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第4回ビーケーワン怪談大賞
選考結果発表(4/5頁)
★『心臓カテーテル室で』(やまぐちはなこさん)
  病院がらみの投稿は幾つかあって、これもまあ、わりとよくあるタイプの話なんですけどね。

福澤 純粋に体験談的な書き方をしているところがよかったですね。本当に医療の現場にいる人なのかも、と思わせてくれる。

加門 ディテールがしっかりしてますね。でも、やはり、ありがちすぎるかな。同じスタンダードなら『光の穴』のほうが出来がいい。
 それと、「いけないのでしょうか。」って聞かれちゃったとき、「そんなことないです」って答えそうになって、あれれ? って(笑)。こうやって読み手に尋ねたり、話を託すスタイルも、最近、結構、多いですよね。

★『食堂にて』(斜斤さん)

  これもありがちな話ではあるんだけど、店員の女性が、後ろ向きに出てくるところでドキっとする。それと幕切れのイメージね。

福澤 好みの話なんですが、「図太い棒状のモノ」というところがすこしイメージしづらかったですね。

加門 『「超」怖い話』に似たような話があったような……って思ったんですけど。

  いかにも『「超」怖い話』に出てきそうな話ではありますね。同じ斜斤さんの『アメリカ人』も、そう。印象には残るんだけど、もう一歩、突き抜けたものがなかった。

★『んんーげっげ』(有坂さん)
★『修学旅行写真』(有坂さん)
  どちらを採るかは好みの問題かも。ユニークなのは『んんーげっげ』ですけどね。

加門 さっきも言いましたけど、「んんーげっげ」の使い方が上手い。単純に、あんな声が聞こえて首が飛んできたら絶叫もんだよと思って。状況を想像したとき、かなり怖かった。

  先ほど指摘したように一発芸的な運びが上手な方なので、題材をもう一工夫されたら、期待できる書き手になるんじゃないかと思います。


★『山手線は廻りつづける』(向井野 海絵さん)
福澤 非常にまとまっているんですが、この系統のものって、パターンをつかめば割に書きやすいと思うんです。そのへんがすこし気になるところです。

加門 タイトルを見て読み始めたとき、気持ちの悪いメリーゴーランド的な物語をイメージしました。で、これは面白そうと思ったんですが、結局、池袋までの短い間の話になってしまっていたのが、なんとも残念。山手線なら山手線で、もっと円周的なエンドレスな恐怖が欲しかったな。タイトルで失敗した例ですね。あと“溶ける”と“廻る”で、怪談とは関係ないけど、『ちびくろサンボ』を思い出しました。

  作者の意図としては、どんどん広がっていく話で、ぐるっと回るっていう暗示をタイトルで与えたかったんでしょうね。

加門 ところが、イメージさせようとしていたものよりも、作品の世界が狭かった。

福澤 向井野さんの『喰人樹』もタイトルで損をしているような気がしましたね。

加門 タイトルが凝りすぎなのかな。

  いわゆる実話怪談的な発想とは違ったところから、怪談執筆に向かっているという意欲を感じさせますね。文章はかなり達者な方なので、怪談としての方向性に配慮して、今後も書き続けてほしいと思います。あ、それからタイトルとね(笑)。

★『薫糖』(田辺さん)
  田辺さんは初登場組ですが、全部で18編も投稿していて、しかも当たり外れの差が一番大きかった(笑)。書くこと自体に、まだあまり習熟していない印象を受けますね。にもかかわらず、どの作品にも妙に惹きつけられるイメージがありましたね。

福澤 どの作品も独特な味わいがありますね。

  呪いに飴を使うって、実際にあるんですか、加門さん?

加門 なぜ、私に振る(笑)。いや、聞いたことはないですね。だから、創作だとは思うんですけど。私もこれを残すか残さないかギリギリまで迷って……。飴って溶かすと、熱いし、つくと落ちないんですよ。火ぶくれになるし、水で冷やしても固まって落ちない。その飴でやるグロテスクさ、熱さ、痛さは伝わってきましたね。あれ? 何で落としたんだろう(笑)。

  加門さんは『お化けの学校』(田辺さん)を入れているんですよね。

加門 ああ、そうか。ほかを挙げたんですね。『お化けの学校』は笑えるという点で面白かったです、単純に。このあたりの選択はもう、好みだけの問題ですね。

  私は『選択肢』(田辺さん)も面白かった。ただの冗談話ではあるけれど、いまどきの実話怪談の特性を踏まえて、一種の風刺にもなっているかなあ、と。

加門 私も『選択肢』か『お化けの学校』かで悩んだんです。ただ、『選択肢』には「おかっぱの女の子」が入っていないのが(笑)。

  ……そ、それは御自分に引きつけすぎでわ!?

