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第4回ビーケーワン怪談大賞
選考結果発表(5/5頁)
◎いよいよ大賞ほか入選作品決定!

 では最終候補を絞っていきたいと思います。ちょっと収拾がつかない感じもしますので、『吉田爺』『矢』『軍馬の帰還』の3作品以外に、お二人と私がそれぞれ1作品ずつを最終候補に残して、その6作品のなかから大賞・優秀賞を決めていきたいと思います。

福澤
 『ムグッチョ、ムグッチョ お前の頭に火がついた むぐれ~ば 直る』(よっちゃんさん)ですね。

加門 じゃあ、私は『光の穴』(夜猿さん)。

  そうきたか(笑)。どうしようかな? そうすると、あとは『猫である』『ガス室』『薫糖』…………(長考に入る)…………これは本当に難しい。比較しようがないんですよね。お二人は他に、どうしても推したい作品はありますか?

福澤 クジラマクさんには何かあげたいと思いますけどね。

加門 最後まで迷ったのは『薫糖』ですね。

  では、私が『猫である』を推す形にして、6+2篇の中から上位3作品を選びましょうか。順位を無理やりつけて、ベストスリーを選んでもらって集計してみましょう。

福澤 1位『ムグッチョ、ムグッチョ お前の頭に火がついた むぐれ~ば 直る』、2位『吉田爺』、3位……ムチャクチャ迷うんですけど『ガス室』。

加門 1位『軍馬の帰還』、2位『矢』、3位『吉田爺』です。

  私は1位『矢』、2位『軍馬の帰還』、3位『ムグッチョ、ムグッチョ お前の頭に火がついた むぐれ~ば 直る』です。
 ということは……。

加門 バラバラじゃん!(笑)

  見事に割れましたねー。では、ベストスリーを1位3点、2位2点、3位1点のポイント制にして加算してみましょう。

『軍馬の帰還』5
『矢』5
『ムグッチョ、ムグッチョ お前の頭に火がついた むぐれ~ば 直る』4
『吉田爺』3
『ガス室』1

  『軍馬の帰還』と『矢』が同点ですね。

加門 じゃあ、どちらもベストスリーに入れていなかった福澤さんに決めてもらいましょうか。

福澤 この2つだったら、『軍馬の帰還』ですね。

加門 決定ですね。おめでとうございます。

  これはまさに「鼻の差」というか(笑)僅差の判定になりましたね。

大賞:
『軍馬の帰還』(銀峰さん)

優秀賞:
『矢』(ユメさん)
『ムグッチョ、ムグッチョ お前の頭に火がついた むぐれ~ば 直る』(よっちゃんさん)

佳作:
『吉田爺』(Flackさん)
『光の穴』(夜猿さん)
『猫である』(不狼児さん)
『ガス室』(クジラマクさん)
『薫糖』(田辺さん)


◎惜しくも選外になった気になる作品

 選外になった作品の中で気になったものについて話していきましょう。

加門 『明け方にみた夢』(樋口摩琴さん)。経験したことのある人にはすごく辛い話。ちょっとした虫の知らせとか、現実的にわかってしまった辛い未来とか、そういうことを経験したかどうかで受け止め方が変わると思いました。私は幸か不幸か経験しているので、きつかった。胸につかえながらも誰にも言えない気持ちとか、すごくよく伝わってきた。重苦しい、胸に迫るお話でしたね。

  真摯な説得力がありましたね。実話かなって思わせる。

加門 好きな話というよりも辛い話として読みましたね。
 あと、グリーンドルフィンさんの作品。私は『火傷』を候補にしましたが、ほかにも推したいものが沢山ありました。

  ストレートに怖い話ですよね。独特な軽みが魅力だと思います。私が推したいのは金魚屋さんの『ひどいところ』(金魚屋さん)。あたりまえの話なんだけど、平明な言葉を大切に扱って、ひたむきに書いている良さがある。

