紙の本
それはマンガだったからなのか
2017/01/11 07:49
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
焚書というのは過去の歴史の事件かと思っていたが、「クールジャパン」と今では称賛されることの多いマンガの世界でも焚書はあったし、今もそれは残っている。
この本はそんな「消された」マンガを集め、何故それらが「消された」のかを検証した問題作である。
手塚治虫といえば「漫画の神様」と今でも称賛される漫画家だが、手塚はもしかしたらもっとも攻撃された漫画家の一人かもしれない。
手塚などの活躍により昭和40年代にかけて大学生までもの漫画を読むと嘆かれた時代、手塚の作品を攻撃することは「見せしめ」としても効果があったのだろう。
人種差別、歴史上の誤認、身体的障害、性や暴力表現、さまざまな場面で手塚は攻撃されていく。
しかし、手塚はそれらに屈することはなかった。
おそらく手塚自身が劇画という新しい表現に対峙しながら、漫画の攻撃とも戦い続ける。
現代の漫画の隆盛はやはりそういった先人たちのおかげといっていい。
では、そういった漫画に対する攻撃は減ったかというと、歴年体で編まれたこの本では2000年以降の作品でも「消された」ものがあるという。
そのなかには漫画家の他の作品からのトレース問題などネット時代ならではの指摘や攻撃も生まれている。
進化ということはすべてが許されることではない。
言葉や表現は進化することで差別的な言い方を抑制してきた。それは評価すべきことだろう。
その一方で過剰な抑制は自由な発想を縛ってきたのも事実だ。
マンガという媒体を通して、そのことを考えてみるのもいい。
紙の本
あっさり消せない
2017/02/26 10:54
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
表現の自由を守るのか歴史認識の違いを改めるのかむずかしいところだ。後世のために残すという点では、マンガという表現方法は最適なのかもしれない。
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消された理由も様々
2017/01/21 14:40
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投稿者:あずきとぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2016年初版。
2013年刊の『消されたマンガ』を加筆修正のうえ文庫化。
本書でいう「消されたマンガ」とは、何らかの外的な理由で(作者の意志のみによるのではなくて)連載の中止・単行本への収録不可(禁止)・単行本の絶版といった措置が取られ、一般的な市場に出回ることなく人々の前から姿を消した作品・エピソードをいう。
本書には、1941年の『のらくろ』から2011年の『さよなら絶望先生』まで約60作品の問題とされた箇所とその経緯、それらに対する著者の考察が記されている。
「消された」理由は、様々だ。
人権問題、わいせつ問題、著作権問題、盗用・盗作疑惑・社会的モラル…。
これらの中には、現在の視点からすれば、何故問題になるのか分からないような事例も散見される。
「消される」理由は、その時代ごとの影響を大きく受けるからだ。
そのため、「消された」作品が後に復刊されるようなこともある。
「消されたマンガ」の歴史を辿ることは、世相や社会的規範の変遷を辿ることでもあるのだ。
本書後半には、「消されたマンガ」の当事者7名のインタビューを収録。
巻末には、「消されたマンガ」など政治的・社会的に影響を被った作品に関しての詳細な年表(戦前~2016年)が付されている。
紙の本
空気感の支配する国。
2016/10/03 21:42
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投稿者:わびすけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
発禁や、自主検閲などの漫画の代表的な流れがわかる。意外と自主的なのが多いのが日本的ですね。「空気感」をつかめる人が現場にいないとエライ目に遭うのは現在も同じ。もっと「空気感」について考えていくべきだと思う。
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著作権・盗作問題、猥褻への批判、政治的事情等々のからみから、批判を浴びたり消えていったりした作品たちのお話。筆者の主張にではなく語用に数か所気になる点がみられたが、漫画表現を考えるには一度手にするのもよいかと。
個人的には、「悪書追放」は子どもの悪心を賦活させないためというより、大人の不安を否認するため…と映る時がある。子どもはファンタジーも、リアルも、よく観ていると思う。
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いや良く調べてある。ただ、高度成長の頃からは、発禁になるのはほとんどが、性描写や差別を巡るものなんですね。
