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紙の本
われわれは将来性のあるものだ。まだ達成されてないものの一例だ
2000/12/25 06:33
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投稿者:子房 - この投稿者のレビュー一覧を見る
訳者あとがきによると、これは「形而上学ミステリ」なんだそうで。何とももっともらしい言葉である。実際はただの「推理作家は如何にして浮浪者に成り果てたか」物語でしかないと思うのだけど。
単純な印象を語るのならば、洒落た安部公房といったところか。都市という舞台で淡々と描かれる変わったお話。間違い電話からはじまって、私立探偵の真似事を行い、一人の男を尾行してまわる。そしていつしか自分を見失う。それだけの内容だ。何ら難しいことはなく、読みやすい。
いったい、この小説は何が言いたいのだろう。ということを考えるのは野暮だろうか。自分というものの曖昧さを示したかったのかもしれず、世界の曖昧さを表したかったのかもしれない。すぐそばに横たわる都会の冒険を愉しむべきか、それともすぐそばに潜む狂気への入口に怖れるべきか。いや、読み終わったあと、ただ「ふう」と溜息をつくしかない作品だ。
ところで、作中において説かれる新世界の「バベルの塔」とは、コンピュータ・ネットワークのことではないかとふと思った。1960年代といえば電子頭脳開発がはじまったころといえるし、ひとつの言語とは二進法を意味しているようにも思える。現代の「バベルの塔」は、神へと人類を辿りつかせるのか。なんてね。