紙の本
みんな待っているよ。いつだって
2015/03/26 11:25
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投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る
さよと仄田くん。ふたりの夜の世界での冒険はまわりを変えるものじゃなくて、自分を成長させる物語だった。本当は誰もがこどもの頃にあの夜の世界に行ったことがあるんじゃないかな。きっと忘れているだけ。今だってそう願えば...ほら、あの本を一緒に開いてみない?グリクレル、ちびエンピツ、ナハト、金の輪、みんな待っているよ。いつだって。
紙の本
懐かしい時代の本
2023/01/09 11:19
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投稿者:りら - この投稿者のレビュー一覧を見る
連続ではない、一年にわたる七夜の体験。
夜ごとの物語が奇想天外でつながっていないかのようであるが、全体的な世界観の中としては、善悪とかそういう二局的なことではなくて、いろんな矛盾や理屈ではないことも包括した中で人は生きているというところが通底していたのかなと。
そういう意味で、夜の世界の全てのことが明らかになるわけではない。
主人公は私とほとんど同世代。
確かに、当時こういう骨のある児童文学もあったと思うが、今のこどもたちが読むには正直かなりしんどいと感じた。
そういう時代なんだな。
だからこそ、舞台の設定を1970年代に設定したのかもしれない。
もう、こういう時期のこんな骨太な児童文学を書ける、読めることなないかもな…と思った。
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さよと仄田くんの大冒険完結。
朝日新聞で連載していた小説。毎朝楽しみでした。
あの震災の時、新聞が来なくて、どんなストーリーだったか忘れていた。
今回じっくり読めてなんだか満足感です。
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七夜目は感動的だった。
こんなにも、さよとほのだくんの心が成長するなんて・・・
なんだか泣けてしまう。
同時に、成長することは何かを失うことなのだとも思った。
子供の頃、きっと私も夜の不思議な世界を旅して大人になったんだろう。
そのことを忘れてしまうのは悲しいけど、こうして七夜物語を読むことで、再び私は不思議な世界を旅することが出来るのだと思う。
上巻はそんなに期待してなかったけれど、下巻で一気にハマりました。
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これはこの先、何年も何十年も読み続けられるファンタジー小説だ!間違いなく。
子供が10歳という年を超えるときに、一度足を踏み入れる不思議な世界。たいていは気付かないまま通り過ぎるその世界に真っ向から飛び込んだのがこのお話の主人公さよちゃんとと仄田くん、二人の冒険はまさに「大人へ向かう心の旅」。
敵なのか味方なのかよくわからない影や異形のものたちと繰り広げる戦いのなかで二人が心と対話し、お互いを助けながら自分が進むべき道を選び取っていく、その過程にドキドキが止まらない。
『かいじゅうたちのいるところ』+『モモ』+『もりのなか』+『ハリーポッター』
ファンタジーの新たなる定番が現れた!
