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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.2
- 出版社: 平凡社
- サイズ:19cm/261p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-582-83255-5
紙の本
読むそばから忘れていっても 1983−2004マンガ、ゲーム、ときどき小説
著者 高橋 源一郎 (著)
「ああ。もう、どうなってもいい…」 マンガの濁流に飲み込まれた男、至福読書20年史! もー、マンガばっかり読んで暮らしたくなっても関知しないぞ。幻の小説1編も掲載。『スコ...
読むそばから忘れていっても 1983−2004マンガ、ゲーム、ときどき小説
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商品説明
「ああ。もう、どうなってもいい…」 マンガの濁流に飲み込まれた男、至福読書20年史! もー、マンガばっかり読んで暮らしたくなっても関知しないぞ。幻の小説1編も掲載。『スコラ』掲載ほかをまとめたマンガ論。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
高橋 源一郎
- 略歴
- 〈高橋源一郎〉1951年広島県生まれ。「さようなら、ギャングたち」で第4回群像新人長篇小説賞優秀賞、「優雅で感傷的な日本野球」で第1回三島賞、「日本文学盛衰史」で第13回伊藤整文学賞を受賞。
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紙の本
すぐれた作り手が必ずもっているもの
2005/03/13 21:59
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投稿者:ツキ カオリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高樹のぶ子さんのご発言を、何かの雑誌で読んだことがある。高樹さんは、このようなことを仰っていた。「小説は、男女、女男の書くものだ」と。蓋し名言である。
著者は、いい意味での「女男」の典型と思うのは、私だけだろうか。
この本の、特に前半部分は、少女マンガに紙数を割いている。
少し長くなるが、引用してみよう。1983-84の、38頁である。
ぼくはなんて無知なんだろう。『りぼん』や『ぶーけ』や『別マ』にはいつも目を通しているつもりだったのに、ほんとはまるで眼中になかったんだな。知り合いの女の子から、清原なつのの『なけなしのラブストーリィ』を借りて読んだ時に、びっくりして思わず「これ誰?」って言ったら失笑をかってしまったよ。「へえ、清原なつのを知らないでマンガのコラム書いてるわけ?」
それから、ぼくは荻窪「タウン・セブン」の本屋さんへ走って、清原なつのの『未来より愛をこめて』と『3丁目のサテンドール』を買い、家へ帰って読んだ。うーむ、うーむ。それからぼくは清原なつのをぼくに教えてくれた知り合いの女の子に電話して、いったいぼくは何を読んだらいいのかを聞き、再び「タウン・セブン」へ引き返し、かの女の指定した吉野朔美(さくみ)、松苗あけみ、高橋由佳利、岩館真理子、を買って帰った。(中略)やっぱり、ぼくは「ふつうの」女の子が少女マンガを読むみたいには、少女マンガに接していなかったのかな。そんな反省をこめて、ひさしぶりに少女マンガについて考えてみたくなった。
男性にとって、やはり少女マンガは、ある種の聖域なのだろう。私も全く似たような体験をしたことがある。まるで、歩く辞典のような男性が、「陸奥A子って誰? どういう字を書く人?」と言ったのだ。懇切丁寧に教えてさしあげながら、思いっきり優越感に浸ることができた。こういうことがあると人生はなかなか楽しかったりする(笑)。
2005年の今、どの書店に行っても、少女マンガのコーナーに置かれている人は限られている。というより、新刊は出るので、出た段階では公平に棚に並べられるのかもしれないが、前述の、もう「大家」と呼ばれるようになってしまった少女マンガ家たちの作品は、私も含めた熱狂的なファンが、出た瞬間に買ってしまうため、棚に、いつまでも置かれてはいないのだ。
よく覗く本屋さんでも、「一条ゆかりのものは男性も買うので常に置くけれども、最近、話題になっていたり、賞を取ったような漫画家さんのもの以外は、出た段階で数冊は置くが、なくなってしまったら積極的に補充はしない」とのことだった。寂しい限りである。
著者の書評は「作り手」と呼ばれる立場の人でも参考にしていると聞いたことがある。ハクガクな源一郎さんの源(みなもと)は、前述のような地道な努力にあったのだと納得させられる。
四つ星にしたのは、訳がある。1988-89の「少女マンガ ベスト50」と題されている中の、89頁に、「岩館真理子さんは、ぼくのいちばん好きな少女マンガ家です」と書いてあったので、この点に関しては、著者と全く同じ感想をもっている私としては、ベスト50の中に、彼女の、『1月にはChiristmas』を選ぶのはいいとしても、他に補足として挙げられているものの中にも、ほぼ同時期に出た『五番街を歩こう』が入っていないのは、果たしていかがなものか、と思ったのだった(笑)。
とはいえ、くらもちふさこ、吉田まゆみも、きっちり押さえているとは、さすがに源一郎さんである。
この本は、我々読者の側も楽しめることはもちろんだし、大家と呼ばれてはいるものの、もしかしたら、最近少し元気がなくなっているかもしれない、少女マンガ家達の、さらなる創作意欲を刺激することになるのではないかという、高い期待がもてる1册だったのである。