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商品説明
夢を映像として記録し、デジタル化した「夢札」。夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章は、亡くなったはずの女の影に悩まされていた。予知夢を見る女、結衣子。俺は幽霊を視ているのだろうか?そんな折、浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する集団白昼夢。狂乱に陥った子供たちの「夢札」を視た浩章は、そこにある符合を見出す。悪夢を変えることはできるのか。夢の源を追い、奈良・吉野に向かった浩章を待っていたものは—。人は何処まで“視る”ことができるのか?物語の地平を変える、恩田陸の新境地。【「BOOK」データベースの商品解説】
ある日、夢を解析する「夢判断」を職業とする浩章のもとに、奇妙な依頼が舞い込む。各地の小学校で頻発する集団白昼夢。狂乱に陥った子供たちの「夢札」を視た浩章は、そこにある符号を見出す。『北海道新聞』等連載を書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
恩田 陸
- 略歴
- 〈恩田陸〉1964年宮城県生まれ。「夜のピクニック」で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、「ユージニア」で日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門、「中庭の出来事」で山本周五郎賞を受賞。
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紙の本
夢は異界と繋がっているのか
2011/11/28 13:05
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こぶた - この投稿者のレビュー一覧を見る
夢を画像化する『夢札』とそれを分析する仕事に携わる浩章のもとに奇妙な依頼が舞い込む。
それは各地で相次ぐ学校での集団白昼夢の夢の分析
それと前後して事故に巻き込まれ亡くなったはずの兄の婚約者であり予知夢をみる女性古藤結衣子の姿を見るようになる。
彼女は幽霊なのか
集団白昼夢の謎とはなにか、何を暗示しているのか
夢は変えることができるのか
読み続けるにつれ謎は深まり深い霧の中に物語も埋もれていくように思え
この物語はホラーなのかSFなのか、時空を超えたひそやかなラブストーリーなのか
何一つ解決されないまま
物語はひっそりと終わる
萩尾望都の傑作『バルバラ異界』へのオマージュとして描かれたこの作品は高い完成度を保ちながら
とても不安定だ
夢は異界とつながり
時空や時間を飛び越えこの世界から姿を消すことができるのだろうか
夢というものがもつ不安定なでも魅力的なものが不安を呼ぶのだろうか
紙の本
夢と現実の境界線が見えなくなる恐怖・・・
2012/05/01 18:18
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆこりん - この投稿者のレビュー一覧を見る
夢をデジタル化し、「夢札」として保存することができるようになった。「夢札」を解析する夢判断を仕事とする浩章は、つねに疑問を抱えていた。「結衣子は生きているのではないのか?」それを裏付けるような不思議なできごとが、各地の小学校で起こり始めていた・・・。
小学生の夢札を見続ける浩章。そこに映し出された思いがけないものにぎょっとする。いったいそれは夢の中だけのできごとなのか?それとも現実の世界につながるものなのか?夢と現実。その境界線がしだいに消えていく・・・。そもそも我々自身は、本当に現実の世界を生きているのだろうか?もしかしたらこの世の中は、脳が見せる幻の世界なのかもしれない。そんなことを考え始めたら止まらなくなる。それと同時に、言いようのない恐怖に襲われた。この作品を読むと、自分自身の存在に確信が持てなくなってしまう。どこまでが夢でどこまでが現実なのか?最後までその疑問に対する答えは得られなかったが、恩田陸の世界を充分に味わうことの出来る面白い作品だと思う。
紙の本
既視感のあるSF的作品。あいまいな部分が、作品の良さになっています。
2017/12/25 22:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
恩田陸さんのよさが、ほどよく詰まっている。
H23年度下期の直木賞候補になったのもうなずける。
SF要素のある心理描写を重視した作品である。
SFは、宇宙やロボットばかりではないと思っているので、納得のいく
一冊であった。
直木賞選考会での評価は、あまりよろしくなかったように読める。
謎がそのままの部分とか、SFの理屈がついていない部分を捉えての
ことだと思うが、それを冗長で疲労感を持つだとか、破たんしている
とかの評価は、あさっての方向を向いている。
もし直木賞選考会の評価で迷っている人がいたら、全然気にする
ことはないですよと進言したい。優劣をつけるためだけの辛口評価と
感じる。
恩田さんは、時として幻想的な空間になるのも厭わず、
登場人物の心理描写と展開にこだわる。つまりSF的要素は、
心理展開のために結果的に取り入れられているだけであって、
そこを作り込もうという作風ではない。
だから、このまま幻視的作風をつきつめたらどうかなどという
選考委員のコメントも、けなしてはいないところは評価できるが、
やっぱり読めているようには思えない。
これは、ミステリー要素や、恋愛要素についても同じだと思う。
恩田作品の魅力は、人間像を心理面から徹底的に描くことが
上げられると思う。
夢違は、夢判断を仕事としている人たちが、次々に起こる
不思議な事件に向きあっていく話である。
夢を映像化して、記録化できる装置が発明され、その夢を
用いて精神治療に役立てるという世の中が舞台だ。
すぐに、フロイトの夢判断という言葉を連想した。
夢の内容を再生することは、まさしく夢の装置であり、
憧れを感じる人も多いのではないか。
もし夢の装置があったら、どんなことが起こるかという想像の
膨らみが、小説の根幹をなしている。
夢判断をする人たちが、夢から与えられた謎を追う。
分かりやすい舞台に、斬新な解釈と想像できない展開が
待ち構えている。そのミステリアスさが物語の推進力となっている。
心理描写のうねりが面白く、夢という道具を実にうまく使っている。
SF要素とか、ミステリー要素は本格的に作り込まれていないが、
私はそのあいまいさ加減に何ともいえない魅力を感じてしまった。
理屈の完璧な作品も美しいが、夢違のような漠然とした
色鮮やかさも、同じくらい美しいと思う。
だからこそ、直木賞の講評に違和感を覚えた。
陳腐な表現だが、この作品は、少女趣味的な憧れを、
短調の曲に乗せて歌いあげるような作品だと思った。
作中の独特な不安定感も、恩田さんらしいところ。
ファンじゃなくとも、そんな世界が好きならば、充分楽しめると思う。
出来はいい。