| 『流れ』/ナツミカンさん |
ある飲み屋でのこと。どこかの大学のサークルの飲み会らしい。十人くらいの男女がわいわい騒ぎながら楽しそうに飲んでいる中で、不思議にその話が耳についた。
「あのね、あたしの友達から聞いたんだけど彼女のおばあさんの家って勝手口っていうのかな、玄関のほかに台所のそばに出入り口があるんだって。そこを出るとちょっとした階段があって、そこを下りると小さな小道に出て、小道をはさんで地図上で隣町になる家があるっていう感じらしいんだ。んで、その小道の
両側にずっと家が並んでいて、全部の家が彼女のおばあさんの家のように、家と小道をつなぐ階段がついているそうなの。なんでそうなってるかっていうと、その小道はもともと小さな川だったのを、埋め立てて道にしたってこと。って聞いてるの?」
「はいはい、もちろんッスヨ。」
なだめるように男性が言ったが、またかよ、というニュアンスが感じられた。それで余計に気分を害したらしく、女性は結末を乱暴に結んだ。
「今もその小道に物が落ちていると、もともとは川につながっていて今は埋め立てられた池の跡地に吹き溜まるんだって。」
「はいはい、今もその川は流れてるんですかねぇ。先輩少し飲み過ぎですよ。」
おおざっぱに言われた話に私は慄然とした。おそらく、そこは私が幼いときに住んでいた所。夏の日差しにやられたのであろう、とずっと幻か夢だと思って いた。でも、忘れることはできなかった。私は見たのだ。もともとは川だったと聞いた私は、笹舟をつくって小道に置いてみた。笹舟は、私も道に立っていた
にもかかわらず、ゆっくりとしかし確実に川の流れに乗るように流れていった。こわくなってその時は家に戻ったが、次の日池の跡地というところにいった ら、笹舟はしっかりとあった。
しかし、今も流れているのか。飲み屋の女性は私の娘と同じくらいだから、四五年以上流れているってことか。
|
|