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紙の本
ローマ人の物語 9 賢帝の世紀
著者 塩野 七生 (著)
【新風賞(第41回)】ローマに輝ける世紀をもたらしたトライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの三皇帝。彼等はなぜ「賢帝」たりえたのか。傑出した三者の人物像を浮き彫...
ローマ人の物語 9 賢帝の世紀
賢帝の世紀──ローマ人の物語[電子版]IX
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商品説明
【新風賞(第41回)】ローマに輝ける世紀をもたらしたトライアヌス、ハドリアヌス、アントニヌス・ピウスの三皇帝。彼等はなぜ「賢帝」たりえたのか。傑出した三者の人物像を浮き彫りにし、その統治の秘密を説き明かす。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
塩野 七生
- 略歴
- 〈塩野七生〉1937年東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。「ルネサンスの女たち」でデビュー、70年以降イタリア在住。著書に「海の都の物語」「わが友マキアヴェッリ」など。
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紙の本
平和についての透徹した視点
2007/08/22 15:57
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
『ローマ人の物語』もいよいよ、ローマ帝国の最盛期にして「人類が最も幸福であった時代」(ギボン)、すなわち五賢帝時代に突入する。しかし、本巻の目次を見てだれもが気づき、不思議に思うだろう。ここで扱われているのは、五賢帝の最初の三人、ネルヴァ、トライアヌス、ハドリアヌスだけである。残りの二人、アントニヌス・ピウスと賢帝中の賢帝マルクス・アウレリウスはどうしたのか?
『賢帝の世紀』と名づけた本巻に、作者の塩野がこの二人の皇帝についての記述を入れず、一巻はさんだ次の巻(第11巻)にそれを移したのはなぜか?私はこのような構成を、「平和とは何か」に関する透徹した視点の表れと見なしたい。すなわちそれは、平和とは決して手放しで得られるものではなく、不断の努力によって勝ちとられるものという視点である。
次皇帝への橋渡しをしっかり行った点においてのみ賢帝の名に値するネルヴァは別として、トライアヌス、ハドリアヌス両皇帝は、平和の中にあっても常に国家の防衛という皇帝にとって最大の責務の一つ(その他の責務は国民の食と安全)を怠らず、治世のほとんどを外征、帝国防衛線(リメス)の強化、視察に費やした。殊にハドリアヌスは、その在任中に大きな外憂は存在しなかったものの、常に各地の軍隊を回り、補強すべき箇所があれば直ちに補強させていた。(ハドリアヌス城壁はその典型。)
その一方で、彼らの私生活にはどちらも美少年たちの影がつきまとったが、ギリシア人とは異なり男色を嫌悪するローマ人には、これらがスキャンダラスにとらえられる。またハドリアヌスは晩年、頑固になり、その奇妙な振る舞いから民衆に嫌われる。死後は、あやうくカリグラ、ネロ、ドミナティウスに続く記録抹殺刑に処せられるところを、アントニヌス・ピウスの懇願でそれをまぬがれた。
彼らに続くアントニヌス・ピウスとマルクス・アウレリウスは、ともに内政を立派にこなし、ローマに善政をほどこし国民から愛された。「ピウス(敬虔なる)」というあだ名からもわかる温厚なアントニヌス、哲人皇帝としても知られ知情意のバランスのとれた人格者マルクス。為政者としても人間としても申し分のない二人であったが、彼らが前二皇帝と大きく異なる点は、帝国防衛への取り組みであった。
アントニヌス・ピウスは皇帝在任中、ローマをほとんど離れず、帝国防衛線への視察などいっさい行わなかったという。またアントニヌスの婿養子であったマルクスも若い頃に、次期帝位が確約された身でありながら、各地の軍隊を回るなど辺境防衛の実際を学ぼうとはしなかった。親子としてローマ市内にいっしょに住み、多くの子と孫に恵まれた二人のマイホーム主義―自己の責任を果たしたうえでのもので非難すべき態度ではないが―その幸せのかげで彼らが怠っていたものがあるとすれば、それこそ帝国の防衛であり、マルクスが皇帝になった途端に辺境で生じた数々の動揺も、長い平和に安住したこのような怠慢に原因があったのではないか?
以上、アントニヌスとマルクスに関する議論は、本巻ではなく主に11巻でくりひろげられるものであるが、賢帝と一言でひっくるめられている五人の皇帝のあいだに一線を引き、国家防衛のありかたについて重大な示唆をあたえる塩野の歴史認識とその描写方法には、舌を巻くしかない。本書と第11巻とを読み、平和の時代における二種類の政治姿勢を比べてみることは、平和を享受して60年、「国防=戦争と暴力」としか考えられなくなった我が国の多くの国民にとって、国を守ることの意味を深く考えさせてくれることだろう。そういう点でこれらの二巻は、日本人必読の書!と断言したい。
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ローマ帝国の完成
2023/01/11 17:39
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
五賢帝時代のうち最初から三人の皇帝を扱っている。次の賢帝を確定させたというのが最大の功績であるネルヴァ 最大版図を実現させたトラヤヌス 帝国中を歩き回り続けたハドリアヌス と歴史上稀な皇帝に恵まれた世紀であったのだなと実感させられた。逆に物語としてはうまく行き過ぎてやや退屈になってしまいがちかもしれない。
成功が失敗の元 という格言を思い起こさせられる。成功したローマ帝国は、超人的なハドリアヌスの巡行によってのみ統治できるほど大きくなりすぎてしまった。
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多様な指導者と人材~ローマ帝国が教えてくる事
2021/09/28 23:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:司馬青史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
皇帝たちは、なぜ賢帝たりえたのか?
