センターでのSさんの仕事は茨城同様、保護された迷子の犬猫の施設内での管理。迷子になった犬や猫は一定期間、センターで保護されるが、期間が過ぎると致死処分(もしくは殺処分)と言う名目で殺されてしまう。ガス室とは犬や猫を炭酸ガスで窒息死させるための箱型の部屋の通称で、今、SさんとHさんは犬用のガス室の操作盤の前に立っていた。
操作盤には電源やガスを送り込むスイッチなどと一緒にモニターが設置されている。このモニターはガス室内で犬が窒息死したことを確認するためにつけられたものであった。
「こういうことは最初に言っておこうと思ってね」
四つ足になりクルクルと自分の尻を追う全裸の少女、犬顔の鬼に虐げられる小人たちの地獄絵図、日本刀を咥えガス室内を徘徊する見たことのない獣、大写しになった女性器、室内の壁や床から生える無数の豚の足、上下運動を繰りかえす無人のギロチン、駄々広い座敷の中央に置かれた泥だらけの掘削機、ソファーに横たわる胴が異様に長い女、暖を取るかのように寄りそい群れるエメラルドグリーンの小さな龍たち、どこかの国の戦争の風景、天井から吊るされた位牌、血肉と骨でできた万華鏡、雲の上から覗き込むように顔を出す子供の姿……。
犬が窒息死する姿が映る代わりに、こういったおかしな映像がモニターに映り込んでしまうんだと、Hさんは申し訳なさそうに言った。
そんな上司の言葉に、Sさんは困った顔になり呟く。
「そういうのも茨城と変わりませんね」