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第3回ビーケーワン怪談大賞
選考結果発表(5/5頁)
<いよいよ受賞作が決定!>

 では、いよいよ、受賞作を決めたいと思います。お二人それぞれが「受賞候補」に推薦している作品を見ていきましょうか。お二人の推薦がついているのは「補欠」を除くと全部で4編ですね。ほかに、それぞれのコメントを聞かれて、追加したいという作品はありましたか?

加門・福澤
 ありませんね。

 それでは下記の4編を受賞対象作品といたします。

がんてつさん『乗り移るもの』
我妻俊樹さん『浄霊中』
我妻俊樹さん『歌舞伎』
ウメさん『連れて行くわ』

加門 我妻さんは2作入っていますね。

福澤 怖さでいうと『歌舞伎』かな。

加門 私のフィールドでいうと『浄霊中』のほうなんですけどね(笑)。難しいなあ。でも、『乗り移るもの』と『連れて行くわ』とを比較すると、やっぱり『歌舞伎』がダントツなんですよね。

福澤 そうですね。決まりですね。

 では、三賞は、大賞が我妻俊樹さんの『歌舞伎』、優秀賞にがんてつさんの『乗り移るもの』、ウメさんの『連れて行くわ』でいいでしょうか。

加門 あっさり決まりましたね。

福澤 やっぱりな、という感じですね。異議なしです。

(その後、お二人の選んだ作品の中から佳作7編が選ばれました)

なむとらさん『カミサマのいた公園』
ナツミカンさん『流れ』
ヒモロギさん『デッドヒート』
彫川玄琢さん『カレンダー』
高山大豆さん『酒の味』
クジラマクさん『人を喰ったはなし』
ぬくてるさん『ねじれた人と折れた人』

◎選考を終えて

 選考を終えて、一言ずつお願いします。

福澤 今までにない怪談が多く投稿されていて、大変面白かったです。怪談なのかどうか、線引きが難しいものもありましたが。小説的な面白さのある作品も多くて、幅が広がった感じがしました。ただ実話怪談風のものも、もっと読みたいですね。もちろん創作でもいいから。

加門 話としてはレベルの高いものが多く来るようになったと思うんです。ただ、怖いものは少なかった。昨年の第二回の時にも言いましたけど、もっと怖がらせてくれよ、という感じですね。
 特に、今回目についたのは、夢の話と作中での殺人の話。夢の話では「夢の話」と断らなければ面白いのに、というものもありました。けど、夢と言われてしまうと、実話ということを離れても、印象が希薄になってしまう。
 あと、人を殺せば怖いってわけじゃない! これは強調しておきたいですね。確かに死というテーマは怪談には欠かせないものですが、殺人となるとテーマが重い分、うまさが要求されますね。それ以前に、人を殺すまでしないと恐怖を感じない、描けないのだとしたら、それはそれで問題ですよ。

 今回はブログ形式をとったせいか、ネットでの反響も大きくて、とても歓んでおります。ただ、そうしたリアクションを拝見していて、ひとつ気になったことがあるので、この場をお借りして申しあげておきたいと思います。それは、私が怪談の要諦として常々強調している「文芸」という言葉を、どうも誤解されている向きがあることなんですね。「文芸」を「実話」とか「娯楽」と対峙させて、なにか高尚な文学趣味のように考える方があるようですが、そういう意味では全くありません。私が言っている「文芸」というのは、簡単にいってしまえば「文章」としての「芸」――実話であれ創作であれ、怪談を文章で表現するときに必要なテクニックに磨きをかけ、深めてほしいということなんです。文学的に凝った表現をしろとか、そういうことじゃ全くないわけ(笑)。
 たとえば、岡本綺堂でも百鬼園先生でもいい、あるいは『幽』で連載中の小野不由美さんや京極夏彦さん、ここにお越しの加門さん福澤さん、『新耳』の木原&中山コンビや『超怖』の平山さん、小池壮彦さん……今、お名前を挙げたような方々は、皆さん、決して難解な表現など使わずに、見事に怪異を、恐怖を、戦慄を文章化されているではないですか。そういうものが、私のいう文芸としての怪談なんですね。

加門 たしかに投稿作品の中にも、気の利いた表現を使おうとして失敗している方が何人かいましたね。

 怪談において実話と創作を厳密に分けること自体が実際には難しいと思いますけど、そのへんについては、どうお考えですか?

福澤 仮に創作であろうと、リアリティのあるものが好きですね。読んでいて「これって、もしかしてほんとの話?」と思わせられるところに怪談の面白さを感じます。

加門 実話であっても、文章に落とす時点で、作者のバイアスがかかるわけですからね。どう書くかは作者の創意でしょうね。そういう意味で、もう少し自分の側に引き寄せて咀嚼していくことも必要だと思います。これが自分の目の前で起こったらどう思うのか、とか。もっと練ればいいのに、という作品も随分ありました。

 怪談に限らず、読み手にどういう効果を与えるのかを常に考えながら書くということは、文章道の基本であり、ひいては文芸エンターテインメントの基本ですからね。そのあたりのことを踏まえて、ぜひ来年も怪談大賞を続けていきたいものです。お二人とも今日はお忙しいところ、ありがとうございました。
 受賞されたみなさん、おめでとうございます! 選にもれた方も、ぜひ来年、捲土重来を期して欲しいと思います。


<選考委員プロフィール>
加門七海さん 加門七海

東京墨田区生まれ。伝奇小説、フィールドワーク作品を中心に活躍。著書に『大江戸魔方陣』(河出書房新社)、『晴明。』(朝日ソノラマ)、『京都異界紀行』(原書房)、『おしろい蝶々』(角川書店)、『環蛇銭』(講談社)、『常世桜』(マガジンハウス)、『女切り』(ハルキ・ホラー文庫)、『203号室』(光文社文庫)などがある。最新刊は『真理』(光文社文庫)。
加門七海さんインタビュー

福澤徹三さん 福澤徹三

1962年福岡県生まれ。デザイナー、コピーライター、専門学校講師を経て作家活動に。著書に『怪の標本』(ハルキ・ホラー文庫)『怪を訊く日々』(メディアファクトリー)、『廃屋の幽霊』(双葉社)、『真夜中の金魚』(集英社)、『再生ボタン』(幻冬舎文庫)、『壊れるもの』(幻冬舎)、『死小説』(幻冬舎)などがある。最新刊は『亡者の家』(光文社文庫)。
福澤徹三さんインタビュー

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