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商品説明
【サントリー学芸賞(第22回)】現代科学論による科学批判と科学者との間の激しい論争「サイエンス・ウォーズ」の経緯と、その学問的背景となる1970年代以降の科学論の動向を鳥瞰。科学と現代社会、その文化政治学を分析する。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
金森 修
- 略歴
- 〈金森修〉1954年札幌市生まれ。パリ第1大学哲学博士号取得。東京大学大学院博士課程満期退学(比較文学・比較文化)。現在、東京水産大学教授。著書に「フランス科学認識論の系譜」がある。
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紙の本
物理学者と科学論者の論争が,科学の世界の価値観を揺るがす
2000/11/01 12:15
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投稿者:薮 健一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
歴史は偶然。クレオパトラの鼻が低ければ歴史は変わっていたかもしれないという例と同じことが,サイエンス・ウォーズでは起こった。アラン・ソーカルという米国の物理学者が,「ソーシアル・テクスト」という科学論者を中心とする文系の雑誌に偽論文を投稿し,それがでたらめだと後でばらすという行動に出た。これが科学者と科学論者(社会学や哲学の立場から科学を論じる学者)の論争の火蓋を切った。1996年春のことだ。
ソーカルがこのような行動に出なければ,またソーシアル・テクストがこの論文を受け付けなければ,そして,ソーカルが偽論文だとばらさなければこのような騒ぎにはならなかったかもしれない。とにかく,これを機に「サイエンス・ウォーズ」という言葉は,ここ3〜4年科学界を賑わせてきた。日本の著名な生物学者がこの言葉を「科学戦争」とすべきだと主張していたほどだから,日本でも多くの科学者が気にかけていたのではないだろうか。
ただし,このような騒ぎになったのにはそれなりの背景がある。米国の科学者には,科学論者が科学批判を長年続けているのをおもしろくないと思っている向きもあるようだ。また,科学論者のポストが大学で増え,物理系の科学者のポストが圧迫されていると感じている学者もいるようだ。本書はこうした背景を含めて,一体サイエンス・ウォーズとは何だったのかを解き明かそうとしている。
ソーシアル・テクストはいわゆるポストモダンの雰囲気が漂う雑誌らしい。1980年代に非線形のカオスやフラクタルが世に出始めた時に,日常的な現象を解き明かす手法として社会科学にも非線形の科学はよく転用された。そうした動きの一部が行き過ぎだと科学者側は主張する。
本書は科学者と科学論者の対立を単に描くのではなく,今,科学の状況はどうなっているのかをじっくり考え直す機会も与えてくれる。
(C) ブッククレビュー社 2000