加門 なかなか、いい話でしたよね。この方の作品では『日々のつみかさね』(金魚屋さん)とかも面白かった。侍が怒って追いかけてくる。いい味出してます。

  金魚屋さんは全体に詰めが甘いので、もう少し構成に配慮をすると、もっと上にくるような気がしますね。『カーテンの丈』(カイロさん)なんかもそうですけど、ありがちな話なんだけど、きちんと自分の言葉と視点で書くことで、抒情を漂わせる方向もアリだと思います。

加門 『換気扇』(鼓囃子)。なんでもない話なんだけど、日常的な生活感がよく出てて、実際、その場にいたらかなり怖いだろうなと思いましたね。
 『おかえり』(かんころんさん)も好きでした。『換気扇』同様、生活感の出し方がいい。夏の昼下がりという空気の描き方がうまいです。
 『神を見る人』(林不木さん)。正直、文章に難があって読んでいて何が何だかわからないんだけど。作品全体から匂いたつ不快感というか、猥雑さが面白かったです。

  ちょっと諸星大二郎っぽいと思いましたね。

加門 慎重に読み返さないと、よくわからなかったんですけどね(笑)。

  『半券』(じがさん)も生活感みたいなものが巧く出ていて印象に残る。呪文みたいな断片が効果的。作中に出てくる『ビアス選集③幽霊Ⅰ』は、実際に東京書籍から刊行されていて、古参のホラー好きには懐かしい本です。ちょっと異様なたたずまいの本なので、ああいう半券がはさまっていてもおかしくない雰囲気があるんだ(笑)。

加門 いかにも、東さん的なツボですねえ。

福澤 とちみさんの『世話』『電話』も印象に残りました。あとは『料理屋』(沢井良太さん)。怖さはさほどないけど、雰囲気はすごくいい。

  『墓参り』(モモははさん)も心に残る話ですね。『明け方にみた夢』にちょっと似ていて、肉親の情がしんみりと伝わってきます。

福澤 『墓参り』は準候補にあげたんですが、途中でちょっと話者がわかりづらくなっているところがあるんですよね。あと、ラストをもうすこし怖くできなかったかなと。

加門 私も『墓参り』は気になった作品。でも、もっと単純な話にしてもよかったかもしれない。

福澤 モモははさんは『泣かない』もありましたが、これはタイトルがミスマッチな感じがします。

加門 『山手線~』もそうだけど、タイトルとの齟齬で惜しいな、という人が何人かいた。タイトルのインパクトでずいぶん違いますね。


◎「愉しませてもらいました賞」決定!

 「愉しませてもらいました賞」は今年から新設した賞です。どういう趣旨かというと、技巧とか方向性とかでちょっと難あり、なんだけど、強烈に印象に残る作品を、選考委員がそれぞれ個人的に顕彰しようという(笑)。怪談の定義とか完成度にばかりこだわるのでは、気軽に応募できないでしょうしね。1人1作品でお願いします。

加門 私は『マンゴープリン・オルタナティヴ』にあげたいです。ほんと、読んでてワクワクしました。怪談じゃないけど(笑)。

  私は『カオリちゃん』>にしましょう。こういうアプローチもありなんだよ、とアピールする意味で。

福澤 ぼくは『祖父のカセットテープ』で。個人的にはかなり怖さを感じましたので。

  これですべての賞が決定しました。

◎次回へ向けて一言

 では、次回へ向けて一言ずつお願いします。

福澤 毎回言ってますが、とにかく怖い話が読みたいですね。みなさん技巧的な部分では、ほんとうに水準が高いと思うんですけど、怪談である以上、やはり怖さも追求していただきたいなと。

加門 と言いながら『軍馬の帰還』が大賞なんですけど(笑)。

福澤 やっぱり技巧にも目が行っちゃうんですよね。銀峰さんはほんとうに上手いし。

加門 そのへんが難しいですね。最高なのは、上手くて怖いことなんですが、その次となるとどうしても、怖くなくても上手い人という感じになってしまう。
 怖さというものを考えるとき、自分の身に起こったらどうかな、と一度引きつけてみることも大事なんじゃないかと思うんですよ。
 今回、怖いという点で作品をふるいにかけたとき、私は怖がらせようとして失敗している作品と共に「こんなことは虚構にしてもありえない」と思った作品は外しました。けど、「ありえなくてもあったら怖い!」というものは、かなり上位につけました。推敲する中で、頭の中だけで考えないで、自分にとってリアルなものをもう一度検討してみるのは大事だと思います。

