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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2001.7
- 出版社: 日本経済新聞社
- サイズ:20cm/390p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-532-16393-5
紙の本
ゲノムを支配する者は誰か クレイグ・ベンターとヒトゲノム解読競争
著者 ケヴィン・デイヴィーズ (著),中村 桂子 (監修),中村 友子 (訳)
2000年6月、ヒトゲノムの解読完了が発表された。米欧日6カ国の公的陣営に先んじて解読を成し遂げたセレーラ社の遺伝学者ベンターと、公的陣営の責任者コリンズ博士との対立を軸...
ゲノムを支配する者は誰か クレイグ・ベンターとヒトゲノム解読競争
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商品説明
2000年6月、ヒトゲノムの解読完了が発表された。米欧日6カ国の公的陣営に先んじて解読を成し遂げたセレーラ社の遺伝学者ベンターと、公的陣営の責任者コリンズ博士との対立を軸に、熾烈を極めた競争の全貌を再現する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
ケヴィン・デイヴィーズ
- 略歴
- 〈デイヴィーズ〉ロンドン生まれ。科学ジャーナリスト。オクスフォード大学で生化学を専攻し、遺伝学で博士号を取得。邦訳書に「乳ガン遺伝子をつきとめろ!」がある。
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紙の本
ヒトゲノム解読に魅せられた研究者たちの熾烈な戦い
2001/09/03 22:16
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投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る
学生の頃、生物の教科書にはワトソンとクリックが発見した、DNAの塩基配列が二重に螺旋構造をもっている事実が載っていた。ヒトが22対プラス1の染色体をもっている事実も、小さなくねくねした染色体の写真とともに書かれていた。そうしたDNAの螺旋構造や染色体の写真を見るたびに、よく思ったことがある。それは「自分のはどうなってるんだろう」ということだ。いまから考えてみれば、自分と他人には身体的な違いがあるのに、染色体にはその違いが映し出されないのだろうかと気になっていたのかもしれない。
そんなかわいい疑問を感じていた頃から、生物学はものすごく進歩した。ヒトの遺伝子の数は、およそ3万1000ほど。染色体の1つ1つにそのDNAが驚くほど綿密な地図を描いている。DNAそれぞれには働きがあり、その変異具合で将来罹る病気も特定することができるようになった。それも、これらDNAを介してわかる事実は、人類に99.9%共通するものなのだ。もちろん、DNAの変異が病気の唯一の原因であるはずはない。ほとんど同じDNA配列をもっている双子であっても、環境によって病気を発現する兄とそうでない弟がいるのだから。けれど、その環境要因を差し引けば、人間1人1人の将来的な死因がDNAを解読すればおおよそわかってしまう。そういうところまで現在科学はおぼろげながらも確実に到達してしまっている。
将来自分や家族がどんな病気になる可能性があるのかを知りたい。このどうにも抑えようのない欲望は誰でも持っているだろう。それにDNAの解読が完全になされさえすれば、いままで難病だと言われてしまえば治療法がないとされていた病気にも、遺伝子治療という新たな治療法が見つかるかもしれない。しかし、その新たな発見は、いくら人助けになるとはいえ、純粋なボランティアの結果、生まれてくるものではない。その背景では解読の成功と失敗をめぐって、医学領域や製薬会社を中心にして莫大な金が動く。だから解読は必然、競争となる。
著者は雑誌『ネイチャー・ジェネティクス』の編集長。DNA解読をめぐる競争を知り尽くしている人物である。本書の主人公は2人。1人は、米国国立衛生研究所(NIH)の所長であるフランシス・コリンズ。もう1人は、NIHを飛び出し、タイガーという私立研究所とセレーラというベンチャー企業研究所を設立したクレイグ・ベンター。両者は対照的である。コリンズはごく一部のDNA特定を除いて、DNA解読は研究者に公開すべきだとする。国立の研究所の使命を体現した主張をもっている。ベンターは、自らの研究所が解読したDNA特定についてはすべて特許化したい。ベンチャー企業研究所を強大にするためには手段を選ばないところがある。本書は彼らの熾烈な戦いぶりを、するどいタッチで詳細に描いている。競争相手の、掲載されることが決定している論文を差し押さえて、その間に自分も論文を執筆し、同時に掲載してもらう、などといったことも当たり前のように行われる。共同研究者の大学院生がデタラメなデータを入力していたこともあった。
本書は下手なミステリーを読むより、遙かに面白い。と同時に、寒気もしてくる。DNAは一体誰のものなのだろう。DNA解読からわかることは何なのだろうか。何より私たち1人1人が正しい知識をもって、判断していくことが重要だ。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2001.09.04)