性描写については、いまやあまりに、感覚が違いすぎて当時のやり取りがバカバカしくもあるし、差別については、言葉の言い換えでは本質的な解決にはならない気がするのですが、どうなんでしょうか。
あまたのマンガを楽しみにして、子供の頃は発売日が本当に待ち遠しかった。本書で取り上げられているマンガも、リアルタイムで読んでたものも結構あるがその時は、こんな問題になっているなんて全く知らなかった。
作者はそれなりに問題意識や自己表現とか社会への挑戦とかいろいろあるのでしょうが、小中高生は基本面白ければそれでいいだけだったのではないでしょうか。
要は、大人が大騒ぎするものではないという事だと思います。
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詳細な調査には脱帽だ。特に、消された理由解明へへのあくなき姿勢は素晴らしい。それにしても、やはりマンガというのは悪玉に挙げられやすいのですね。
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みっしり読み応えありました。伝説の発禁漫画「血だるま剣法」が載ってない〜と思っていたら巻末にインタビューが!しかし復刻版でもあの伏字なんでしょうか。註釈をつけるなどして伏字は無くしてほしいのですが…。様々な漫画家・原作者たちが表現の自由とのせめぎ合いの中で闘ってきたのだなあと胸が熱くなりました。おもしろい本でしたが読後なんだかマイナスのエネルギーにヤラれました。彩図社の本は以前読んだ日本赤軍の本もでしたがなんだかポイントガリガリ削られます。
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時代に翻弄され消えてしまった漫画作品を追う一冊。いわくつきの封印作品60本超収録。
人権、猥褻、宗教、著作権、タブー、パクリ疑惑など、さまざまな事情で消された漫画作品。日本という国の問題点が垣間見れるほか、作者の意識や出版社の意向など人間臭さも感じることができる。
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コンビニ本によくあるネタなんだけど、それとは違って非常に詳しく調べてあったり、当事者にインタビューをいくつもしていたりと、とても満足感の高い本だった。
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よくある系の一冊。コンビニ本等でも類似の本を多数見かけるが・・・ちゃんとした(?)書籍っぽかったのと、知っている作品が多数掲載されていたことに引かれて手にとってみた。感想は、箇条書きにて♪
●「マイナス」掲載雑誌の回収騒動は、リアルタイムで経験。懐かし。
●「燃えるお兄さん」は、小学生時代にリアルタイムで読んでいたが、その騒動は知らなかった。
●桂正和は、好きだった。「ウイングマン」の終盤あたりから、その手の表現が露骨になってきていた印象が。
●平松伸二も、かなり読んだ。
・子供心にも『現職総理が殺人許可証を出すって設定自体どうよ?』と思った記憶が。
・本書で挙げられたエピソードよりも、“天安門事件”を下敷きにした話の方が『これマズのでは?』と思った。
・「~牙」はスーパージャンプだったからまだしも、「ブラックエンジェルズ」は少年ジャンプだったからねぇ。前科者への偏見描写より先に、少年ジャンプでの強姦描写の方も、どうかと思うけど。いやいや、いくら勧善懲悪のある意味正義の味方とはいっても、主人公の設定自体がね・・・。
●平成の有害コミック騒動もまた、懐かし。れっきとした(?)少年漫画なのに、小中学生時代に好きだった作品(恥)が数年後に成人コミック指定(18禁)を受けていたのを見かけた時は、ショックだった。
●出版社による、過剰なまでの自主規制・・ほか・・結局、日本という国は「クレームつけたもん勝ち」な部分がおおおおにしてあるんだな、と。
●かなり古い資料まで引っ張り出しての漫画史の詳述は、興味深く読めた。
しかし、2000年以降の分で取り上げられた作品が偏っているのと、それに対するこの本の著者のコメントの軽さが少々気になった。
●遊人やら上村純子やらの作品紹介のコメントの書き様から、筆者「ばるぼら」さんは、おそらく同世代だろうと推測(笑)。
★3つ、7ポイント。
2017.01.23.図。
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マンガ規制にも歴史あり。年代ごとにその裏側を見ると、時代を反映しているかのようでもありますね。ここまでの時期は共産党が強いとかね…。魔太郎ってそんなに修正してるんですか!A先生は規制の宝庫ですね。しかも反省してない。全体を見たとき、どちらとは言いませんが、書き方がイマイチな人がいたかな。こういうものに自分の正義感というか、思想みたいなもので結んでしまうと萎えるね。
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いわゆる企画本の文庫化で、この手の本は普通買わないのであるが、つい手に取ったら思った以上に調べていて、所謂「抹殺された作品」のすべてではないが、多くを網羅していた。権利上の問題もあるから、その作品の掲載はあまりできていないが、存在の所在だけでもわかったのは、有益だった。(古書マニアにとってはいい参考本になっていると思う)。