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思ってた以上に深かった。いい話。こどもがよんだらわくわくはらはら純粋にするだろうし、大人(および大人になりきれないものたち)が読めば気づかされることたくさんある。大切なもの、これからのこと。
仄田くんの変わり様はもちろんだけど、この物語はさよの語りで進んでいく。初めはとっつきにくいお母さんを描いていたのに徐々に「夜」を経験していくうえでお母さんへの、お父さんへのさよの気持ちが柔らぎ、お話のなかのお母さんお父さんもとても優しいいい両親になっている。仄田くんだけでなくさよもものすごい変わっているのが、自然の流れでとっても好き。
以下ネタバレになります。
最後のこと。
最後のあのオチは好きではない。ありきたりすぎるよ、童話作家になってあの夢なのか現実なのかすでに分からなくなっている七つの夜を描く作家になったというオチはあまり好きではないけれど、でもそれもまたとても自然なことなんだろうなって思ったらさらに愛おしくなった。
酒井駒子さんの挿絵、色付きでみたいなぁ。
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私は宮部みゆきの『ブレイブ・ストーリー』を全く楽しめなかった人なので、あんまり楽しめなかった…。児童書として子どもに読ましたらいいかもなぁと思いました。
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小学4年生の男の子(仄田くん)と女の子(さよ)が、夜の世界の冒険を通して成長していくお話。長編ファンタジー。
奥が深い。自尊心や劣等感、勇気、大切な家族・モノ…冒険物語のなかで、大人でさえ、あらためて気づくことが散りばめられていた。
でもちょっと話が長い。そして素敵な挿絵が小さすぎて残念。
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プライドばかり高くて扱いにくかった仄田くんが
「夜の世界」で遭遇したさまざまな事件を通して
どんどん成長していく様子を
まぶしそうに見つめるさよがほほえましい。
若かりし頃の父と母が仲睦まじくソファで寄り添う
ドールハウスを叩き壊すさよを痛ましく見守り、
外見上は欠けたところなど一点もない
美しい子ども達に心奪われる仄田くんにハラハラし、
鏡に映したかのようにそっくりな自分との闘いで
心身ともに傷ついていくふたりに涙があふれる、下巻。
夜の世界で過ごした七夜は、現実世界のふたりに
伸びやかに生きていく力をもたらしたけれど
「閉じたとたん、読んだ内容は忘れてしまう」魔法は
約束通り、ふたりの濃密な時間の記憶も消し去って、せつない。
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六番目の夜は、とても幸福な気持ちになった。神経質だった仄田くんが物事に無頓着になってきたのも微笑ましかったし、さよと仄田くんの距離が、なんとなく男子と女子になってきたところにも成長をみる。あとはやっぱり、みんなで食べる、グリクレルの料理が美味しそう。
最後の夜。
二人の挑む冒険は、ありきたりな、正義が悪を倒すようなものではなく、誰の心にもある光と闇、そしてそれらがまぜこぜになった自分、美しいもの、醜いもの、役に立つもの、立たないもの・・・。大人でもはっとするような部分で繰り広げられるので、人間や自分自身についても考えさせられた。生きているものがある限り、夜の世界は広がり続けてゆくのだろうなぁ。
自分ももしかしたら、覚えてないだけで夜の世界で冒険したことがあるんでは・・・?と、ちょっと考えちゃうような、ファンタジーだけどもしかしたらありそうな、不思議に説得力のある世界感だった。
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【あらすじ:「BOOK」データベースより】
いま夜が明ける。二人で過ごしたかけがえのない時間は―。深い幸福感と、かすかなせつなさに包まれる会心の長編ファンタジー。
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素敵なおとなになるために、子供の頃にやっておかなきゃないことってあるんだろうな。でも、わからなくていい、そういうものもあって・・・。時がすべてを教えてくれる、確かにそうなのかもしれない。
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うーん、エンデの『果てしない物語』を髣髴させるファンタジー。でも川上弘美にしては普通すぎる。『パスタマシーン』所収の「海石」みたいに弾けて欲しかった。まあ「朝日新聞」連載なので仕方ないか…
