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商品説明
岩波文庫の表紙の2粒のブドウはどこへ行った? オビを説き、カバーにほおずりし、中身のすみずみ、奥付、検印まで味わいつくし、嘉みつくす。文庫あそびの奥は深いゾ!【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
岡崎 武志
- 略歴
- 〈岡崎武志〉1957年大阪府生まれ。立命館大学卒業。フリーライター・編集者。本を中心としたミニコミ誌『スムース』を自主制作する。著書に「古本屋さんの謎」「古本めぐりはやめられない」など。
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紙の本
文庫の森に分けて入り解説目録を解体し、ブック・カバーの歴史を考察する。文庫好きによる文庫好きのための
2000/07/10 20:49
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投稿者:杉田宏樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
バッグの中に入れておいて、通勤途中の電車内や、ちょっとした空き時間に手軽に読めるのが文庫の魅力である。単行本に比べれば値段が安いし、大きさも手のひらサイズで扱いやすい。書籍代を惜しまないような読書家とは正反対の人々にとっても、文庫は身近な存在でありあるはずだ。ほぼA6判という同一規格に定め、毎月大量の新刊が発売され、それを多くの読者が支えているという、世界的に見ても稀な日本の文庫事情は、単に読むためのものとしての本にとどまらず、様々な角度から研究する意味と価値を生んでいる。
好評を博した2年前の前著に続くこの第2弾は、サブタイトルに「文庫王のごひいき文庫ものがたり」とある通り、詳細が不明な戦前のマイナー文庫から、斯界の代表格の新潮、岩波といったメジャー系まで、著者の嗜好の赴くままに多彩なテーマを掲げて、小さな本に広がる魅力的な世界を紹介してくれる。4ページのカラー口絵は、文庫好きにとってたまらないものがあるのだろうが、ぼくが好感を抱いたのは、本文に多数のブック・カバーを収録し、脚注でもいくつかの発見があることだ。
一昔前までは単行本の廉価版程度の認識が一般的だった文庫に関して、本書のような研究書(といってもこれはとても親しみ易い造りです)が世に出て、文庫に古書と同じ価値が生じたのは、80年代半ば頃だったか。サンリオSF文庫廃刊のあおりを受け、フィリップ・K・ディック、ル・グイン、アントニイ・バージェス等の人気作家が、入手困難になり、市場価格が一気に高騰したのである。その少し前、ぼくは神田の三省堂書店に勤務する若手書店員で、サンリオ文庫の担当者だった。当時の感覚からすると、ついこの前まで定価で売っていた文庫にプレミアが付くなんて信じられない思いがした。15年前のあの頃から少しづつ現れてはいたが、文庫の絶版の多さも、本好きに言わせれば困った問題だ。ちくま文庫の場合、総発行点数1,700点のうち約1/4の五百数十点が品切れ扱いだという。売り上げに基づくシビアな決断もあるし、A社の目録から落ちた著作を、B社が文庫化する内田百間の例もあるので、このあたりのバランスは難しいかもしれないが。
講談社文庫が史上初めて、背表紙に著者名をトップに持ってきた、旺文社文庫が親本の挿絵を積極的に使用した、群ようこ・著『ホンの本音』は出版史でも異例な、同一本における写植と活版の併用という快挙がなされた、殿山泰司、村松友視、末井昭の角川文庫作が現在ちくま文庫に流れている、筒井康隆『ジャズ小説』(文春文庫)の山下洋輔解説は異例の400字65枚、表紙+背+裏表紙が三位一体となった“絵羽カバー”は昭和40年代あたりまでの新潮文庫に多い−−等々、本書で指摘された文庫にまつわる蘊蓄は、以前商品として扱っていたぼくにとっても、初めて知る話が少なくない。装丁デザイナーに対する著者の並々ならぬ思い入れにも、共感を覚える。 (bk1ブックナビゲーター:杉田宏樹/音楽評論家 2000.7.11)