以下参考になった一部をメモする。
◯当時の国民マンガ「のらくろ」は強制的に終了させられた。1941年、田河水泡は商工省に呼び出され執筆禁止を言われる。曰く。「あんたがのらくろをやめれば、きっと少年倶楽部の売れ行きが落ちる。用紙の節約になる」当時は印刷用紙を統制する動きがあった。のらくろは内容的に国策に決して批判的なマンガではなかった。しかし権力者はこの時点では既に反戦以外でも「表現の自由」などは関係なくなっていた。
◯手塚治虫が自ら永久欠番にしたり、作り変えたモノもある。「妖怪探偵団(1948)」は、狂人(きちがい)病院の中の精神異常者がどんどん登場する本。永久欠番になっている。「ブラックジャック ある監督の記録(1977)」はロボトミー手術を手塚本人が誤解していたと後で改稿した。
◯「8マン」は人気絶頂の時に桑田二郎の銃刀法違反逮捕のために、1965年3月21日号少年マガジンをアシスタントが代筆を務めて最終回を迎える。私がマンガを読み始める直前の話だったのだと今気がついた。今驚くのは、8マンのエネルギーが小型原子炉で、定期的に「タバコ型冷却剤」を吸わないと電子頭脳がオーバーヒートする設定になっていたこと。変なところが抜けていて、変なところがリアル。
◯「ハレンチ学園」の「有害論争」(1969-70)は有名である。私には、リアルタイムの話。遂に一回もスカートめくりを実行できなかったことは、男としての度胸のなさとして、一つのトラウマとなっている。しかも、この本を読むと永井豪の「発明」ではなかった。テレビ番組「やあ!やあ!ガキ大将(1969.6.29)」で「オッパイモミモミ」と「スカートめくり」が最近の流行りとしたのを見て描いたらしい。しかも最初のマンガ登場は既に流行していた小川ローザの「Oh!モーレツ」を見て真似するというところから始まる。
◯「アシュラ(1970.8.2「マガジン」初連載)」は衝撃的だった。しかも、最初から不買運動が始まった。神奈川から岡山、愛媛、愛知でも有害指定された。道理で最初の衝撃だけ記憶があって、その後の展開の記憶がない。1981年「ジャンプ」で読み切りで完結編が載ったらしいが、全く記憶にない。
◯当時私は、毎週土曜日か日曜日、自転車を30分こいで、近くの商店街の本屋で二時間ほどかけて「マガジン」「サンデー」「ジャンプ」を立ち読みして「チェック」するのがルーティンだった。5歳から始めた私のマンガ鑑賞は紆余曲折をともないながら、35歳までは続いたのだから、「マガジン」「サンデー」に関しては、30年間読者であったという自信がある。しかし「チャンピオン」はあまり自信がない。よって、「魔太郎がくる‼魔太郎の生い立ち(1975.11.10)」で単行本未収録になったという回を見た覚えがない。どうやら作者たちの写真コピーを使った生々しいいじめられ体験を使ったら��い。
◯「ゴルゴ13」の単行本未収録は四本らしい(うち一本は後で解禁)。
一本目、第237話「幻の栽培(86.4)」。イラン・イラク戦争でのホメイニ師の影武者を描いた回。
二本目、第245話「スワップ・捕虜交換(86.12)」。PFLP(パレスチナ解放人民戦線)をモデルにして「PLO情報部」として描いたら、当時テロの放棄を宣言していたPLOから苦情、2007年言葉の変更で再録が許された。
三本目、第266話「バチカン・セット(88.8-9)」。バチカン司教の権力闘争や小児性愛を扱う。
四本目、番外編「告発の鉄十字(93.2)」。二重人格もの。
面白いのは、最初から自主規制で朝鮮半島を舞台にしたエピソードが一つもないこと。確かに!
2017年4月読了
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作者の意志とは無関係に何らかの外的要因により市場から抹殺された漫画が一作一作丁寧に紹介されている。凄惨グロテスクなものばかりと思いきや、意外にも漫画の神様、手塚治虫が実は有害コミック作家の第一号。鉄腕アトム、赤銅鈴之介、月光仮面など、漫画史上不朽の名作といわれる作品でさえ、PTAなどから悪書として糾弾されている。消された漫画からは、その時々の社会的時代背景を読み解くことができる。弾圧されながらも、それに屈することなく前進してきた漫画家たちの努力が、今や世界に冠たる漫画王国として実を結んでいる。漫画は時代ごとに並んでおり漫画の歴史としても楽しむことができた。
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以前読んだ「封印作品の謎」は5、6個程度の作品について深く調査、考察をしていたけど、これは広く浅くという感じ。
読み応えは劣るけど、これはこれで面白い。
それとこれまた以前「毎日かあさん」の2巻を読んだとき、「5大バカとか言っちゃって大丈夫?」って書いたんだけど、やっぱ問題化してたことがわかって面白かった。でも問題化させたのは5大バカの人たちじゃなくて学校と教師だったので、思ってたのと違った。
ラジヲマン読んでみたいなぁ。