紙の本
御伽噺のようで、どこまでも人間くさいミステリ
2021/09/26 00:02
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投稿者:アントネスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国の四大奇書といわれる「金瓶梅」の世界を舞台にした連作ミステリ。
舞台が古代中国で、主要登場人物は八人も妻がいる等々、現在の我々からはかけ離れた舞台と設定です。それでも登場人物たちへの共感や感情移入が容易なのは、半分は著者のすぐれた筆力の賜物であり、もう半分は、人間の本質は結局時代や場所にかかわらず不変なのだということなのでしょう。
魅力的な登場人物たちの織り成す愛憎劇としても読ませますが(特に最後の三篇に描かれる登場人物たちの愛の姿は、一読忘れがたい)、ミステリとしてもきわめて高水準です。
まずはだまされたと思って巻頭を飾る「赤い靴」を読んでみてください。ホワイダニット(犯行の動機を探る物語)として、オールタイムベスト級の出来の一編に開いた口がふさがらなくなるでしょう。
電子書籍
読ませる
2017/06/11 00:56
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投稿者:プロビデンス - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて原著のほうを読み始めたが、すぐ読み疲れてしまった。なんかやっぱり表現が古臭いというか。しかし、これは読ませる。ヒロインのことを淫婦と呼んでいるが、なんの、それプラスのド悪女である。ド悪女とミステリーという感じ。
紙の本
ミステリ小説としてよりも
2024/02/16 16:44
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投稿者:栄本勇人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
構成は面白く、様々な趣向を楽しめたが、ミステリーの大傑作という評価にはしっくりこない。ミステリ要素とストーリーとしての面白さの融合がこの小説の良さではないか。
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アクロバティックなミステリの極致。潘金蓮をめぐる武松、鳳春梅、そして応伯爵の「愛」のかたち。なんど読んでも、読むほどに、うちのめされる。
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自分の欲望の為なら殺しも厭わない、欲望に果てが無くて、底無しに愛を欲する女魔王。
にも関わらず男女問わずに、その心を捕らえて離さない、非常に蠱惑的な魅力を持つ潘金蓮に飲まれた~。
飲まれた胃の腑から這い上がれないよ。
その金蓮に囚われの放蕩物な応伯爵が探偵役と言うのも、面白かった。
決して、外に漏らさない代わりに欲を少しだけ満たしてもらう。
だから、彼は欲を満たして欲しくて、また謎を問いてしまう。
凄い蟻地獄。
何回読んでも、その度に囚われてしまうんだろう。
あぁ~面白かった。
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全部は読んでいないものの山田風太郎作品が好きで手に取った本。忍法シリーズが基準だったので文体が「普通」。でも、読み応えはありました。
金瓶梅といえば中国の古典らしいですが、金蓮が悪女な一方、真っ当。むしろイッちゃってるのは西門慶。
そして応伯爵が悲しい!!
ざくざく人は死にますが、忍法ではなく、「嫉妬」というのが話としては好感が持てました。
また、この本を知る大分前には【異説金瓶梅】という舞台を観まして、登場人物が役者さんたちのイメージで読めたのも、この本にのめり込んでしまった理由かと思います。
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中国四大奇書のひとつ「金瓶梅」を基にした連作短編ミステリー。
怠惰で醜悪で妖艶な欲望渦巻く魅惑の世界で、ユニークなトリックが披露される良質な一冊です。
探偵役が決まっているだけでなく、本作では犯人役も毎回同じ人物に決まっているのがおもしろい。
同じ人物が事件のきっかけを作り、同じ立場の人間が被害者となり、同じ犯人が罪を犯し、同じ探偵役が真相を見抜くという展開の繰り返しですが、毎回凝ったトリックとエロティックな展開がおもしろく飽きやマンネリはありませんでした。
最後は作者にまんまとしてやられて脱帽。
【赤い靴】どろどろとした女たちの愛憎劇も楽しいですが、両足を切断された二人の死体、足フェチの男、夢遊病の女と事件も不気味で楽しいです。見取り図が添えられたロジカルで良質なミステリー。しかし何よりも動機が凄い。