  募集期間中から繰りかえしてきたように、俳句とか短歌と同じような感覚で、怪談文芸執筆を気軽に実践し、それを発表して、みんなでワイワイ愉しもうという本賞の狙いが受け入れていただけているようなのは、本当に嬉しいし、心強いことですね。800字で怪談を書くという制約の中で、これだけ多彩でハイレベルな応募作が寄せられたことを、私は誇りに思います。これからも「怪談」というジャンルの既成概念を覆したり、その可能性を広げるような意欲作を、もっともっと読ませてください。
 それはそうと今回は、矢内りんごさん、言之葉亭さんなど、大量投稿をしてくださった方の一部が、結果的に選外になってしまいましたね。

加門 残念でしたね。矢内さんの場合は、霊能者とか“わかる”人が出てくる話が結構あったんですけど、怪談でそういう人が出てくると決め打ちになってしまう場合がある。800字だと、それがマイナスになってしまったような気がします。

  矢内さんのようなタイプの方は、がんばって1冊、単著をまとめてみることを考えられてもよいのではないかと思います。いろいろ面白そうな抽斗を持っている方だし。

加門 ああ、長編はいいかもしれない。個性持ってますからね。

福澤 ぼくは準候補に矢内さんの『火傷と根付』を挙げていたんですが、この方はエッセイ的な書き方の作品に面白いものが多かったように感じます。

加門 私もギリギリまで残しておいたものが沢山あるんですよ。

  言之葉亭さんも、『階段』など、とても洒脱なセンスを感じさせて、力のある書き手だと思います。ちょっと器用貧乏気味なところがあって損をしていますね。

加門 うん。全体的にもったいなかった。

福澤 前回たくさん投稿いただいた入り江わにさん(今回は『熱帯夜』『蛞蝓』)は?

  前回に較べると上達されていると思います。ただ、『「超」怖い話』的な定型にハマってしまった弊を感じますね。

加門 「新耳袋」的、「超怖い話」的、と分類されてしまうようになると辛いですね。

  いきなりは無理かもしれないけど、次回は『「超」怖い話』的な定型を打破するような作品を期待したいと思います。

加門 回を重ねると、レギュラーの方々のスキルアップが見て取れるのは面白いですね。

  では、次回のビーケーワン怪談大賞で、応募者たちのさらなる成長ぶりを実感できることを心から願いつつ、選考会を終了したいと思います。関係者の皆さん、応募者の皆さん、本当にお疲れさまでした!

<選考委員プロフィール>
加門七海さん 加門七海

東京墨田区生まれ。伝奇小説、フィールドワーク作品を中心に活躍。著書に『大江戸魔方陣』(河出書房新社)、『晴明。』(朝日ソノラマ)、『京都異界紀行』(原書房)、『おしろい蝶々』(角川書店)、『環蛇銭』(講談社)、『常世桜』(マガジンハウス)、『女切り』(ハルキ・ホラー文庫)、『203号室』(光文社文庫)、『真理』(光文社文庫)などがある。最新刊は『オワスレモノ』(光文社文庫)。
加門七海さんインタビュー

福澤徹三さん 福澤徹三

1962年福岡県生まれ。デザイナー、コピーライター、専門学校講師を経て作家活動に。著書に『怪の標本』(ハルキ・ホラー文庫)『怪を訊く日々』(メディアファクトリー)、『廃屋の幽霊』(双葉文庫)、『真夜中の金魚』(集英社)、『再生ボタン』(幻冬舎文庫)、『壊れるもの』(幻冬舎)、『死小説』(幻冬舎)、『亡者の家』(光文社文庫)などがある。最新刊は『ピースサイン』(双葉社)。
福澤徹三さんインタビュー

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