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佳作 ~第3回ビーケーワン怪談大賞~
『酒の味』/高山大豆さん
 酒席で「高山さん、生臭い酒って飲んだことあります?」と向山君に訊ねられた。
 生臭いって、肴が生臭くて酒まで生臭いとかそういうの?と訊き返すと、違いますという。じゃあどういう事?と訊くと「単なる思い出話なんですけど」と前置きして話してくれた。

 向山君がまだ大学生の頃。
 夜中、一人アパートで論文を書いていると、大学の友人が訪ねてきた。手にはまだ開けていない一升瓶をぶら下げている。
 酒でも飲まないかと思ってな、と友人が一升瓶を差し出した。日本酒だった。
 ああいいね、飲もう飲もう、どうせ論文書きも飽きてきたところだし、とその誘いに乗ったのだという。

「乾杯して、ぐいって飲んだら」
 やたらと生臭い。鉄の味のような……口の中を切った時よりも酷い味がする。
 おい、これ腐ってないか?というと、友人は平気な顔をして<旨いよ>という。
 何度か舐めて味を確認したが、やはり生臭い。
「これ、何処で買った?」と友人に訊いた。

「買ってねぇよ。拾ったんだ」

 驚いて、何処で拾ったんだよ、と訊くと「事故現場のお供えだよ。もったいねぇからな」といって笑った。

 友人を一升瓶ごと部屋から叩き出して、飲んだ酒を吐いた。
 何度も吐いて、どうにか落ち着いた時にはすでに白々と夜が明けかけていた。
 最悪の気分のまま座り込んでいると、背後から<マズカロ…マズカロ…>とおかしな音が聴こえる。
 何の音かと振り返ると、薄明るい部屋の隅に「下ろし金で身体を縦半分削られたような爺」が立っていた。

<マズカロ…マズカロ…不味かろぉ…>
 裂けた口から何かドス黒いモノを吐き出しながら、老人は片腕で掴みかかってきた。
 それから先は、失神したので覚えていないという。

 以来、彼は自分で買った酒以外飲めなくなった。
「何飲まされるか解りませんからね」
 不公平なのは、俺んトコに出て、拾った奴のトコには出なかったってことです、と彼は自分で持ち込んだ焼酎をぐいと煽った。
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