紙の本
自白の謎を解く
2001/10/21 12:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:秋夢 - この投稿者のレビュー一覧を見る
冤罪事件の多くがやってもいないことを自白してしまったために長い間苦しむ結果となってしまっています。でもどうしてしてもいないことを自白してしまうのでしょうか。自白したのだから真犯人ではないか、と一般の人は考えてしまいます。ところが本書を読むと分かるのですが、日本の今の制度では無実の容疑者が虚偽の自白へと導かれていくのが実は「必然」なのです。その制度の欠陥がすべての関係者を巻き込みながらうその自白が形づくられていきます。著者はその過程を心理学の立場から分析を試みます。そして分かりやすく読者に提示してくれています。本書は法律学と心理学を結びつける絶好のテキストと言えるでしょう。
紙の本
うその自白は、こうして引き出される
2001/05/07 18:08
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:成田毅 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやはや、ビックリしてしまった。背中が凍りつく思いだ。しかもすべてが事実である。
やってもいない犯罪を、自分がやったと認めてしまう。「うその自白」である。気が弱い、自己主張が出来ない……そんなことだけが原因ではない。供述調書を、いや物的証拠すら、調査官の疑惑によって作り出された磁場に吸い寄せられ、歪められたストーリーを紡ぎだす。無実の罪であっても、こうした状況に引き込まれると、うその自白をしてしまい、それをもとにうその犯行ストーリーすら作り出すというのだ。
たとえ誤った疑惑であっても、それが深まれば深まるほど、周囲も憎しみや不安、怒りに駆られて、疑惑はすぐさま確信になる。そして、うその自白を支えることになるのだ。なぜうその自白をするのか、そしてうそのストーリーを作ってしまうのか? この心理的なメカニズムを解明するのが本書。著者も語るように、日本では「推定無罪」は名ばかりなのかも知れない。
(成田毅 フリー・エディター/ライター)
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犯人が自白をさせられるという状況を作り出しているはずが、冤罪者にウソの自白をさせてしまう状況にもなってしまっているということが、すごくよくわかる本でした。
しかしウソの自白を見破る為の裁判所がウソを見破れないというのはいかがなものでしょう。また、冤罪を防ぐ為にブラックボックスになってしまっている取調べの様子に光を当てる取り組みを警察が行おうとすらしないという状態はいかがなものか。人間が人間を裁くのだから当然間違いはあるものだけれど、それを減らそうという努力は必要なのではないのでしょうか。イギリスでは冤罪を減らすために全ての取調べ現場を録画することを義務付け、実際に冤罪が減るという効果が出されているようですが、日本も冤罪を防ぐ為に何かしらの対策を取ってしかるべきなのではないかと思います。
冤罪と分かった時点で捜査を無為にしてしまうから、冤罪ではなく真犯人だと決め付けて捜査するのもわからないではないけれど・・・でも強引な捜査のおかげで泣いている人もたくさんいるのだという事実は変えられないのだから、冤罪を減らしていく努力は必要であるし、被疑者からの控訴申請はきちんとすぐに処理できるように、システムを作っていかなければならないと思います。冤罪で働き盛りの年頃を不意にしてしまったり、その人自身や家族に無意味な心理的圧力をかけることになってしまうのだから。
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数件の実際に起きた冤罪事件を例に出し、自白の心理について検証されている。
「場」の圧力が全ての冤罪を生んでいるのではないか。ひとたび容疑者となってしまうと、警察は逃げ道を全部ふさいで追い込んでくる様子が見てとれ、怖いと思った。
自白をした容疑者に非があるように思いがちだが、人は誰でも「場」の圧力からは逃げられない。長期の拘留、連日の尋問、世間からの断絶、それらの前に決して挫けることなく無実を主張し続けることは難しいようだ。
嘘の告白をしたときに嘘をついてると受け取られるのか、知らないが故に嘘しか言えないのかを疑う仕組みになってないがために、失われる人生の時間はあまりに不憫だ。
2006/9月
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やってもいないのに、何故自白するのか―という問いに端的に答えた本です。冤罪が発生するメカニズムがよく理解できます。「逆に自白しないほうが不思議かもしれない」とこの本を読んだ後に思いました。
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じぶんはなんにもしていない。無実でありながら
なぜみんな自白をしてしまうのか?