【美童と美女】濃厚すぎて胃もたれしそうなエロティシズム。女同士、男女だけでなく男同士の嫉妬も絡まって愛憎、欲望がぷんぷんと臭いたってます。西門慶は本当に最低な人間なのですけれど、どこまでも欲望に忠実な姿に何故か憎めない。
【閻魔天女】このトリックで西門慶のアレを利用したのにはびっくりしました。そんなばかな。西門慶って凄いんだな。
【西門家の謝肉祭】色欲に溢れかえっていた西門家に食欲まで加わって欲望の濃密さにむせ返ります。なんとなく予想できた展開ですが、食道楽の夫人の旺盛な食欲を思い出すと、豚とか牛とかを連想してなんとも言えない気持ちになりました。
【変化牡丹】金蓮が体張ってます。入れ替えトリックは他にもありましたが、これが一番無理やり。
【銭鬼】色欲、食欲と出て金銭欲です。あんな殺され方は嫌だな。
【麝香姫】今度の相手をどうするかと思えばよりによってあんな方法をとるとは…。西門慶可哀そう…。「わたしは悪い女なのかも」とかいってる金蓮が可愛いです。
【漆絵の美女】意気消沈している西門慶に一人づつ声をかけている場面がおもしろいです。あんなに女がいながら真に心に寄り添って慰めたのが伯爵で、我らが金蓮は何を言うのかと思えば爆弾発言しました。かっこいい。「美童と美女」が悲惨な話だったのでここで救いがあるかなと思いきや、もっと後味が悪かった。
【妖瞳記】これはトリックは分かりやすいですが、それよりも品のある美しい女性の秘密の趣味というのが良いです。麗華さん好き。
【邪淫の烙印】ゾオラ姫がかわいい。このトリックはおもしろい。怪僧との対決も楽しいです。
【黒い乳房】このへんにくるとあの人の存在感が大きくなって信用できませんのでトリックは気付きやすい。西門慶が聴覚や嗅覚もコントロール出来る超人になってて笑いました。
【凍る歓喜仏】愛する男にこの策略を巡らせた金蓮は凄い。西門慶がああすることを見通していたということを気にも留めないほどの愛情ですが、純愛と同時に利己愛です。西門慶は最後まで彼らしくて良かった。
【女人大魔王】このトリックはすごいです。状況をも巧みに利用し全て自分の思い通りに事を運ぶ。金蓮の執着と怜悧さが際立っています。
【蓮華往生】淫婦と呼ばれた金蓮がこんなにも愛に殉じた最後を遂げるとは。金蓮と伯爵の二人が主要な役割を務めてきた展開であったのに、この二人の関係がこんな形で終わったことに胸が痛みます。
【死せる藩金蓮】春梅の真の姿と金蓮との関係は分かっていたつもりでしたが、その情念の深さには驚きました。一つの街を滅ぼすほどの動機、その方法、共にとんでもないです。
「死せる藩金蓮」というタイトルながら、彼女を愛した誰もが死んだ彼女を「生きている」としているのが金蓮の凄さを物語っていたようです。
金蓮には多くの人物が想いを寄せていますが、その中でも武松という豪快な男は金蓮の相手としては遜色ないです。しかしあえてこのビッグカップルではなく伯爵を中心に据えているのが、金蓮を取り巻く人間模様を俯瞰的に見せ、かつ哀愁漂う切ない幕切れを演出しました。
他の何を犠牲にしても欲しいものを手に入れようとした金蓮と、結局誰も犠牲に出来ず何も手に入れられなかった伯爵という二人の愛し方は全く正反対であったように思います。
連れ去られる金蓮を見送るときの、自由人である伯爵には似合わない執着と愛情が哀しすぎる。
これだけ欲望にまみれたばかばかしくも凄まじい男と女の愛憎劇で、淫婦・藩金蓮という強烈なキャラクターを描きながらも、最後には一人の男の一途な愛情で締めて感動させてしまう作者の手腕に敬服です。
【人魚燈籠】登場人物が違いますが「邪印の烙印」と同じ真珠盗難事件です。しかし別の展開をみせており、わたしはこちらの方が好きでした。
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忍法帖以外で山田風太郎氏初めての作品、忍法帖があまりに有名であるが、デビュー後はミステリ中心の創作であるし、明治モノとジャンルされる作品群もミステリ要素は強いらしい。この「妖異金瓶梅」は忍法帖への橋渡しとなった作品のようで、忍法帖における氏の作風が垣間見える。
連作短編集であるが、このパターン(後述)の類型は見たことがなかった、そして短編一つ一つがトリックの独創性に優れ、ゾッとする読後感に溢れている。本当にすごい作品であり、1950年代の作品というのが信じられない。
中国4大奇書の一つ「金瓶梅」を下敷きにしているが、登場人物のキャラ立ては山田氏独特の味付けが行われている。何よりヒロイン藩金蓮の美貌とその恐ろしき「愛」の貫き方は今作の中核を成すものであり、彼女を中心としてエロス漂う世界観は忍法帖に通じている。
以下ネタバレ
ミステリの定石として探偵と犯人の存在があり、魅力溢れる探偵の創造に作家は腐心することであろうが、魅力的な犯人というのも創作上の大きな問題であろう、犯人は探偵と違い使いまわせない、犯罪が暴かれた後は退場するしかないのだが、この「妖異金瓶梅」ではこのジレンマを完全に払拭した独特の世界観を創りあげているのだ。オリジナル金瓶梅ではほんの脇役であった応伯爵が今作では探偵役であり、ヒロイン藩金蓮が常に犯人役である。様々な事件が発生し、ほとんどが殺人である。真相を暴けば全て藩金蓮の企みであり、応伯爵はそ知らぬフリで金蓮を見逃すのだ。その代償として切なく儚いご褒美を当の金蓮からいただく、というのが一連のパターンである。
