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- カテゴリ:一般
- 発行年月:2005.10
- 出版社: 国書刊行会
- サイズ:20cm/406p
- 利用対象:一般
- ISBN:4-336-04503-8
- 国内送料無料
紙の本
天の声 (スタニスワフ・レムコレクション)
著者 スタニスワフ・レム (著),深見 弾 (訳),沼野 充義 (訳),吉上 昭三 (訳)
ニュートリノによって送られてきた謎の信号を読み解く冷戦下の科学者たちの生態を描く「天の声」と、ナポリで起きた中年男の連続怪死事件をめぐる確率論的ミステリ「枯草熱」を収録。...
天の声 (スタニスワフ・レムコレクション)
紙の本 |
セット商品 |
- 税込価格:17,600円(160pt)
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商品説明
ニュートリノによって送られてきた謎の信号を読み解く冷戦下の科学者たちの生態を描く「天の声」と、ナポリで起きた中年男の連続怪死事件をめぐる確率論的ミステリ「枯草熱」を収録。サンリオSF文庫に収録された長篇の復刊。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
スタニスワフ・レム
- 略歴
- 〈スタニスワフ・レム〉1921年旧ポーランド領ルヴフ生まれ。ヤギェウォ大学で医学を学ぶ。「金星応答なし」で作家デビュー。小説から離れた現在も独自の視点から科学・文明を分析。著書に「ソラリス」他。
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紙の本
SF小説という枠を完全に超越してしまった、偉大なる作家の傑作。
2009/07/19 22:44
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:反形而上学者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
多くのSF小説ファンが、名前を聞くだけで敬遠してしまう作家、それが、スタニスワフ・レムではないであろうか。
レムの最も有名な作品となると、いわゆる「三部作」の中の『ソラリス』であろう。二度も有名な監督によって映画化されているし、いわばレムの代名詞的作品といえよう。
本書に掲載されている2編は、「三部作」よりも後に書かれ、レム自身も小説という表現形態を棄てようと考えていた時期に当たる。そして、ここでの2編は非常に対照的な作品であると言えるだろう。
『天の声』は簡単にいうと、宇宙からの微弱な電波を捉えて、地球外生命体からの発信されたと思われる電波を分析していくという内容である。しかし、小説としての物語性はかなり希薄で、主人公である研究者の回想という形も手伝って、極めて思弁的・哲学的な内容になっている。そういう意味では、読者にとってはかなり読み進めるのが困難な作品かもしれない。
1983年のニューヨークタイムズ紙によるインタビューにレムはこう答えている。
質問「『天の声』の語り手、ピーター・ホガースは、あなたご自身の視点を体現しているのですか?」
レム「ええ、ホガースは僕です。あの作品ほど主人公と全的に、擬装もせずに一体化したことは、ありませんでした。」
研究者であるホガースは、作品中でかなり哲学的な意見を言うが、それは全てレムの思想であったわけである。
さて、もうひとつの作品『枯草熱』は、元宇宙飛行士である主人公が同様に発生した原因不明のいくつかの死亡事件の調査依頼を受けて、ある死亡者と同じルートを辿る生活を再現してみるが、最後には驚くべき結末が待っていた・・・という、一転して読み始めると止らないようなミステリー調の小説である。
このように対照的な2作品であるが、非常に作品レベルの高い小説と言えよう。
ちなみに、レムは1980年代にノーベル文学賞の最有力候補として、最後まで選考委員たちの議論を呼んだが、けっきょく惜しくも受賞を逃した。まことに残念なことだった。
このノーベル文学賞レベルの作家の小説を、ぜひとも多くの人に読んでもらいたものである。
紙の本
二篇を収録。
2024/02/04 06:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:L療法 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『天の声』
レムによる架空の書物。
偶然見出された、ノイズの中の規則性、それは意味を有してると考えられた。
これは一方通行ながらファースト・コンタクトかもしれない。
多数の研究者が集められ、核実験場跡地で、探究が始まる。
この話、枚数的には全く違うのだが、ある日本のショートショートを連想してしまう。
猿が夢中になってたあるものに、人類が気がついてって話。
