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商品説明
鮮烈なる文学へのまなざし、誠実なる歴史への態度−。四半世紀を越える時のなかで、著者が執筆した100冊以上の文庫解説のなかから、24編を精選して収録する。日本と近代、その時代精神を読み解くための「文学」への誘い。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
関川 夏央
- 略歴
- 〈関川夏央〉1949年新潟県生まれ。上智大学外国語学部中退。作家。「海峡を越えたホームラン」で講談社ノンフィクション賞、「『坊っちゃん』の時代」で手塚治虫文化賞を受賞。
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紙の本
「解説」という渾身の芸(文学)
2012/03/23 18:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:そら - この投稿者のレビュー一覧を見る
書評というのは、費やす手間と労力を考えれば到底、割に合わない仕事だ
と、井上ひさしが書いていたのを思い出す。
テレビ書評というのが新鮮で、NHKの週刊ブックレビューを観ていたことがあった。
関川夏央はその頃よく出演していて、同席していた羽仁進が感に堪えたように、本そのものより説明のうまさに舌を巻いたと語っていたのが印象に残っている。
「解説」もまた文学である。
小林秀雄の批評が文学的創造と同義であったように。
本書は、関川夏央による少なからぬ文庫解説の中から取捨選択し、その精華を単行本化したものである。
山田太一のエッセイ集「逃げていく街」の解説の中で、関川夏央自身は次のように書いている。
文学とは小説だけでなく、テレビドラマも脚本も戯曲も含まれる、とした上で
「その背後に批評する精神と歴史意識をともなう日本語表現が文学である。ジャンルを選ばず、表現を立体的に行ない得ることそのものが現代文学のにない手たる条件である」
と。
「解説」の本道とは
感性だけでなく歴史的教養を背景に、当該文学の現れた世相も視野に入れて、文庫版によってはじめて作者の名を知った読者にもよく分かるように、作品の立ち位置を示し、簡にして要を得た説明をすることなのだ。
ところが何でも文庫化されるようになった70年代半ばころから解説の劣化がはじまったという。
雑文の類でお茶を濁す解説が多く見受けられるようになった。
本書の2/5を占める、文春文庫全10冊に及ぶ「司馬遼太郎対話選集」の解説は、「解説」というスタイルを借りながら、同時代の文学者・知識人群像までも描き出そうとした意欲作である。
司馬遼太郎は対話を好み、学生時代からいつも座談の中心にいる人だった。
一方、先生と坊主を嫌うなど、人の好悪がはっきりしていた。
対談によって、該博な知識と柔軟な思考は、専門家や異なる資質からの刺激を受けて、より豊穣になった。
新聞記者としての経験からもそのことをよく知っていたと思う。
司馬遼太郎にとって「他人の創見についての受信感度のよさ」が、人間評価の基準だったという。
作家が厳しく斥けた自己愛と我執こそ、それを妨げるものだった。
関川夏央の解説は当然のことながら、司馬遼太郎だけでなく、対話者の著作への興味をかきたてる。
本書は、「解説」という渾身の「芸」に感心させられつつ、さらに面白い読書へと誘うガイドブックでもあるのだ。