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紙の本
江戸260年、太平の末の緩さにつけこんだ不良御家人の好き勝手ぶりが微笑ましい。
2012/03/05 18:40
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は幕末。
役人は増えすぎ余りすぎ。
景気も悪く指揮する仕事もない。
したがって最低の給金だけ。
小普請の主人公・桃園彦次郎もその例に漏れない。
暇だからと始めたのは、空き家の女郎屋を改造した道場。
ところがこの幕末、道場に通うのはもっぱら町人の子供という時代。
だから道場は、その辺の託児所状態なのだ。
そんな設定のこの本は、桃園彦次郎の不良御家人ぶりが炸裂しているユーモラスなマンガ。
暇を持て余した幕末の平和な雰囲気がぷんぷん匂ってくる。
この彦次郎、不良御家人なのだが弱いから喧嘩はしない。
もっぱら誰かにたかって、ただ酒を飲んでいる。
「おーい千造」
「これは旦那、よい天気で」
「それだから一杯やろう」
「ありがたいですな」
「見たぜ。てめえ 今 祝儀せしめたろう」
などと言っては酒をたかる。
彦次郎と八丁堀与力・大恩寺浅之丞の関係も面白い。
この二人は幼馴染みで気心も知れている。
だから彦次郎は、浅之丞の人の好さにつけこんで、しばしばいたずらをする。
「うちのヤツが病気で心細がっているから、非番の折りにでも見舞ってやってくれないか」
と彦次郎。
彦次郎の妻『若菜さん』を慕う浅之丞の気持ちを知って知らずか。
浅之城はさっそく見舞いの品を持って桃園家を訪れた。
彦次郎は妻に声をかける。
「大恩寺がハチ(飼犬の名)の見舞いにきてくれたぞ」
ハチはしっぽを振り回しながら浅之丞の顔を舐めまくるのであった。
ところでこのマンガは、ほとんどオチがない。
それでも面白いのは、彦次郎の好き勝手ぶりで進む話が純粋に楽しいからだろう。
またオチのない楽しい話は、オチなどない日常の中に湧いたおもしろ話という感覚があって、『ははは』と何気なく笑ってしまうような気楽な笑いを誘ってくれる。
江戸260年、太平の末の緩さにつけこんだ彦次郎の好き勝手ぶりが、この時代の大らかさを感じさせるのも、微笑ましい。
巻末の対談も良かった。
彦次郎が道場を構えた蒟蒻島は実際にあって、その由来とか、歌舞伎や江戸の読み本は起承転結の結がないこととか。
そんな江戸の豆知識に触れて、もっと江戸を知りたくなった。
紙の本
面白痛快・杉浦劇場
2002/02/16 16:07
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸・蒟蒻島にある「真武館」というオンボロ道場の主・桃園彦次郎は、「とんでもねえ野郎」である。借金踏み倒し、無銭飲食、女遊び、……悪びれもせず、日々やりたい放題に生きる。しかし彼の妻・若菜は、いつも明るく朗らか。養子で新参与力の大恩寺浅之丞は、人の好い性格で、いつも彦次郎の被害に遭う……。
ギャグ漫画でも本当に面白いものは少ないが、この漫画はとにかく面白く、笑える。作者は恐らくギャグ漫画を描こうと思ったわけではないだろう。何も考えずに、計算せずに生まれた傑作なのだ。
個人的に大恩寺浅之丞が好きだ。彦次郎のせいで、新しい刀を折るハメになったり、風呂に入れられて着物を持ち逃げされたり、野良犬をあてがわれたり……自分の生活だけでも気苦労が多い中で、彼はとにかく不幸である。そこが可哀想で可愛い。