「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
人類の技術をはるかに超えた巨大な物体「SS」が、突如宇宙に出現した。「SS」に向かった人工実存HE2による探査が明かす驚くべき事実とは? 8年の時を経て、伝説の巨篇の幕が再びあがる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
小松 左京
- 略歴
- 〈小松左京〉1931年大阪府生まれ。京都大学文学部イタリア文学科卒業。経済誌の記者を経て「易仙逃里記」で作家デビュー。文明評論家、プロデューサー、映画監督も務める。著書に「復活の日」ほか多数。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
SF最先端
2001/02/09 15:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桐矢 - この投稿者のレビュー一覧を見る
首を長くして待っていた長編SFの3巻が出たので、1・2と合わせて読み直した。
虚無回廊1は一人の「私」の死から始まる。「私」は意識を持った機械…人工実存…AEを生み出した科学者、エンドウヒデオ。そのころ、彼の意識をモデルに作られたもう一人の「私」…AEの乗ったロケットは、地球の5・8光年先にぽっかりと浮かぶ円筒形の巨大な物体…SSにようやくたどり着こうとしていた。
『果てしなき流れの果に』もそうだったが、物語の時間軸が複数あって、一巻の途中ですでに、一人の「私」の物語は終わっている。二巻以降は、AEの「私」が主人公となるが、まだ完結していないので、二つの時間軸がどのように交差することになるのか楽しみだ。
AEの設定が面白い。自由意志を持ち、人間のよき仲間となりえる存在。例えば、エンドウはAEに性欲を持たせるべきだろうかと悩んだりする。だが、生物の定義通り、自己修復、自己改良、自己複製のシステムを持ちながら、肉体という有限の容器をも超越したAEはすでに機械でも生物でもなく、魂そのものなのかもしれない。つまり、時間と場所と生物的限界にしばられた肉の器から、もし意識だけが解き放たれたとしたらという究極のifが一つのテーマになっている。
さらにAEは、複数の見方をしたほうが問題解決に役立つという理由で、自分自身の中に複数の人格を作り出す。この発想がすごい。
二巻以降SSに到着したAEは、さまざまな知的生命体と出会う。異なるシステムを持つ生命体同士で交わされるコミュニケーションが、これまた興味深い。
そしてこの三巻でいよいよ、SSにやってきた知的生命体達が一堂に会して話し合うことになる。
だがまだすべてのなぞは解明されていない。SSとは何か。精神とは何か。異質なものとコミュニケーションするということは? そして宇宙における知的存在の意義とは? さまざまななぞを残しつつ、わたしとしては、地球に残された女性型AE、アンジェラEの存在が物語のキーポイントになってくるような気がするのだが…。続巻を待ちたい。
紙の本
SFの真髄、復活
2001/06/24 18:18
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:花梨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
しばらくまえに「SFは冬の時代」かなどという論争が一部でありましたが、確かに近頃のSFは元気がない。その理由のひとつは、小松左京が本書の執筆を中断していたからでしょう。冗談でなくそう思います。常に時代をリードし続けてきた巨匠の、畢生の大作がいよいよ復活します。と言っても、以前雑誌に発表された分の初単行本化に過ぎないのですが、そこで明かされるビジョンのすごさは、中断中に書かれたいかなる作品を凌駕しているように見えます。完結すれば大きな事件となると期待していいでしょう。
紙の本
壮大なセミ・フィクション
2003/07/20 21:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
「さっき、“私”が死んだ」という言葉に始まるプロローグで、本編の主人公、「私」と名乗るAE(Artificial Existence:人口実存)が登場し、これに続く異様に長い序章「死を越える旅」で、「私」の誕生譚、つまり父・遠藤とアンジェラの恋の顛末と、SS(スーパー・シップまたはスーパー・ストラクチャー)と名付けられた長さ2光年、直径1.2光年の円筒形の「人工天体」をめぐる探査プロジェクトの全貌が語られる。
ここでとりわけ興味深いのは、天才ミシェル・ジェランが考案した音楽的概念に基づく遺伝子言語学(一般自然言語理論)や宇宙の構造・現象自体の音楽的な意味の解明(一般宇宙言語理論)をめぐるアイデアだ(I,137〜146頁)。
《ジェランは──宇宙における普遍的な言葉の存在が“見えた”天才だったんだ……(中略)ニュートンやアインシュタインが、宇宙における普遍的な力の法則の存在が見えたように……。オイラーやカントルやゲーデルが、幾何学図形や集合や論理の“制約”が、実在として見えたように……》(II,179頁)
本編(第一章「遭遇」、第二章「都市」、第三章「荒野」、第四章「森林」)では、「私」とその6人のVP(ヴァーチュアル・パースナリティ)たちが異星知性体──たとえば一億年以上存在しつづけている「老人」や、生態系そのものが知的生命であるような「環境生物」──と次々に邂逅し、SSの謎をめぐる「ジャム・セッション」(山下洋輔)に加わる。
そこで示唆される壮大な仮説(セミ・フィクション)。
《「無」を媒介項として「虚宇宙」と「実宇宙」をつなぎ、しかもそのつなぐルートは「回」[円環型のトーラス]でも「廊」[直線型]でも、どちらでも「位相的に等価」であるような存在、「虚無回廊!」/これこそ、SSの本質であり、「虚宇宙」と「実宇宙」を、同じ「宇宙の実体」としてふくむ「複素宇宙」は、いま新しいメディアを得たのだ!》(III,168-169頁)
物語はいまだ未完結のまま放置されている。生命とは何か、知性とは何か、意識・意志とは何か、そもそも宇宙の存在に「意味」はあるか。小松左京という知性体に宿った、新しい「宇宙史」の全貌ははたして明かされるのか。
紙の本
宇宙に知的生命体が誕生したのはなぜか。巨匠のビジョンに圧倒される
2000/07/10 03:24
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:喜多哲士 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、雑誌連載はされたが単行本未収録であったものをまとめたもの。未完の長編の再開に向けて、また一歩動き出した。
本書では〈SS〉内部に長期にわたって形成された〈森〉に人工実存HE2が入っていく。ここで彼は彼の意識を作りだしている情報を〈森〉の内部に転送し、同様に転送されてきた様々な種類の知的生命体と〈SS〉の秘密についてディスカッションを始めることになる。
このディスカッションで明かされる部分にこそ本書のハードSFとしての魅力が詰めこまれているといっていい。ビッグ・バンで形成されたわれわれの宇宙になぜ知的生命が誕生したのか。われわれが観測している宇宙に対し、観測不能な宇宙があるのではないか。大胆な仮説が打ち出され、その理論構築そのものだけで読者を圧倒する。これこそがハードSFの醍醐味というものだ。
今後新たに書き起こされる続刊に期待は大きくふくらむ。