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商品説明
朝鮮戦争・冷戦下の韓国社会を舞台に、家族を核に同心円的に広がる人々の話をオムニバス形式で綴った小説。朝鮮戦争が人々の心に残した深い傷跡、反共イデオロギーが人間関係をいかにきつく縛り付けてきたかが浮かび上がる。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
曺 恩
- 略歴
- 〈曺〉1946年ソウル生まれ。ハワイ大学で社会学博士学位取得。韓国の東国大学教授。
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紙の本
出版社コメント
2004/12/13 19:10
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投稿者:平凡社 - この投稿者のレビュー一覧を見る
来年は日韓正常化40周年を迎え、「日韓友情年2005」とされています。折から「韓流ブーム」で、日韓の文化交流が賑わいでいることは喜ばしいことです。しかし、同年に来年は、朝鮮戦争の勃発から55年目の年でもあります。それはちょうど、一人の人間が成熟し老いの兆しなかに、自らの人生を振り返えろうとする時間でもありました。
本書の著者である軋恩(チョ・ウン)さんは、ご自身の最初の記憶である1950年の朝鮮戦争勃発から、南北首脳会談のあった2000年までの50年間の自らと周囲の人々の韓国人としての経験と記憶を、実に繊細な手つきで丁寧にすくい上げ、それを「小説」にされました。それが、本書『沈黙で建てた家』です(韓国では、2003年1月刊行)。
本書が扱うのは、戦争や政治を直接戦った男性中心の「戦場の記憶」や「政治の記録」ではありません。本書が試みるのは、韓国のこの50年の現代史で、戦争と冷戦が、日常の生活を必死に守ろうとして生きる女性や男性たちの人生をどのように傷つけてきたのか、生活の中に深く埋め込まれた内戦と分断の記憶が、人々の心と絆にどれほど大きな抑圧や亀裂をもたらし、どれほど長く深く沈黙を強いてきたのか、そのことを女性の眼差しを通して静かに語ることでした。
その意味で、「沈黙で建てた家」とは、まさに現代韓国社会そのものです。あるいは、それは戦後日本社会の「陰画」でもあると言ってよいかもしれません。
カレンダーのように日付と共に刻まれた現代史の出来事、複雑で多様な親族のさまざまな経験を共有する親密な人間関係の拡がり、そこには日本社会とは異なる歴史の記憶の文化があります。その韓国の記憶の文化は、私たち多くの日本国民が「戦後」と呼びならし、自由と民主主義と経済成長の時代として記憶している同じ時代が、また異なる相貌をもつ時代であることに思い至らせてくれます。二つの国と社会の間で、異なる相貌として記憶された同時代のイメージを重ね合わせることは、まさに「日韓友情年」のために何より大切な営みではないでしょうか。