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紙の本
企業におけるリスクマネジメントを学ぶ
2011/05/03 23:39
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:MtVictory - この投稿者のレビュー一覧を見る
阪神・淡路大震災から10年後の2005年に出た本。震災当時、神戸の新須磨病院院長として自らも被災した著者が、医療従事者として10年前を振り返って、その教訓をつづった本である。
震災直後の病院ではレントゲンも撮れず、医療機器も使えず、手術もできない状況。負傷者が殺到したという。根拠のない噂、疲れ、指揮系統の乱れ、見通しのなさから、現場の職員たちを混乱や動揺が襲ったという。そうした状況を改善するために著者は、職員への情報提供のために「災害対策ニュース」を定期的に発行した。その最終号では、多くの教訓を得たこと、それを後世に伝えることが自分たちの役割だと書かれている。
私は医療とはまったく無縁の人間だが、今回の東日本大震災の医療面での問題などを報道で伝え聞く限りでは、本書で書かれているような教訓が活かされ改善されている面もあるように見える一方、まだまだ不十分だと思われる点もある。阪神・淡路とは地域性の違いもあるが。
本書は震災時医療がテーマであるが、特に、病院としての備えとして3章では資金的な問題に触れている。震災後は収入がなくなることを覚悟しなければいけないとか、そのためにも平素から資金調達や自己資本整備が重要だと述べている。興味深かったのは4章だ。「医療におけるリスクマネジメント」と題して、企業価値とリスク、医療におけるリスクの分析、医療事故などリスク要因についての分析、事故対策のマニュアル化について書いている。その内容は病院だけでなく、多くの企業や組織のリスク管理のヒントとなると思われる。