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書評の鉄人列伝 第213回 “はりゅうみぃ”さん
“はりゅうみぃ”さんからのコメント
本を読んで聞こえてくる声に真摯に耳を傾け、それを形にする。作者様がなぜこの声 を聞かせたいのかをいつも自問しながら。私の書評はそうやってできています。でも 聞こえた声を納得のいく形に成す事は本当に難しい。拙い文を読んで下さる皆様、発 表の場を与えて下さるビーケーワン様にはいつも感謝しております。
“はりゅうみぃ”さんの自己紹介
旅行業とフローリストの2足わらじ、仕事と読書の間に家事をするかなりズボラな主 婦です。ムダに速読なので、通勤時間に本が切れないよういつも鞄に5,6冊。重いで す(笑)
“はりゅうみぃ”さんのサイト
「Mille fleurs ~千の花へ」
“はりゅうみぃ”さんの書評一覧
は
こちら
このコーナーでは、当店が誇る「書評の鉄人」の方々をお一人ずつ紹介していきます。
第213回は
“はりゅうみぃ”
さん。文芸書を中心に書評を書かれている方です。 作品と語らい合う時間の濃密さ・豊かさが伝わってくる、溌剌とした文章です。
花や散るらん
★★★★
はりゅうみぃ/歴史に名を残すもの、残さぬもの。誰の散華も等しく尊い。
清しいほど1人の女性に惚れぬく男を描いた前作、「命なりけり」武士の誇りと合理性という、一見相反するような魅力を兼ね備えた主人公、雨宮蔵人とその想い人・咲弥が不器用ながら心を寄り添わせていくという、男女の情を中心に据えた(はずの)物語だった。ところが、作者の視点は相変わらず「男」と「時代」のみに注がれ、女性はまたも神聖な崇拝対象。男の生き様と歴史背景を語る饒舌さに比べて、女性の心理描写は借りてきた猫
八朔の雪
★★★★★
はりゅうみぃ/「人」も「食」も一期一会。その時その時を大事にしたい。大事でいたい。
天の采配という言葉がある。人はすべて各々が大事な役目を与えてられてこの世に生を受ける。例え生まれてすぐ儚くなってしまった乳飲み子でも必ず託された使命がある。そう信じずにはいられない、これはそういう小説だ。僅か十代で自身だけを頼りに生きていく。現代の男性でも難しい、苦難に満ちた生き様をはるか江戸時代にやってのけた少女がいる。親も友も故郷も、手にする愛がすべてこぼれていく宿命。この時代、何も持たない薄
太陽を曳く馬 下
★★★★
はりゅうみぃ/神的俯瞰で捉えた現代の「人」。存在の有無さえ判断できない私たち「人」に下るのは神罰か。救済か。
「マークスの山」で孤高の道を歩み始めた。「照柿」でその方向を明確にした。「レディ・ジョーカー」で目指す高みに辿りついた。作者恒例の全面改稿はあっても到達したゴールは変わらない、今までそう思ってきた。なのに今10年余の時を経て、再び「合田雄一郎」を描いた作者の意図は何なのか。主たる興味はそれだけ、付け加えるならかつての黄金期の再来を期待するかのような蛇足的続編ではない事を祈りながらこの本を読んだ。本
この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 下
★★★★
はりゅうみぃ/胸に突き刺さるこの本からの「矢」。この痛み、しばし味わおう。
安易な引用が好きではない。少々の効果的な引用なら、読む側にも新たな書物との出会いなど嬉しい利点もあるだろう。新書や専門書ならばデータとして文献や統計が必要なのもわかる。しかし、本作での「引用」は異常だ。卑しくも文芸=文章による芸術に他人の力を借りまくり、名言・格言の類を羅列したり経済白書のデータをもとに己が考察を延々と書き連ねるのはいかがなものなのか。せっかくのフィクション部分、作家の創りだすもっ
ダーク・ムーン
★★★★
はりゅうみぃ/月が魅入る者たちよ、徹底的に闇に沈め。
2010年の冬季オリンピックはどこで開催されるかご存知だろうか。本書は人類の祭典が開かれるほどの大都会を舞台に、徹底的に人のもろい部分を突いた漆黒の群像劇である。華やかな祭典が開催される光の街と、強い光が作る漆黒の影が支配する闇の街。陰陽が混沌する人種のるつぼを司るのは「ダーク・ムーン」、頭上に輝くほど暗さを増す暗黒の王だ。多人種による複雑な差別意識。人の人による支配を黙許のもと繁栄する街・バンク
白い薔薇の淵まで
★★★★★
はりゅうみぃ/焦りにも似た感動。目をそむけてはいけない人を恋う業。
本書は第14回(2001年)山本周五郎賞受賞作品だが、本を閉じた今、この作品を選んでくれた選考委員の皆様に1人1人握手して回りたくてたまらない。この本の存在を教えてくれた事に対するお礼ともう1つ、筆者に命を与えてくれたことに対しての感謝を伝えたくて。本書はジャン・ジュネの再来と言われる新進気鋭の女流作家「塁」と、普通のOL「わたし」との激しい同性間の愛の記録だ。この作品は多分に筆者の姿が自己投影さ
それでも花は咲いていく
★★★★
はりゅうみぃ/淡くても、鈍くても、生きているからこそ伝わる熱と光。それを「綺麗」と呼ぶのだろう。
エーデルワイスダリアヒヤシンスデイジーミモザリリーパンジーカーネーションサンフラワーどれも綺麗な花だ。この作品はお笑いタレント・前田健さんが書いた処女小説だという。最近よく見かけるいわゆる芸人小説ってヤツで、忌憚なく申せば完成度より話題性先行というところだろう。偏った性的嗜好をもつ9人の人間を、「花」になぞらえる。少々使い古された手法である。よほど読ませる文章でなければ、この手の陳腐ギリギリの設定
廃墟建築士
★★★★
はりゅうみぃ/築くこと。壊すこと。実はどちらも必要だと気付いて、ようやく「人」は第1歩。
久々に「本」に感動した。毎回「面白かった」だの「感動した」だのと書評書いてませんか?とつっこまれそうなので早々に種明かしすると、今回は「本」そのもの、つまり装丁に感動したのだ。なんて繊細でアーティスティックな装丁なんだろう。硬質のトレス紙(と思う)でカバーリングされた本作は、カバーと本体が合わさって初めて1枚の表紙「絵」として完成する。どちらかだけでは本の題名さえ読みとれないような凝った印字・構成
おとぎの国の科学
★★★★★
はりゅうみぃ/科学のクオリア 物語のクオリア
本書は「パラサイト・イブ」「BRAINVALLEY」などのベストセラーを著したホラー・SF作家であり、またミトコンドリア研究で大学で教鞭もとった科学者でもある瀬名秀明氏の初のエッセイ集となっている。科学者として論文を書き、小説家として物語を書く筆者が考える「書く」行為とはなんなのか。それを受け取る私たちの「読む」行為はどのような意味を持つのか。文理どちらにも身を置き、書き続けた筆者にしか伝えられな
打ちのめされるようなすごい本
★★★★★
はりゅうみぃ/筆者が遺した、魂の道標
読書が趣味だと普段から公言しておきながら、実は「読書」について熟考した事はほとんどない。「本」を「読む」という行為が人生においてどういう意味を持つのか、一つの答えをくれたのが筆者の絶筆を収めた本書・「打ちのめされるようなすごい本」だ。筆者の米原万理さんは2006年にご逝去されたが、本書は彼女がご健康である頃から最期の最期まで書きつづった闘病記録までその生涯のほぼすべての書評を納めている。本書が書評
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