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川上弘美さん、だ〜いスキなので、わくわくして読み進めたのですが、最後まで「川上弘美の文章!」という空気が流れていなくて「これはいったい誰が書いたんだ?」と思ってしまうくらい。
最後まであまりグイグイっ! とは読めなかったのが残念。グダグダ〜っと読んでしまいました。
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読みながら、ずっと感じ続けていた、「七夜物語」へのちょんびりの違和感について、もそもそ考える。
確かにこれは川上弘美のものなんだけど、充分に面白いんだけど、心理描写や世界へ感受性のありかたも相変わらず素晴らしいんだけど、どうしても、設定された異界に、物足りなさを感じてしまうのだ。ものすごく好きだった、作者初期の素人っぽいけど神がかった底なしの迫力の異界とは異なる「つくられた物語の異界」だ。
(双方同じようにファンタジーと分類されるかもしれないが。)
そして、そのための論理や技巧が非常に際立ってる、という印象。
古典的ファンタジーの形式にのっとった特徴的な構成や、キャラクター、アイテムに、作者ならではの独自の風味を添加した、というような味わいである。
勿論これは、意図的である。
もともとが「七夜物語」という物語の構造を枠組みとして、本の中の、本、物語の中の物語、として、エンデの「果てしない物語」的な構造の枠組みの中で、「現実」と「夜の物語」を行きつ戻りつ、七つの夜を過ごす物語であることが予想されている作品なのであるから。
そして、さよと仄田くんの成長譚としてきれいにジャンル分けできる、この物語全体の流れから、最後に、作者の「言いたいこと」「主張」が、くっきりと浮かび上がってくるようにきっちりとまとめられている。
好きと嫌い、光と影、正しいもの正しくないものを分かたない全体性の大切さ、けれど分かちたい、光のみ得たいと思う寂しさを含んだ心のこと、すべてを、作者一流のまっすぐさできちんと投げだし、提示しつつ、それを、第七夜、光の子と影の子、それを分けてしまう己との闘いのかたちに集約する。
キイとなっている「七夜物語」という本が、読み終わると忘れてしまう不定形の「読者各々の物語の原型」であり、歴代の男女ペアの子供たちに受け継がれてきた世界である、という設定は、魅惑的な切なさをもっている。さよの両親、さよにいのちのうたの口笛を教えてくれた、定時制高校の二人の少年少女。
時間軸をずらしながら、確かに共有したものである世界なのに、そこを卒業してしまった成長してしまった者たちは、再びそこに「現在」する物語を動かす主役として参加することができないのだ。
昼間の現実世界では初めて来たはずの場所に感ずる、夜の世界での体験の、淡い、デジャビュ。
冒険を終えた後、さよは、失われた夜の物語の記憶の残滓の中に、時空を超えた深い共有の感覚を感じ取る。そこには、過去から受け継がれてきたという共有、親密でほのかで確かな温もりを、そして未来、次世代へと受け渡し続けてゆくことによって、個としての体験を、閉ざされない永遠で絶対のものへと祈りあげてゆく、という構造が孕まれている。それは、忘却、という寂しさ、決して固形としてつかみ取ることのできない、掴んだ瞬間に真理でなくなってしまう逆説を孕んだ真理の構造そのものであると言ってもよい。
ひと一人の閉じられた一生の物語が、夜の世界の「穴」を穿たれることによって、永遠と、他者へと開かれる、歴史の流れそのもの、生成さ��続ける物語そのものを生きることと響きあうことができるようになるのだ。
子供が大人になってゆく道筋、人生において、そのときしか得られない、一生を共に行く運命の体験、として、歴代に引き継がれてゆく一冊の本、七夜物語。
構造の勝った作品の強みは、この淡く切ないがスッキリとした意志的な力強さのある読後感だ。
しつこいようだけど、「わからなさ、全体性」を論理として志向しようとするこの構造よりも、わからなさそのものを体現する、夢の世界の不条理そのものをただ写し取っていったものである、川上弘美初期の異界の手触りの方がずっと好きなんだけどね。できたら、このタイプの長編童話、これからどんどんたくさん書いて欲しい。さまざまの趣向を凝らしてほしい。どう転んでも、面白いものになると思うから。
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第五夜(「五つ目の夜」)までがんばったものの、どうしても読み進められずに頓挫。川上さんの作品はどれも好きなのにどうしてだろうと考えた結果、自分がこの手のファンタジーを求めていないから、という理由しか思い当たらなかった。言葉を話す大ネズミやら、手足のあるエンピツやらが出てくる世界に遊ぶことはもうできないのかなと思うのはもの悲しくもあるけれど。酒井駒子さんの挿画はとてもかわいらしい。ただこれも本作でわかったことだけど、どうも私は挿絵が多いと文章に集中できないみたい。(が、もちろんそれはこの本の非ではない。)