自分もそうなるかもしれないから、読んでおいたほうがいいよ。
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弾さんの書評を読んで、日本に帰ってきたら真っ先に読もうと思っていた本。警察の取り調べ室の恐しさは話に聞いて知ってはいたのだが、しかし壮絶、なるほど日本から冤罪が無くならないわけだ。一日も早い、取り調べ室の録音録画義務付けを望む。
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如何して自分に不利な状況を作ってしまうのか。
自白してしまうのは、拷問に近いことをされたらと考えるとまだ想像出来る。
その先の、犯行についてそれらしく語ってしまう部分を知れたのが良かった。
冤罪は防ぐために、改善されなければならない点があると思った。
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裁判員必読の書です。虚偽自白という現象が例外的ではないことを説得的に論証している。足利事件もまた,この例に連ねられることだろう。
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無実の人が、冤罪に陥る経緯がはっきり理解できる本。
とりわけ、再審請求中の事件についても言及している点が興味深かった。
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20101118
教養時代に類著を読んだことがあった。この冬、司法心理学で自白の信頼性についての講義を受けたので、参考にと思って読みました。
「自白までしたのだから、真犯人のはずだ」
「自分に不利になる自白をするはずがない、ましてや死刑の可能性があるなら」
私達はこのように考えがちだが、後に冤罪と発覚した事件で容疑者の「自白」が取れていた率というのは無視できない高さ。知って驚く。
つまり、やってもいない罪を、しかも懸命に細部を考えだしながら「自白」してしまう可能性は大いにある。どんな人にもある。
しかも、それが決め手となって最悪の場合死刑の可能性があると認識していても。どうしてこのようなことが起こってしまうのだろうか。
本書は、虚偽自白した冤罪被害者がなぜそのような選択に至ったのか、彼らを当時取り巻いていた状況と人間の心理的特性から実際のケースを取り上げて説明する。
裁判員制度も導入されて久しいし、「犯人の自白がある」という事前情報が裁判員の法的判断に与える影響も考えなければならない。
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[ 内容 ]
身に覚えのない犯罪を自白する。
そんなことはありうるのだろうか?
しかもいったんなされた自白は、司法の場で限りない重みを持つ。
心理学の立場から冤罪事件に関わってきた著者が、甲山事件、仁保事件など、自白が大きな争点になった事件の取調べ過程を細かに分析し、「自分に不利なうそ」をつくに至る心のメカニズムを検証する。
[ 目次 ]
序 自白と冤罪(冤罪は遠い世界の話ではない 冤罪のひろがり ほか)
第1章 なぜ不利なうそをつくのか(宇和島事件と自白 うそを引き寄せる磁場 ほか)
第2章 うそに落ちていく心理(甲山事件の出発点 自白へ向かって ほか)
第3章 犯行ストーリーを展開していく心理(仁保事件 録音テープと事件 ほか)
第4章 自白調書を読み解く(袴田事件 自白調書を読む(1)うそ分析(変遷分析) ほか)
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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なぜ、自分がやってもいない犯罪を自白してしまうのか?
自白に至るまでの心理について書かれている。
実際に冤罪と判明している事件を取り上げ、その中でどのように自白をしてしまうのかその過程の心理が詳しく解説される。
少し前から通勤電車に乗る時は、痴漢の冤罪を着せられないように気をつけているが、それは正しいと確信を持った。
逮捕されてしまえば、取り調べる側は相手を犯人だと考えて取り調べる。
そのため、冤罪故に自分が事実だと思い発言する否認や、知らないが故に話せない犯行の詳細は全て犯人が自分を守るためについた嘘と断定される。
その繰り返しで次第に自分がやったと思うようになる。
人の記憶は実に曖昧だし、非日常の空間でずっと責められ続けたら洗脳されてしまう。
本書の例を見る間でもなく、非常に低確率だがこれは誰にでも起こる。
取り調べでは全ての過程を録音する、ということが出来れば理想だが、なぜか、それが出来ない。
とすれば最大の予防は捕まらないこと。
捕まる前にやっていないことをやっていないと言える環境をつくること。
本書を理解すればその内容は濡れ衣を着せられた時に役に立つ訳ではないことがわかる。
しかし、そうならないために何が出来るのかを事前に考えるきっかけにはなるだろう。
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ローで受けた、法と心理学の権威、浜田先生の有名な著作。
捜査官の度を過ぎた仕事への情熱。
磁場が、冤罪を生む。
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無実の人がやっていないのにやったと供述していまうという現象を、過去に実際に起きた冤罪事件をとりあげながら、心理学的なアプローチにより明らかにしたもの。
自白調書はときとして、それまで平穏に暮らしていた人の人生を粉々に粉砕してしまう。自白調書が持つ力の大きさを改めて認識させられた。取調べを担当する警察官、検事は常に、無実の可能性を常に念頭に置いて、被疑者、被告人に接する必要があると感じた。
裁判員裁判の導入に伴って重視され始めた口頭主義により、自白調書の欠点を補うことができるか。今後も常に意識を持って考えていかなければならない問題である。