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私が西日本で一番尊敬している女の人がいつの間にかプロデビューしてました。(本当にファンか…?)
読後感想:「核弾頭がきた…。」
ブッ殺されました。この方の書く物語には、恋情を抱く二人の世界がどこまでも内に向って閉じていくという甘やかさがあります。今回はその辺が彼女にしては希薄だったので、☆4つです。
でもね、でも、でもね、ブッ殺されました。あんまり恐ろしいから、誰にも見つからない場所に隠してしまいたい。
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いやー、いい小説でした。
すごく好きです。
淡々と流れる日常の中に、ユルリと溶ける非日常の数々、そのバランスが素晴らしい。
言葉遣いもすごくいいです。
たどたどしさが逆に私にはとてもよかった。
でも小説慣れしてる人にとっては読み難いのかも。
原題は「マンイーター」だったらしいですが、
単行本化のこのタイトルの方が秀逸かと。
終わり方もよかった。
このタイトルがドーンと響くんですよねー。
処女作なのかな?
次作を心待ちにしたいと思います。
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『カソウスキの行方』と比べると重みのある作品だった。
公務員に内定し卒論のテーマも決まっている、ごく「普通」の大学生の「わたし」。ちょっと変わった子と目されている点は「ポチョムキン」なだけ、と思えたが。
読み終わると冒頭部分とつながって、全体がずしんとくる。それぞれの若者が心に抱えているものの重さが響いて……。
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言葉に混乱する自分が居る。津村記久子の紡ぐ言葉は、回りくどく、人間の持つ明るい側面を決して見ようともしない視線で埋め尽くされているようではあるけれど、混乱させられつつも力強く胃の直ぐ上辺りにある何かをグッと捉まれる感覚を引き起こす。ああきっと自分はこの作家のことが好きなのだなと思う。そして、何か既視感に似た感覚も同時に沸き起こる。
読み終えて、その幻影のようなものの源がサリンジャーの「ライ麦畑」であることに、ようよう気付いた。この主人公はホールデンなのだ。
「The Catcher in the Rye」を「ライ麦畑でつかまえて」と訳してしまうと、多分に受動的な響きが勝ってしまうけれども、ホールデンのいうキャッチャーは、ライ麦の背の高さにも負けてしまう子供たちを、崖から落ちてしまわないようにすばやく捕まえる人のコトで、むしろ能動的な響きがある。かと言ってその守護天使のような意味合いでホールデンが能動的に行動するような場面は殆ど描かれていないのではあるけれど、確かに彼はキャッチャーとして何かを積極的に待ち続けているのではあった。
「君は永遠にそいつらより若い」の主人公も何を待っているのかはっきりしないままに、その時が訪れるのを待っている。もっと踏み込んで言うならば、冷たい雨の中で。そして気付く、自分が守ろうとしているものが余りにもたくさん回りに存在していることに。何人もの子供たちが彼女の目の前で、差し出した手の先をするりとかすめて崖に向かって走り去り、落ちていく、それを見送り続けた後で。
一人の子供をしっかりとキャッチし、それによって自分の行き先が徐々に定まってくるというエピソードは、キャッチャー・イン・ザ・ライの構図に気付いてみると、仮に描かれなかったとしてもよいのかも知れない。それなしでも津村記久子の言いたかったことはこの小説の中で成立していただろうと思うのである。もちろん、そのエピソードが挿入されることで、エピローグにあざやかな晴天が待っているわけではあるけれども。そしてその鮮やかさに、主人公が好きになり始めているという自覚の後では、つっと涙が流れるのを抑えることができない。
津村記久子、大した作家です。
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「婚礼、葬礼、その他」があまり好みじゃなかったので期待してなかったのだけど…。こちらは面白い!先にこっち読んでたら、作者に対する印象もずいぶん変わっただろうな。
自分の大学時代にとても似ていて、時おりフラッシュバックに見舞われながら読んだ。焦燥感が空回りして自分を茶化すあたりがいたたまれない。身につまされる。わたしはこういう、淡々と努めているように見えてその実、内に秘めたる衝動が見え隠れしてしまうような荒々しい筆が好きなのだ。
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第140回芥川賞を受賞された津村さんのデビュー作。
初めて書かれた小説で第21回太宰治賞を受賞されました。
うーん、すごい。
面白かったです。
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就職先が決まって卒業するまでの2,3ヶ月をだらだらと、でも彼女なりに真面目に過ごす話。
彼女の周りでは大学生にありがちな出来事が時々起こりますが、彼女自身がぐいぐいと物語を引っ張って行くようなタイプではなく、また本人もそれを自覚しているので焦燥感もなく、読んでる側もすんなり同調する事が出来るような・・・
学生企業家のような友人とその彼女、バイト先での上司と後輩、飲み会で一度会っただけの好きな人
読み始めは主人公が好きになれず、正直あまり好きな話ではなかった
でも、後半の緩やかな加速は良かった。終わり方も悪くない、と思う。
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就職も決まり大学卒業を間近に控えた主人公が、バイトや学校や下宿を行き来し、友人やバイト仲間と残りの学生生活を過ごしていく物語です。
コンプレックスや過去のトラウマを抱えた登場人物が重なったり離れたりしながら、孤独や悲しみと静かに向き合います。
緩くて繊細な文章で、主人公のどこか冷めていてけだるい目線が表現されています。
また、冒頭に時系列としてはラストにつながる場面が描かれており、それから過去に遡り一つ一つのエピソードがつながっていきます。
物語がどのように流れていくのかと引き込まれてしまいました。
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こちらも読みました。
心にざらざらしたものが残りますなぁ。
うまく生きていけないと思う時に読むとホントへこむと思う。
実際私はへこみましたから。
最後を救いとするのかどうか、それが問題かも。
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はじまりは、何のことだ?話しが見えない・・って感じだったが、主人公の
キャラがなんか読ませる。そして・・・最後になって、タイトルが浮かび上がってくる。怒りを含んだタイトルなんだ。
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身長175センチ、22歳、処女いや、「女の童貞」と呼んでほしい、就職が決まった大学四年生のホリガイ。
だるい日常の底に潜む、うっすらとした、だが、すぐそこにある悪意。そしてかすかな希望…?
