紙の本
官憲に惨殺された若き運動家
2017/01/30 11:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:平良 進 - この投稿者のレビュー一覧を見る
28歳という若さで6歳の息子とともに憲兵隊によって殺されてしまった、伊藤野枝ですが、幼いころからの純でアグレッシブな生き方に感動しました。この時代に無政府主義を唱えること自体にかなり勇気のいることであったと思うわけですが、どうして社会科の教科書にこの人の名がなくて平塚らいてうくらいの毒にも薬にもならない人しか載っていないのかがわからなくなってしまいます。人として生まれたからにはこれくらいの気迫をもって歩みたいものだとは思います。未読の方はぜひこの岩波書店刊の書を読んでください。伝記は人が人生に悩んだ時に力になってくれると確信します。男性も読まれて決して損はないのです。今からでも図書館なり本屋へ足を運んでください。そしてほかの人にもこれを薦めてあげてください。
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すばらしい! 「権力にたてついた人の伝記」という先入観をきれいに払拭してくれる、教条臭のいっさいない痛快な記述だ。彼女の自由な生きざまをポップな文体でヴィヴィッドに描き出している。
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いゃあ 面白かった
日本の歴史上の一人の烈女として
描かれてしまうものが
多い気がするのですが
著者の栗原さんの
飄々とした筆致が
等身大の伊藤野枝さんを
描きだされているのが
とても魅力的です
※評伝には先ずみられないであろう
随所に、挿入される筆者の形容詞句が
なんとも素敵な効果を生み出しています
この一冊が岩波書店から出されているのも
また うれしいことのひとつです
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恥ずかしながら、大正の世に、こんなに自由を求めた女性がいたことを知らず。
自分に忠実に奔放に生きた挙句、官憲に虐殺されちゃうんだけど、そういう、生き方、発言への弾圧を再び許してはいけないと思う。開放、されてこー!
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伊藤野枝の伝記。
驚いた。タイトルもだけど、伊藤野枝という人の思想にも行動にもだけど、
それよりまず、伝記って、今はこんな語り口でもアリなんですね。岩波書からでてて、うん、すごい。一気に引き込まれて読みました。
1895年に生まれ、それまでの結婚制度や社会道徳に、女性が(自分が)犠牲になることに我慢などせず、自由に奔放に生きた。平塚らいてふ『青鞜』に参加し、編集・発行人にもなる。
自身は親たちが勧めた結婚から逃げ出し(一度は結婚を承諾して、学費を出してもらったのに)、高等学校の教師だった辻潤と結婚し(おしかけて無理やりだったし、辻潤は辞職し、そのまま定職に就くことはなく、野枝が青鞜で働いて家計を支えた)、それなのに辻潤の浮気もあって、妻帯者だった大杉栄と恋愛関係になる。大杉と雑誌『文明批判』や『労働運動』を創刊。辻とは2人、大杉とは5人の子どもをもうけ、極貧ながらも、「なんとかなる」と、頼れる人とみると無心し、助けてもらい、頼られると自分たちのなけなしの金も渡してあげるような太っ腹な夫婦だった。
しかし1923年、関東大震災の後すぐ、大杉と大杉の甥っ子とともに甘粕正彦ひきいる憲兵隊に拘束され、3人とも虐殺された。野枝・28歳だった。
今現在においても、野枝の故郷・福岡の今宿では、野枝は偉人ではなく、淫乱女呼ばわり、墓には祟りがあるとささやかれている。自分の心のままに生きた野枝。
過去の女性の立場を、今現在のものに変えてゆくには、これぐらいパワーのある人がいなければダメだったんだろうと思う。
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伊藤野枝は、日本の婦人解放運動家、無政府主義者、作家で、関東大震災後の混乱に乗じた憲兵隊に、同棲していた大杉栄とともに虐殺される(いわゆる『甘粕事件』)。その伊藤野枝の生涯を当人に対する熱い共感で綴った評伝。自己の欲望のままに生きる野枝の姿がまぶしいほどにたくましく描かれている。周囲の前近代的な女性観に対し真っ向から対抗する伊藤野枝は今では「自由恋愛の神様」とあがめる女学生もいるらしいが、その出生地では未だに野枝の話をしたがらないという。思うに、種を保存するために人間は子供を育てるシステムとして家庭や社会を作り出し、それを破壊するような者は厳しく排斥しようとする。野枝は100年早く生まれすぎたのだろう。甘粕事件で虐殺された野枝の遺体は肋骨が何本も折れており、激しい暴行を加えられたあとがあったという。その上、畳表で巻かれ、古井戸に投げ捨てられていた。野枝28歳。巻き添えを食って殺された大杉の甥はわずか6歳だった。野枝の情熱は一般の常識人からは狂気と見えなくはないが、これを排除した時の権力(憲兵隊)の狂気こそ、受け入れることがあってはならない狂気だと思う。
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伊藤野枝という人… 読むまではもっと過激で友達になりたくない女だと思っていたのだが、意外と共感できる部分もあった。
人間は機械(ミシンらしい)であれ。
それぞれの部品が独自の動きをしているが、おのおの連絡をとりあって、歯車を噛み合わせると単体ではあり得なかったような動きをするようになる… ナルホド。
