| 『カミサマのいた公園』/なむとらさん |
僕が小学3年生の時の、夏休みの話です。
「おにいちゃん、公園にカミサマがいる」
ついさっき公園へ遊びに出かけた妹が、家に戻ってくるなり、なにやら奇妙なことを言って僕の手を引っ張りました。カミサマを見に行こうと言う妹に、それは何のことかと聞いてみましたが、せかすばかりで要領を得ません。僕は、妹の言うカミサマとやらを見に、近所の公園へと出かけることにしました。
公園の真ん中には、大きな松の木が立っていました。そして、その松の根元にそれはいました。白い犬。一目でそれが妹の言うカミサマだと分かりました。漂白したような神々しい純白。白い顎鬚をたらし、威厳のようなものを感じます。カミサマは、立ちすくむ僕と妹を、不思議な光を宿したまなざしで見つめていました。どれくらいそうしていたでしょう。僕は、なんだか急にオソロシクなって、妹の手を引き家へと駆け戻りました。
生きているカミサマを見たのは、それが最初で最後でした。
夏休みも終わりに近いある夕方。僕と妹は、カミサマを見た公園でボール遊びをしていました。そして、公園の隅の藪の中に飛び込んだボールを探している時にそれを見つけたのです。白い犬の首。いや違う、あのカミサマだ、白い顎鬚を生やしている。シャツの裾を引かれて隣を見ると、いつの間にか妹も藪の中を覗き込んでいます。僕は妹の手をつかみ、あわてて藪の中から飛び出しました。
藪から出ると、割烹着を着け、手にビニール袋をぶら下げたおばさんが立っていました。僕が藪の中に犬の首があることを訴えると、おばさんは特に関心を示した様子もなく、「誰か肉団子でも作ったんだろ」と素っ気なく言い、公園の出口へと歩いていってしまいました。近所では見かけないおばさんでした。
公園からの帰り道、なんだか心細い気持ちで歩いていると、僕に手を引かれて歩く妹が、ポツリとひとつつぶやきました。
「カミサマたべられた」
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