トライアヌス帝、ハドリアヌス帝、アントニヌス・ピウス帝はいずれも賢帝として誉れ高い。
ローマ帝国の黄金時代、五賢帝時代の皇帝であり、この三人の賢帝なくして、ローマ帝国の栄光はなかった。
しかし、三人は性格も違えば、政治姿勢も異なる。
トライアヌス帝は誠実にして、拡大路線を歩んだ至高の皇帝。
ハドリアヌス帝は複雑にして、帝国の現実を直視し続けた活力に満ちた皇帝。
アントニヌス・ピウス帝は仁愛にして、伝統・理念に忠実な倹約の皇帝。
そんな彼らが五賢帝時代を担い、ローマ帝国の黄金時代を築き上げた。
性格も違い、政治姿勢も異なる三人の皇帝は、なぜ賢帝たりえたのか?
ただ言えるのは、時代が三人の異なる皇帝を必要とした。
そして、ローマ帝国には時代が求める指導者を送り出す多様性があったという事だけである。
多様な指導者は、多様性のある環境の中でしか生まれず、育たない。
多様な指導者、人材なくして成長も発展もあり得ない。
三人の賢帝は性格も違えば、政治姿勢も異なる。
しかし、そんな多様な指導者を送り出せる事こそが、ローマ帝国の強さだった。
普遍帝国、ローマ帝国が持った強さを、現代に生きる私たちはは忘れてはならない。
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麻薬のような歴史書
2000/10/14 07:08
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジョウゼン - この投稿者のレビュー一覧を見る
毎年毎年待ちこがれるようになって早8年。今年もきちんと書き上げてくださった塩野さんに大感謝。それを出版しつづける出版社の精神にも拍手。
内容はというと、現代人にも通ずる人間心理をもった過去の人物たちが、今回もいろいろやってくれちゃって、それを読みこなすので一杯一杯。もうおなか一杯、何本も小説を読んだ気にさせられ、しかもそれらが実在の人物、しかも歴史的に名前を刻んだ人たちの「行い(物語)」であるというのが感動。
はっきりいってマンネリとも思えるところもありますが、「寅さん映画」と同じで、読者はこのマンネリこそ愛して止まない麻薬中毒のような状態です。
3000円の書籍代ですが、繰り返し読めるということと、いつまで経っても読み終わらない(読み終わらせたくない)読者にとっては適正価格といっていいでしょうね。
これが何年後かに文庫として出された暁には、いまの若年層にもお手軽に読んでもらえて、ひいては将来の日本の骨格をたくましいものに変革させ得る力を備えていると思います。
紙の本
繁栄と平和の時代
2024/01/08 15:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DB - この投稿者のレビュー一覧を見る
動乱期を経て、ローマ帝国が最も平和を享受し繁栄した五賢帝時代へとはいってきました。
最初のネルヴァは前巻にて簡単に紹介されていた。
ページ数にして五ページという薄さだけに筆者の扱いも伝わってくるだろう。
まあ老齢で温厚だから皇帝になり、一年ちょっとで代が変わってしまったネルヴァについては語ることもあまりないのかもしれない。
本著ではネルヴァの養子になって皇帝となったトライアヌスの話から入る。
二十年にわたってローマ皇帝の地位にあったトライアヌスだが、もともとは属州出身の軍団長の息子だった。
堅実に出世コースに乗っていたトライアヌスの運命が一気に変わったのは、ドミティアヌス帝の暗殺とネルヴァの登位だった。
由緒正しい血筋ゆえに選ばれたネルヴァが、トライアヌスを後継者に指名したのだった。
ローマ皇帝の座についてからのトライアヌスは私人としては質素、公人としては堅実にして精力的という君主の理想像のような人物だったようです。
ダキア戦役も現実的な対処と鉄壁のローマ軍団により勝利している。
ここで敗者となったダキアへの処遇が、それまでのローマの基本方針である敗者の吸収と同化という路線から外れダキアの滅亡を目指した処理だったのが興味深い。
これさえも伝統に依るのではなくその場で最大の効力を持つ解決策を求めた結果のようです。
続くハドリアヌスは、五賢帝の中でもアクの強いタイプのようです。
筆者もハドリアヌスには入れ込んでいるようで、カエサル程ではないにしてもハドリアヌスについて書ききろうとでも言うような意気込みが伝わってくる。
「夢を見ながら現実を直視する男」という表現が、最もハドリアヌスを言い表しているような気がする。
アンティノスとの関係やそのギリシャ趣味、それにテルマエでのエピソードとこぼれ話にも事欠かないし。
ハドリアヌスといえばやはり、旅する皇帝というイメージでしょう。
最大の領土となっていた帝国の性質を知るためには実際に見て回るしかなかったのか。
それともすべてを自分で判断しないと気がすまない性質だったのか。
地中海を取り巻くローマ帝国を巡行する皇帝の姿が浮かんでくるような気がした。
有能であっても激しい性格だったハドリアヌスのあとを継ぐのはピウスとあだ名されたアントニヌスだった。
これは先代の固めた道を外れることなく安定して歩んだ皇帝です。
それだけ平和だったということなのでしょう。
哲人皇帝の話は次巻のようで、賢帝の世紀はここで終わる。