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第3回ビーケーワン怪談大賞
選考結果発表(4/5頁)
ウメさん『連れて行くわ』
加門 お祖母ちゃんのお母さんが夢の中に出てくるわけですが、「むかえに来た」っていうのが怖いんですよね。なんで娘をあの世に連れて行くかね(笑)。しかもそのあとで、『しょうがないから、あっちを連れて行くわ』って、それも怖いんですよ。この母親が怖い(笑)。善意なのか悪意なのかわからない(笑)。

福澤 しょうがないからあっちにするか、みたいな決め方でいいのか(笑)。

加門 その程度の理由で連れてっちゃっていいのかっていう(笑)。

福澤 以前に取材した話で、これと似た話があるんですが、それは娘のお母さんが連れて行かれちゃうんですよね。その話は暗いだけで、特におかしさはないんだけど、この話はショートショート的な面白さがありますね。

村上ネコさん『換気扇の声』

福澤 換気扇から声が聞こえるというのが気持ち悪いですね。でも、ほんとに聞こえますよね。

一同 え!?

福澤 ぼくがおかしいのかな?(笑)。昔、換気扇からお経が聞こえると、ある本に書いたことがあるんですが、実際にぼくも体験しました。ドライヤーを使っているときに、電話が鳴ってるような気がするっていうのは、よく聞きますよね?

加門 私も、何かが聞こえるっていう話は聞いたことがありますが。

福澤 素人考えなんですけど、換気扇やドライヤーのノイズには、いろんな音域が混じっているからだと思うんです。そこにリアリティーを感じました。あと、このTさんという人が謎ですね。いったい、何をしている人だろう(笑)。オチもつけようとしてないから、実話怪談っぽいですよね。

加門 高級食材が注文されて送られてくるって、これ、この部屋に送られてきてもTさんの口には入らないんでしょう?(笑) おかしいよね。

福澤 サイコ系の怖さも感じますよね。しかも「Tさんは今も、近所に住んでいます。」って(笑)。嫌な感じですね。

加門 Tさんみたいな人は近所に住んでいて欲しくない(笑)。

クジラマクさん『人を喰ったはなし』

福澤 どちらかというと怪談っぽくない印象もありますが、書き方が独特で、すごく特殊な感じがしました。

加門 私はすごく気持ち悪かったですね。女性同士の話だっていうこともあるのかもしれませんけど、相手に自分の口臭をかがせるとか、「(紙を)べーと出した舌の上に乗せると」という表現とか。で、面白半分にアイドルの名前を書いて食べさせるわけじゃないですか。女性特有の無神経さというか、意地悪さを感じたんですよ(笑)。そのいやらしさが怖いって感じました。女子高でありそうな話です。

黒塚生成さん『Sさんから聞いた話』
加門 一番最後の、Sさんが「まあ、いろいろ思うところはありますけどね。」って吐き捨てるような口調で答えたところがよかった。話としては、おそらく子供をトイレで堕胎したんだろうな、と思わせるんですけど、そのことに対する男性の苦々しい思いがよくわかる。この後の家庭の修羅場まで想像させますね。

カイロさん『ラジオから』
福澤 これも『換気扇の声』と同様、雑音が出てきますが、好きな話ですね。どこかで聞いたような話だなあ、という既視感もありますけど、まったく不条理な話ですね。
「きょうだいのした…ぬらしてくれ…10分以内」という命令が何を意味しているか。ぼくだったら、これを聞いてもまったく意味がわからないと思うんですけど、この人は即座に行動しますね(笑)。弟の口を開けて水をそそぎこむ。

加門 弟、かわいそうだよね(笑)。

 きょうだいのした=鏡台の下ってことなんでしょうね。

加門 解釈を間違えた。だから怒って、最後に男が出てきたんですよね。

福澤 その解釈でいいんですよね。男が「鏡台」の下から出てくるわけだから。

加門 やっぱり間違いだったんだ、と(笑)。

福澤 なんとなく落語のオチみたいな感じですね。

加門 弟がいたから弟に行っちゃったんでしょうね。面白かったけど、その面白さは「笑っちゃった」というほうの面白さですね(笑)。

彫川玄琢さん『カレンダー』

加門 これは、読み返すたびに怖くなってきたんです。初期に投稿されたせいもあって、最初はあまり印象に残ってなかったんですよ。あらためてプリントアウトして読んでみると、奥さんが気持ち悪い。
 奥さんはたぶん、夫の浮気相手が美人局で殺されるということを予知していたんでしょう。そう考えると、夫を救った美談となるわけですが、その浮気相手が死ぬまでの3年間寝込んでいたわけですよね。で、女が殺されたとたん「わたし、治りました」と嬉しそうに言う。そこでまさにゾッとしました。夫を助けるというよりも、浮気相手に対する女の怨念みたいなもののほうを強く感じて気持ち悪かった。

福澤 ぼくの場合も最初はノーマークで、読み直してチェックを入れたんですね。なんかやっぱり変だなと。最後に突然、大分合同新聞って県紙の名前が具体的に出てきて(笑)。

加門 はあ? と思いますよね。

福澤 最初は小説風で創作っぽいんですけど、最後のほうでいきなりリアルになる。そのリアルさはなんだろうっていう。

加門 前半の「月を見ながら洗濯物をたたんでいる」というあたりも、実際に見たらドキッとするだろうなと思いますね。この表現もうまい。

福澤 3年寝込んだっていうのも怖い。全体に狂気を感じますね。

加門 3年ていう長さがいいなと思ったんです。下手な因果話だったら、三ヶ月、半年後あたりにしてしまうと思うんですけど、3年ていう長さがじわじわと恐怖を盛り上げていて、よかったですね。

タクさん『水色妖怪』
加門 これは賞の候補に挙げたというよりは、一言言いたくて挙げたんです。お書きになったタクさんへの個人的なメッセージになっちゃうんですが、同じものを見たという人に、このところ3人会ってるんですよ。

一同 え、本当に!?

加門 緑の蝦蟇蛙みたいだったって人もいれば、青い不定形のぐちゃぐちゃっとしたものだという人もいたり。それぞれまったく交流のない場所で聞いたので、タクさんのお書きになっていることは実話だろうなと思いまして。

 それはある意味、すごいですね。

加門 見た人の感想を聞くと、気持ち悪かったって感じているようなので、式神だとは思わないんですけど、それはまあ、個人の感性の差ですからね。ともかく、実話だわねえ、と(笑)。

モモははさん『秘薬』
加門 私はこの手の話が好きなんですよ。中国志怪ですね。スタイルとしては完全な創作系です。ネタがありきたりだったというのが残念でしたが、こういうスタイルもありだよ、ということが言いたくて、名前を挙げさせていただきました。

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