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紙の本
解析演習 (基礎数学)
著者 杉浦 光夫 (ほか著)
どうしたら微積分の問題が解けるか。数列と極限、微分法、積分法(一変数・多変数)について、基本的な定義と定理を記し、例題をあげて問題の解きかたをていねいに説明する。実力をつ...
解析演習 (基礎数学)
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商品説明
どうしたら微積分の問題が解けるか。数列と極限、微分法、積分法(一変数・多変数)について、基本的な定義と定理を記し、例題をあげて問題の解きかたをていねいに説明する。実力をつけられるよう問題とその解答も掲載。【「TRC MARC」の商品解説】
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紙の本
ひ手元に置いてみてほしい演習書
2019/07/20 05:34
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:類太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書が他の解析学の演習書と異なっており良いと思われる点は,
1.実数論を抜かしていないこと
2.関数と関数の定義域の位相的概念を明確にしていること
3.幾何学や物理学および確率・統計や多変数複素解析など他分野とのつながりや発展的な分野とのつながりを意識していること
4.数学を理論的に学ぶ際にも数学を道具として使用する際にも役立つこと
であろう.
1.については決定的である. 解析学の基礎は実数論にありながら, 最近では講義や教科書でも軽視または省略されることが多くなったからであり, また実数論を学ぶ際に本書が参考になるからである. 特にユークリッド空間の位相については位相空間論を学ぶ前に「解析入門1」と合わせて読んでおくと後々理解の助けになる上に多変数関数の微分積分にもつながる. 演習書なので読者が取り組みたい内容を取捨選択しやすいのも良い.
2.について. 簡単に書かれた微分積分の本では, 例えば偏微分が基本的に開集合上で定義されていることや積分が基本的に閉集合で定義されていることを曖昧にしている上に, 位相的な関数の性質は殆んど省略されてしまっている. しかし本書では微分法や積分法そして関数の位相的性質を明確にしているため, 内容を安心して理解し利用することができる.
3.について. 他分野とのつながりや発展的な分野とのつながりを常に明確にしている. これは数学を学ぶ意欲の維持のために必須である. 本書では他分野に特別な予備知識がなくとも理解できるよう記述が工夫されている. 例えばユークリッド空間の多様体の定義では, 多様体の本来の定義をより直観的にわかりやすくするため, 座標近傍の定義と局所座標系の定義が「解析入門2」に沿うように言い換えられている. また物理学的な例も直観的に理解しやすい. そして多変数複素関数の正則性の定義ではハルトークスの正則性定理の結論を定義として採用することで, 多変数複素関数の正則性に関する深い考察をしなくて済むようにしている.
4.について. 本書は数学的厳密性を或る程度保ちつつも本書の公式や定理を実際に利用する時に役立つ説明や利用しやすい形に述べた物もあり, 解析学を理論的に学ぶ時も道具として使いたい時も本書は重宝するであろう.
記号の使い方に統一性がなかったり, 位相の用語が初学者にはわかりづらいであろう. 以下に解説を書いておくので参照されたい. このような欠点はあれど本書は何かと参考になるのでぜひ手元に置いてみてほしい. このレビューも参考になれば幸いである.
まず最初の章では集合 A, B に対してAとBの差集合(Aの要素でBの要素でない物から成る集合)
A\B=A−B={x∈A|¬(x∈B)}
をA/Bと書いている. 特にR^nにおけるA⊆R^nの補集合をR^n/Aと書いている. しかし後の章では上記の記号が使われている.
Aの閉包の定義が
「R^nにおけるAの補集合R^n/Aの開核
(R^n/A)°
のR^nにおける補集合
R^n/((R^n/A)°)」
となっているが, 初学者にはこれがAを含む閉集合であることは自明でないと思う. これがAを含む閉集合であることは閉集合の定義と
(R^n/A)°⊆R^n/A および 二重否定の法則
による. 閉包の同値な定義として閉包の定義の直前に述べられているR^nの部分集合Aが閉集合であるための必要充分条件「Aの点から成る任意の点列がAの点に収束すること」を利用して「Aと, Aの点から成る任意の点列の極限点全体の集合A'を合わせた集合A∪A'をAの閉包という」と読み直すと良いであろう. 実際, 位相空間論においてこれらの閉包の定義は同値である.