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紙の本
法律解釈の手本としてオススメの好著
2005/06/26 23:43
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちょーさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
過日、昔懐かしい ”おそまつくん”のタイトル「ボクシングは痛ーでやんす」というのを観ていました。「っるさい。アホじゃないのぉ。(スペードマーク)」と娘は、いつも冷たく言っていますが。。。(^_^);;; ちなみに、彼女は、ドラえもん、クレヨンしんちゃんが大好き。こういうところは血筋は争えないと妙に納得しています。
赤塚不二雄の制作した、その番組は、わたしの少年時代からの愛読書である「あしたのジョー」(高森朝雄・ちばてつや)(のち、秋田書店・全20巻・昭和51年発行)を模写していました。力石役が”イヤミ”、ジョー役が”チビタ”そして白木葉子役は”トトコちゃん”、段平役が”テカパン”などなど、台詞まで一緒でした。「真っ白になるまで燃え尽きたいんだ」。また右手の人差し指を突き上げ、「1分じゃない、10秒だ、お前を倒すまでの時間ではない、殺すのに必要な時間だ」と画像までそっくりでした。
そして、あの力石が死ぬことになった「世紀の8回戦」では、実況中継アナウンサー”おそまつくん”が、「これは懐かしい。30代のお父さんにとってはひじょうに懐かしい」と叫んでいました。そう、ノーガード戦法のことです。そういえば、当時、力石の葬式が行われたのを記憶しています。
そこで疑問に思ったことは、こうしたパロディは、違法ではないか、ということでした。何に違反するか。それは、著作権法である。著作権法の保護法益、目的は何かという価値判断で、大きく影響を受けることがらであるはすである。わたしは、過去、ひととおり参考文献を読んで、おおよそは理解していると思っていた。
本書は、そうした事例を具体的に挙げながら、著作権に関する主な条文とその判例、学説、外国の法制度などを網羅しています。パロディに関しては、最高裁判決の3基準でもって解釈すれば違法とはならない。でも、そこのところが非常に難しいところであると述べています。なぜなら、価値判断は、真理ではないからです。あくまでも仮説にすぎないからです。
われらが知識のなかに、見失った智慧はどこにあるのか
われらが情報のなかに、見失った知識はどこにあるのか
(T・S・Eliot)
フランスの数学・物理学者のアンリ・ポアンカレの「科学と仮説」の序文で、仮説はその役割が必要であるばかりか、たいていの場合には正当であり、真理は自明な命題から欠点のない推理の鎖によって導かれると説いたことと軌を一にすると思います。
本書のパロディ論に戻って。たとえば、ジャングル大帝vsライオンキング、ロミオとジュリエットvsウェストサイド物語(これは、どちらも他人の盗作の可能性大)、George Hariisonのmy sweet load は盗作であったなど、興味深い内容となっています。
著者は、法律解釈とは何か、について次のように述べています。まったく、同感です。
「その際に、判断の基準となるべきはなんでしょうか?それ
は、「著作権というものはなんのために、なぜ守られるの
か」という視点です。法律があるから、というのでは答え
になりません。法律は多くの人々が賛同できる目的があっ
て、そのために作られるものです。これを立法趣旨といい
ます。」
このことは、すべての法律の解釈に当てはまる尺度であると思います。憲法、民法、刑法、そして地方自治法、然り。
ちょっと、話が逸れてしまいましたが、このIT社会での情報の危うさ、ウイルスやファイルダウンロード(問題となったウィーニーなど)の野放し、コピー社会の脆弱性といった際に、この著作権は大きな社会的な影響力をもって、それに対処していく機
能を果たしていくことでしょう。
紙の本
エピソード満載で、考えさせてくれる本
2012/05/30 10:24
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波新書の『著作権の考え方』もいい本だが、『著作権の考え方』の著者、岡本薫氏が元文化庁著作権課長であるのに対し、本書の著者、福井健策氏はプロダクションやレコード会社、出版社などをクライアントにもつ弁護士である。そのためか、前者がルールを丁寧に説明しているのに対し、この本はよく知っている例(『ジャングル大帝』と『ライオン・キング』や『チーズはどこへ消えた?』と『バターはどこへ溶けた?』など)を多彩に駆使していて、楽しんで読める。
さて、自分のウエブサイトやブログを持っている方も多いと思いますが、著作権について考えたことがありますか。
私は、この本で日本にはパロディに関する規定がないのを知って驚きました。パロディは著作権法違反にならないとずっと信じていたので、結局、公表はしなかったものの学生時代に芥川の『蜘蛛の糸』のパロディ『糸の蜘蛛』を書いたことがあり、ウエブにアップロードしようと思っていた時期がありました。
逆に、学術用途でなければ引用には許可が必要だと思っていました。それで、書評を書く折にも本文の引用はしないようにしてきました。この本を読んで、引用に関してはそれほど神経質にならなくてもよいことを知りました。今後の書評にいかせそうです。
著者もあとがきで述べているように、「著作権制度全体の入門書や実務書と呼ぶには、いささか不十分な内容」かもしれませんが、一般にはまずこの本を読んで、自分なりに考えを持った上で、最初に書いた『著作権の考え方』岡本薫(岩波新書)を読めば、十分だと思います。そして、清く明るいネットライフを楽しみましょう。