しかしながら犯人と探偵が常に固定されているという特殊な世界において、ミステリ性も「なぜ?」「どうやって?」に限定されるのだが、その足枷が物語を逆に面白くドラマティックに仕上げているように思える。これは妖しくもエロス溢れる世界観の中での限定的現象なのだろうが、ただただ山田風太郎氏の創作の勝利と言えるのだろう。
これでもか!と叩き込まれる金蓮の悪巧みも、その本質は純粋過ぎるがゆえの強烈な「愛」によって生まれるものであり、垣間見える彼女の顔も恐ろしかったりかわいらしかったりする。読者は報われない思いを持って金蓮と接する応伯爵目線に立って物語に入り込むだろう。類希なる美貌の金蓮に心奪われながらも、その思いの強さゆえの悪逆非道を見せ付けられ、彼女に近づけないのだ。このもどかしさは自分自身強く感じた。
このようなことも全て解説で述べられていたことであり、読了し大いに納得したことである。解説には高木彬光氏、有栖川有栖氏、綾辻行人氏などのビッグネームの書評、対談などが記載されている。有栖川、綾辻対談における「究極の愛の物語」に強い感銘を受けた。エロ、首切り、足切り、カニバリズム、同性愛、血生臭い殺しの果てに累々たる屍の山を見せつけておいて、最後に「愛」を感じることができた自分であった。
エンタ性抜群の作品であった。
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金瓶梅を種本にしたミステリー。
いつも殺人犯が同じ、というミステリーは見たことがない。きっと書いたとしても妖異金瓶梅のパクリと思われてしまうからだろうと思う。
金蓮のキャラが立ちすぎて怖い。足がでかいと言い返したいがためだけに2人殺したり、いい肌の臭いのする妾をクソまみれにしたりと、全体では自分が勝っているのに、他人に優れた部分がひとつでもあることが我慢できない、まさに女人大魔王。
一番怖いのは、すべての行動の動機は西門慶への純愛から生まれていること。
金瓶梅の原作は途中で投げたが、水滸伝はまた読みたくなってきた。義でつながる異能の悪党どもという話はこころが踊る。それ忍法帳シリーズだった。
もともと水滸伝のスピンオフが金瓶梅と解説を読んで知った。
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恐ろしい一冊。
個人的オールタイムベストランキングに入る。
ミステリとしてこの趣向は考えたことあるけど、それをこれほどの出来で達成する人は他にいるのかしら?
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山田風太郎作品が好きで購入。
己の欲望に忠実に行動する潘金蓮には、最初こそ「嫌な女!」と思わされるのですが、一遍読み終わる頃にはどうやら此方も彼女に魅了されるのか「仕方のない人だなぁ」と応伯爵と一緒に苦笑してしまいます。
応伯爵のキャラクターもとても魅力的で、探偵小説好きとしてはとても楽しめる一冊でした。
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中国古典『金瓶梅』を元にしたサスペンス・ミステリ長編。
頭休めに「金瓶梅」でも読もうと借りてきたが、あまりに長い本であった。
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初めて読む、忍法帖シリーズ以外の山風作品。
絶世の美女だけど恐ろしいほど嫉妬深く、あの手この手でライバルたちを葬っていく主人公・潘金蓮。
ただの毒婦かと思いきや、主への愛情は誰よりも深いし、度胸も愛嬌もあって、読むほどに魅力的になっていく。
読み終えた頃にはすっかり虜になって、殺されてもいいからこんな女に会ってみたい!と思ってしまった。
潘金蓮以外の女性もそれぞれが他人には負けないチャームポイントを一つずつ持ってて、色とりどりの愛憎劇が楽しめた。
その上、奇想天外なミステリー小説としても読めて、山風の懐の広さに脱帽。
是非他のミステリー作品も読んでみたい。
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グロテスクだが読んで良かったと心から思える本。現実性という意味では無理のあるところもあるが、そんなものもねじ伏せてしまうぐらいの迫力がある。
水滸伝や金瓶梅を読んでいるとより感動が大きいので事前に読んでみるのをおすすめ。
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面白い話もあったような気もするけど、全体的には退屈であくびが止まらなかった。。
半分も行かずに断念。