ去られてしまう。
そこは二百年前の楽都ウィーン……のはずが、電話も戦車も飛行船も魔物も飛び交う異世界!?「あなた様には、ゲーテ様の新しい身体になっていただきます」
女悪魔の手によって、大作家ゲーテになりかわり、執筆をさせられることになってしまった僕は、現代日本に戻る方法を探しているうちに、一人の少女と出逢う。稀代の天才音楽家である彼女の驚くべき名は――。
魔術と音楽が入り乱れるめくるめく絢爛ゴシック・ファンタジー、開幕!
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合わなかった。読むのが億劫になってしまったのでパス。
実在の人物をラノベ風に~が苦手なんだと自覚させてくれたような。
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これは……ダメでした。
高校生が200年前のオーストリアに飛ばされて、文豪ゲーテとして生きることになった。そこで出会った芸術史に残る巨匠たちや王侯貴族たちとの交流話(魔術もあるよ!)
ということで、題材と雰囲気は悪くない。クラシックを扱った話も、きちんと人物の伝記とか作品の背景とかを調べこんだうえで書かれているんだと思う。
ただ、突っ込み体質の主人公の一人称形式、天才だけど傲慢でぼくっ娘で生活能力ゼロのヒロイン、その他周りに集まる優秀な変人たち……
完全に神様のメモ帳の構図そのまんまでした。いや、神メモは好きだし、決して劣化コピーというわけではないんだけど。だったら神メモ読めばよくね?
あと悪魔だとか魔術云々に関しては面白くなかったです。
舞台が科学技術の未発達な時代背景。それにクラシック音楽自体が神だとか悪魔だとかと親和性の高いギミックだと思う。んで、つまり作中の出来事が何かの比喩なのか本当に魔術的な何かなのかの境目があいまいに感じました。
っていうか杉井光にバトル展開は向いてないんじゃないかな……
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ピアノソナタを読了していないうちに読むと面白さがちょっと下がる?
個人的には神メモのほうが高評価。
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歴史改変SFになるのかな? 歴史的音楽家の改変っぷりが非道い。ハイドーン!
一冊で綺麗にまとまっているけど、その分途中冗漫な印象もある。続くのかな?
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杉井光の新作。
とはいえ、あとがきにも書かれているように、杉井光が音楽を題材にとった作品はこれで二作目である(自分の知っている限り。不勉強ですみません)。
話はかなり重厚なもの。あとがきで「時間を要した」と述べられている通り、19世紀の音楽や情勢について丁寧に、そして大胆なアレンジを加えた物語になっている。
ただし、その脚本の重厚さが災いしたのか、ライトノベルの体にする際に、話が大幅に切られている。
くどくどとその時代的な話をされるのもまたつまらないが、これはどう考えても、語られなかった部分が多いように思われる。
続編に期待……と言いたいところだが、杉井光は色んなレーベルで作品を掛け持ちしていて、またもや「続編に期待」……というのは、さすがにいかがなものかと思う。
どれか一つでも完結させ、他の作品の新たなステップにしてもらいたいもの。
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現代の男子高校生が悪魔の手によってゲーテとなり、少女ベートーベンと出会う話。設定もストーリーも良い! 面白い! ただ一つの問題点は、ヒロインが「神様のメモ帳」のアリスとほぼ変わらないこと。