小松左京だったかな。
最終的着地点は全く違うものの、大筋は一緒だろう。
架空の書物にして、レムの関心事を綴ったエッセイ、そう捉えていいと思う。
実際問題として、「小説」を期待して読むと、膨大な思考の積み重ねに圧倒されるんじゃないかと思う。物語的には、ショートショートに収まるものを、ディティールを描きこむことで長編にしている。
このディテールこそが、レムの描きたかったこと、あるいは、退屈を紛らわすお遊びなのではないか。
『枯草熱』
こそうねつ、と読む。
プロローグというか、冒頭の二章くらいは、本題に入る前の導入部分として不必要に長いのではないか。
もしかすると、ミステリーや謀略小説のパロディなのかもしれないが、本題らしきものに入っても、冒頭は半分以下の長さで良かったのではないかって気持ちが拭えない。
ひょっとしてハズレなのかなと思いつつ、本題らしきものに入ると、どうにか面白くなってくる。
しかし、確率論的ミステリって紹介するとほとんどネタバラシじゃないのかな。
紙の本
天の声をはじめとするあらゆるものごとに対する考察だけでできている小説と新本格ミステリのカップリング
2005/12/03 21:29
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『天の声』
「マスターズ・ヴォイス計画は、いわゆる〈星からのメッセージ〉と称されるものの全面的な研究であり、それと同時にその解読の試みでもある。」
亡くなった数学者が書き記した、その顛末というのが本書です。まずは編者による序文。そして数学者による序文。ようやく本文に入ってからも、何章にもわたって思弁的な文章が続き、ようやくストーリーの本題に入るのが、上に引用した第五章です。
ようやく、といってもそれ以前がつまらないということはなく、語り手の数学者はなかなかに哲学者でありかつ名言家です。
たとえばこう。「たいていの者は、さんざん追従を聞かされたらだれだってよろこんで飲みくだすものだと思っている。(中略)ほめることができるのは——それを言うためには——上から下へであって、下から上へむかってではない。」
あるいは——「懐疑主義とは、とめどなく顕微鏡の倍率を上げていくのに似ている。つまり最初は鮮明だった像も、しまいにはぼやけてしまう。極限まで小さい対象は見ることができないからだ。それが存在することはただ推測するしかない。」(※これなどは『枯草熱』にも同じような表現が使われていたことからすると、レムお気に入りのレトリックだったのでしょうか。)
第五章からも波瀾万丈のスペクタクルが展開するわけではありませんが、理詰めで進められるメッセージ解読の様子はけっこうスリリングでわくわくしました。
全編思弁的な語りで占められているので、解説者の方も書かれているとおり、「小説としてはややとっつきにくい印象を与える」のは事実でしょう。『ソラリス』には少なくとも「海」が存在していましたが、本書に登場する〈天の声〉のは果たしてメッセージなのかどうかも不明——単なる雑音かもしれない——というところからスタートします。仮説に仮説を重ねる推理合戦みたいなもので、いわば架空の科学的事件に対する科学的アプローチの顛末が、SF的ストーリーとは切り離されて純粋に楽しめるわけで、論理好きや思弁好きにとってはおいしいとこ取りと言えなくもありません。
宇宙からのメッセージというSF的ガジェットを通して、最終的には人間の存在についての考察にまで至ってしまう論考は読みごたえがありました。なにぶん老学者の一人称ゆえ、ところどころで長い独り言を聞いているみたいに感じてめげそうにはなりましたが。
『枯草熱』
こちらの方が万人向けです。不可解な謎に対する科学的アプローチという基本構造自体は二作に共通しているのですが、こちらの方がストレート。『天の声』の語り手はかなり饒舌なので、あっちこっちで脇道に逸れる嫌いがあります。脇道、といってもそれは「天の声の謎」→「解決」というラインを想定した場合の脇道であって、思弁部分こそが著者の書きたかったことだと捉えれば脇道でもなんでもないんですが。実際、その「脇道」部分が面白かったりもするわけですし。
それはともかくこの『枯草熱』にはその「脇道」部分がないので、難しいことを考えずともぐんぐん読めるミステリとしても楽しめます。『ブレードランナー』とか『12モンキーズ』(『ラ・ジュテ』)みたいな雰囲気のハードボイルド・サスペンス・タッチでスタートし、やがてロジックの冴え渡る本格ミステリに。中年男の連続怪死事件に潜むミッシング・リンクとは?
「確率論的ミステリ」などというといかにも難しそうに聞こえますが、なんのことはない、新本格ミステリを読み慣れている方なら何の障害もなく楽しめるでしょう。というか、著者や作品に対する何の前知識もないまま本作を読めば、これは間違いなく新本格ミステリです。時代がようやくレムに追いついた、ということでしょうか。けっこうバカミスでもあります。