加門 どこが!?(笑) だって「おかっぱの女の子」が出る怪談って実際、すごく多いでしょ? 田辺さんはたくさん投稿されていますけど、印象に残る話が多かったですね。作風もバラエティに富んでいて、怪談に詳しい方なんじゃないかと思いました。

福澤 加門さんは『あめ玉』(田辺さん)も入れていますね。ぼくも迷ったんです。

加門 『あめ玉』は最後の「ひぃ、見てんと助けてぇや。」が効いてます。上手い! って思いました。

  単純に文芸系とも呼びがたい、不思議な未知数の魅力を感じさせる書き手ですね。今後どういう方向に伸びていくのかわかりませんが、怪談大賞的には注目していきたい一人だと思います。

★『泣き石』(YASUKOさん)

  さっきは話題に出ませんでしたが『泣き石』(YASUKOさん)も挙げておきたいですね。

加門 これ、気になりましたね。箱庭的な恐怖。

福澤 机の引き出しの中に石を並べているのって、想像すると不気味ですね。

加門 ある意味、よくある話ではありますよね。石から煙が出るとか、水入り瑪瑙の中で魚が泳ぐとか。でも、そういうものと比べても面白かったです。ただ、「音は息子の部屋の方から聴こえてくるようです。」の後に、「しかも学習机の引き出しの中から。」と続くことに齟齬を感じちゃったんです。瞬間移動してるんですね。だったら前の文を「息子の部屋から聴こえてきた」とかにして、もう部屋に入っちゃっていることにすればよかった。何回も読み返していたら、そこが引っかかってきちゃったんですよ。惜しい。


★『休憩室』(ぬくてるさん)
  ぬくてるさんは前回も佳作に入っていますね。『休憩室』は、私と福澤さんが選んでいます。

福澤 インパクトは薄いんですが、文章はこなれていると思います。

  安定して落ち着いた書きぶりの方ですね。きちんと自分の言いたいことを伝えている。

福澤 ただ、この枚数では「メグ・ライアン」はいらないと思います。特になにかを喚起するわけでもないし、伏線でもない。ほかにも独特ではあるけれど微妙な表現が目立ちます。それがいい方向で全開になっているのが『鳥打帽の男』(ぬくてるさん)。こっちは全開でいいんですよ。イモ欽トリオが出てこようと何が出てこようと問題ない。非常に楽しい作品です。

  メグ・ライアンもそうだし、「モーター音は恐竜の断末魔」とか、一歩間違えるとすべりそうな比喩を(笑)果敢に使う方ですよね。

加門 自分でそういうギリギリな比喩を探して、楽しんで書いている感じですね。

福澤 紋切り型にならないようにしている努力は大いに買えますが。だけど、「ポケットに入れていたあのバナナは、誰か食べたんだろうか…。」──食べないだろうって(笑)。

加門 思った。食べないよ(笑)。

福澤 そんなことを考えること自体がちょっと変(笑)。さっきのメグ・ライアンにしても、「ここで働く者たちの年収の何倍ほどの報酬を得たのだろうか」とか、やっぱり視点が独特ですね。


★『ムグッチョ、ムグッチョ お前の頭に火がついた むぐれ~ば 直る』(よっちゃんさん)
福澤 「ムグッチョ」って カイツブリのことなんですね。調べました。

加門 このタイトル、歌なんですよ?

  そんなに人口に膾炙している歌なの?

加門 さあ。でも、私はカイツブリ見ると歌いますもん(笑)。この鳥は大体、この1フレーズを歌っている間に潜って、魚を獲って水面に出てくるんですよ。私、この作品読んでもそこばっかりに気をとられちゃって。で、どう活かすのかなと思っていたら、あまり関係なかった、と。

福澤 民話的な話ですが、語りも自然で上手い。ただタイトルは再考の余地があると思います。

加門 河童とかにしなかったところがいいですね。

 この方は『夜寒のあやかし』で、第一回の優秀賞を獲られていますね。今回もやはり、叙述に独特なリズムがあって、川辺の妖しい情景にぐんぐん引きつけられてゆく迫力を感じました。そうした表現力の逞しさがあるから、かなり唐突な幕切れも活きてくるんですね。

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