という第21回太宰治賞受賞作。
前半はホリガイの頭のなかを覗き込むように、そのフィルターを通してまわりの友人たちとの日常を描き、
ちょっと退屈なテイスト。興味深く、でも淡々と、自己結論が得意で、自分では気を使うと思っている、そんなホリガイ。
まわりの人物も。品のない小金持ち、ギャル、気の弱い善人、気のいい馬鹿、だるそうに見えて気概のある女の子、闇に飲まれた人など。
ただ後半になって、リストカットや虐待、誘拐、自殺、レイプなどなど負の要素がぶわっと。
普通に生きている人の過去にはいろいろな要素が隠れている。ただそれを意識するかしないかの差なのかもしれない。
残虐な要素が、ホリガイを通してフラットに描かれることで、ただ可哀相とか怖いということではなく
奇妙なもの・そぐわないものとしての違和感で伝わってくる。
うー、違和感。
ホリガイはナチュラルに自分を持ってて、強くて。
社会人になりイノギさんを思って生まれたその確信的な強さが
物語の結末をかすかな希望へと導いてくれているのかなと思った。
印象的なセリフ
「あなたたちは、助け合って支えあって生きていて、それでいいじゃないか。なぜギャラリーがいる?」的なもの。
そうか。人生にギャラリーなんていらないんだな。
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全体的にとても好き。だけど、一部この描写は必要なのかと思っちゃうところが・・・たとえるなら嶽本野ばら作品のえろいシーン的な、ね。
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「カソウスキの行方」で惚れて、「ポトスライムの舟」でこき下ろし、もう読まない、と思ってたのにタイトルに惹かれてまた読んだ。そして良かった。人間のメンドくささとか、うざったさとか、そういう処を秀逸なユーモアを交えて人物を描いているのが魅力的。ポチョムキンな女の童貞のホリガイさんが魅力的だもの。辛くて苦しい物語だけど救いがあってよかった。
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「河北がいなければアスミちゃんと出会うこともなく、吉崎君が河北ともめていなければ、わたしはアスミちゃんを部屋に連れ帰ることもなかった。アスミちゃんがいなければイノギさんに声をかけることもなかっただろうし、ヤスオカがうちにこなければ、イノギさんがあのことを切り出したかどうかわからない。穂峰君がまだ生きていれば、わたしは今頃イノギさんといっしょにいたのかもしれない。少なくとも、疎遠になってしまうことはなかったのかもしれない。逆に会うこともなかったのかもしれない。」
地味・不真面目(のちに真面目に)・変わっているという
ステータスをもつわたしが彼らと出会い別れるまで。
タイトルがずーっと気になってて
でも毎回他に借りたい本がいっぱいあったから先送りしていた本です。
全部読み終わってからこのざっとした因果関係を読むと納得。
なんだか変な人がいっぱい出てきます。
基本的に大学生の話なんだけれどその割りに悩みが青い。
ヤスオカの子供っぽさと河北の中二っぽさは特に。
イノギさんはアングラな感じかと思っていたので
女の子たちとけらけら笑っている姿はあまり想像できないなぁ。
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前回読んだ、『ミュージック・ブレス・ユー!!』から2年ぶりの津村作品だった。面白い、久しぶりのヒットだ。素直にそう感じた。それは文体の理屈っぽさを補うように巧く主人公の言葉が入っているからかもしれない。関西弁の脂っこさと柔らかさがきれいに調和されている。
ホリガイの無防備が過ぎるとも感じさせる性格の穏やかさが痛々しくて、そして優しい。こんなコがいたら絶対に付き合いたくなるだろうとも思う。私が背中を撫でるよ。
最初から何も期待していないところがホリガイの優しさ全部だ。