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こんな書き方があったとは...アナキズムの理想の伝記。永年遣る瀬無い結末に欝々としてきたけれど、微笑む写真に勇気づけられました。いざとなったら、なんでもできる。やちまいな。
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大杉栄とその甥とともに、まったく理不尽にも憲兵隊に虐殺された伊藤野枝(享年28歳)。その疾風怒濤の短い人生を、独特の語り口で、勢いよく描き切る問題作。著者は1979年生まれ。まだ、30代。でも、野枝は30歳を迎えることができなかった。どう受け止めればいいのだろう。
伊藤が殺されたのは1923年。
今から、まだ100年も経ってない。それが現実。
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思春期の頃の私のアイドル、伊藤野枝。こんな風には生きられないよね、やっぱり、となって遠ざかってしまったけれど、これを読んだら、当時の自分が、なんで彼女をかっこいいと思っていたのか、思い出した。青くさかったり、齟齬があったり、無茶があったり、多分そばにいたら仲良くはなれないだろうけど、自由への強い思いとか、心意気とか、行動力とか、ことごとく自分には見つけられないものが憧れだったんだな。
著者の弾ける文章が、野枝の力強さを、ポップに、ロックに描いていて、その人生の終わりを知っているのに、その疾走感にわくわくした。
彼女がもう少し長生きして、その思想を深めていくことができていたら、どんなことを語ってくれていただろう。惜しいとしか、言いようがない。
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この装丁や予想される内容が、まさかこのような文体で紡がれるとは誰も予測できないでしょうね。 何度も表紙を見直してしまいました。よくこの感じで出版できましたね、と。
最初はとても文体に馴染めませんでしたが、でもこういうものだと思ってしまうと味があるというかこういう風に書くノンフィクションもありなのだなと思わされてしまいました。
そして途中に出てくる「働かないでたらふく食べたい」
ああ!あれ書いた人か!と妙に納得。いや、その本は読んでないけれども(笑)思わず肩書きも見直したりと、本スジのほかに気になることが満載過ぎて中々本文が進みませんでした(笑)でも語弊があるかもしれませんが面白い一冊でした。
この表紙になるのは当然かもしれませんが、この表紙ゆえに手に取らないで避ける人もいるかもしれませんね。手に取ったら、思いがけない一冊になることは間違いないと思うのですけど。(好みは分かれるでしょうからいい意味か残念かは人によるでしょう)
それにしても。すごい女性がいたものですね。何となくはその名は聞いたことがあるけれどもよくは知りませんでした。
思ったことはとにかくやる、お金なんかなくてもどうにかなる、でも子供はぼんぼん産む…自分にはもう考えられないですね。
窪美澄さんがある番組の中でお勧めしていました。
小説じゃなくて何読もうかな、と思ったときには良いかも、です。
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明治生まれの女性でありながら、アナーキストの闘士。
自由奔放で何ものにも縛られない女性、伊藤野枝。
関東大地震後の混乱期に、憲兵大尉甘粕正彦によって殺害される。
その自由な女性、伊藤野枝の一代記。
自由奔放な伊藤野枝の生が物凄いこともあるが、アナキズム研究者である著者の伊藤野枝愛が止まらなく、文章にあまりに私が入りすぎていて疲れる。
伊藤野枝って誰?という視点では読めるが、それ以上深読みする気にはならない。
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著者なりの考えがあって、
くだけた口調で書いてみせて
読みやすくしているのはわかる。
しかし、その度が少し過ぎていて、
伝記であるのに本人の人となりを
読者が判断する自由を支配していないだろうか。
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おもしろかったー!
関東大震災が起こった1900年代〜第二次世界大戦の前(うろ覚えかよ!)に、アナーキスト?大杉栄と一緒に殺された伊藤野枝の評伝?。評伝のもっと柔らかいやつ。
作者の栗原康さんは伊藤野枝が大好き。歴史の間に挟まれる栗原さんのつぶやきに愛を感じる。やばい、かっこいい。悪いね、最後まで(野枝を助けてくれた官僚の後藤に対して)…痺れる等々。雑誌「青鞜」で交わした女性問題のやりとり(論文の応酬…けんかみたいなやつ)でも野枝の肩を持つ。それが微笑ましく感じた。
尊敬してた平塚らいちょうにも最後の方では理解できないと批判されてかわいそうだったけど、自分の心に素直に、それが道徳と違うものでも気にしないっていう多分シンプルな行動指針は、今の時代とても大事なものかなと思った。4キロの海流を泳いで渡る野生の感覚を持った野枝、かっこいい。
27歳で殺されてかわいそうだ。大杉栄は35歳だったかな?27clubの一員ですか(ミュージシャンじゃないけどね)大人になっていろんなつらいことに出会って、もっともっと考えが深まっていったら言うことも変わってきたのかなあ。
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概ね一般に言われている野枝像のままだが、作者の悔しさや喜びがそのまま汚い言葉で織り込まれ大変誘導的に感情移入する。
それはそれで面白い。
タイトルにやられる。