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  • カテゴリ:一般
  • 発行年月:1996.4
  • 出版社: 岩波書店
  • レーベル: 岩波文庫
  • サイズ:15cm/438p
  • 利用対象:一般
  • ISBN:4-00-322429-9
文庫

紙の本

バラントレーの若殿 (岩波文庫)

著者 スティーヴンスン (作),海保 眞夫 (訳)

バラントレーの若殿 (岩波文庫)

税込 880 8pt

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みんなのレビュー5件

みんなの評価4.0

評価内訳

  • 星 5 (1件)
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  • 星 3 (1件)
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紙の本

どこまでもどこまでも

2013/12/15 15:39

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

18世紀イギリスのジェームズ党蜂起の事件で、ジョージ2世とプリンス・チャーリー側のどちらが優勢とも判断がつかず、貴族ダリスディア家は兄が反乱側、父と弟が王側に付くという手段で家名存続を図る策に出たのだという。日本でも、あるいは他のどこの国でもよくある保身策だ。
結果的に国家がひっくり返るほどはなく、行方不明となって死んだと思われていた兄は世界を放浪した末に帰還する。そんな風来坊もどきのためにお家騒動になるほど制度が脆弱でない程度には時代は煮詰まっているが、しかし理屈で割り切れない何かはある。兄弟の静かな抗争、神経戦が始まり、次第にその対立は姿を明らかにし、ついに新大陸にまで及んでしまう。
インドからアメリカから渡り歩き、海賊の真似事までした兄=若殿の攻撃は、悪辣、陰湿、多様で巧妙を極める。その悪行を自覚して開き直っているところは、「嵐が丘」のヒースクリフのように怨念を貼らしながら自らの身も削っていく悲壮さとも裏腹だ。完全な悪役である。だがこの少年時代から放埒であったという兄の暗黒の奥を垣間見たいという欲求をそそる。
ひたすら憎悪に凝り固まり、いかに押し付けがましく静かに暮らす弟の一家に無理難題をふっかけようと、ほんの一片ほどの肩入れが感じられるのは、その悪漢ぶりの背後に世界の辺境の猥雑さがあり、彼はそのネットワークから吸い上げた怒りをブリテン島の安穏とした平和の中に持ち込んでいるところにあるのではないか。どれほごの悪行を重ねてもただ破壊の小説になりきらない微妙なバランスを支えているのは、薄皮のように彼らを包む新世界の息吹なのだ。若殿の敵になり味方になり的になりする男達も、荒涼としながら貪欲でしたたかで、同種の精神の広い存在を裏付けている。
事件の顛末を間近に見ていた家の執事が手記を残した、ちょうどその100年後の1899年に小説として発表したという触れ込みのこの作品は、体裁としては時代小説なのだが、20世紀近くには既に新興国が大英帝国に迫りつつあったという不安が物語の構造を支えている。
「嵐が丘」も古典的な愛憎の上に、女性の知性や精神的自立という新しい時代の流れによって物語をドライブしたが、この若殿はもっとダイナミックに世界の動きを伝えているのが真骨頂。インド植民地からやってきた若いキプリングを評価し、晩年はサモアに移り住んだのも、スティーブンスン自身がその流れのただ中にいたことの現れだろう。
歴史小説も人情小説も、所詮は現代の精神を反映しているに過ぎない、まったくその通りだろう。どこまでも追ったり追われたりの執拗な追跡劇には迫力があるが、追われているのは現代ヨーロッパのすべての人々なのだろう。

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紙の本

ニ流の作家の一流の作品よりも、一流の作家の...

2000/10/21 10:49

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:katokt - この投稿者のレビュー一覧を見る

 『ジーキル博士とハイド氏』、『宝島』のスティーブンソンの作品。だいたい有名な作家のみんなが知らない作品は失敗作と相場がきまってるが、失敗作にも野心的な失敗作というものがあって海賊や宝捜しのくだりは楽しく読ませる。詳しくは

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紙の本

スティーブンスンの別な一面

2023/04/24 06:17

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る

スティーブンスンの別な一面を見せる本作を知ってから40年。子供のころに読書の面白さを教えてくれた『宝島』の作者であり、稚拙な部分もありながら、忘れられない『ジキルとハイド』の作者でもある彼の作品として、気にはなっていたが読む事も果たせずにいたものをようやく手にした。『ジキルとハイド』でひとりの個人の中に在る「善と悪」を象徴的に描いた作者が、ここではそれぞれの個としてそれらを描き、対決させるーーーそう想像して読み始めたのだが、兄は思った程の強烈な悪でもなく、さらに弟の方も善良と言い切ることもできない。

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2010/12/19 18:34

投稿元:ブクログ

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2011/08/06 03:03

投稿元:ブクログ

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